書店で売られている写真集は、ポリエチレン包装で売られているので、あらかじめ立ち読みで中身を知ることができず、表紙と裏表紙、帯の画像で自慰用素材にかなうかどうか判断するしかない。購入後に包装を剝がし、早速自慰を始めるのだが、数ページめくっただけで性的興奮が最高潮に達する作品は当たりで、繰り返し用いられる半面、最後までめくっても射精へのマネジメントが難しい作品ははずれとなり、すぐに古書店送りとなった。
先行発売された媒体で幾度となくお世話になったグラビアアイドルが写真集を発表するときは、その期待で下半身も大いに膨らむが、こういう場合にかぎって駄作を掴まされるケースが多かった。僕にとって、写真集とは自慰以外に使用目的はないとみなしているが、作り手の中には実用性よりも芸術性を追求する御仁もいるようで、モデルに水着を着させても、消費者に性的興奮を全然昂らせない仕上がりでがっかりさせられる作品もある。
二〇〇一年から翌〇二年にかけて放送された「ウルトラマンコスモス」で、女性隊員役を演じた鈴木繭菓の写真集「まゆかのま」もその一つだ。ウルトラマンシリーズの熱狂的ファンでもない僕が、書店で見かけた円谷プロダクション監修のムックを買わずにいられなかったのは、巻末の鈴木の水着グラビアを自慰用素材に用いたいと思ったからだ。同書は出演者とスタッフのインタビューや作品のストーリーを紹介するなど、同番組のファンにとっては必見の内容だが、僕はそれらにはいっさい目もくれず、ひたすら鈴木の水着姿で性的興奮を高めた。
ムックの数ページ程度のグラビアではなく、写真集でも出してくれたら、という僕の願いがかなう形で、〇二年三月に「まゆかのま」(角川書店)が発売された。しかし、全編を通じてグラビアアイドルというよりもファッションモデルの佇まいで被写体に収まっている鈴木の姿に、僕はどうやって性的興奮を高め、射精に導かせるのか苦慮することこの上なく、それでも大枚をはたいて買ったのだから元を取らねば、と性的想像力を膨らませながら、何とか射精に至らしめた。そしてすぐに古書店で買い取ってもらった。
同年代の女性には喜ばれそうな仕上がりだが、最初から自慰目的で買った消費者にとっては残念で仕方なく、作り手の悪意のようなものすら感じられた。ただ、善意に解釈すれば、発表当時はウルトラマンコスモスがまだ放映中で、視聴者にストレートな性的対象と見なさせないように作り手が配慮したのかもしれない。もっとも、先行発売されたムックでは何度も繰り返しお世話になるほど、鈴木は性的アピール全開だったのだが……。
鈴木はその後もグラビアアイドルとして活動したが、僕は「まゆかのま」での失敗体験から、彼女を自慰用素材に用いることはなかった。高校生世代の新人が次から次へとデビューしてくるので、自然で健康的なエロティシズムよりも芸術じみた“意識高い系”的な見せ方を追求する鈴木への興味は薄れた。しかし、ムックを立ち読みしたときに鈴木の水着姿で激しい性的興奮を覚えたのは、二十年以上経った今でも記憶が残っているので、ここに書き留めておきたい。