雨の記号(rain symbol)

韓国ドラマ「青い海の伝説」第12話⑦









韓国ドラマ「青い海の伝説」第12話⑦



韓国ドラマ「青い海の伝説」第12話⑥




★★★

 セファの声を聞いてるうち、ジュンジェは次第にその声が煩わしくなってくる。
 ああだ、こうだ、と考え過ぎじゃないか…もういい、と思ってもその声は続く。ジュンジェはとうとう耳を塞いだ。

―それはゴーサインってことなんじゃ? そうよね。ブツクサブツクサ…。

 ジュンジェはたまらず跳ね起きる。小さい出入口を開けて怒鳴いりかける。

「おい! 眠れ…!」
 れないじゃないか、とジュンジェは後の言葉を呑み込む。
「どうしたの?」
 ふだんと変わらない声がせふぁから返ってきたからだ。
 ジュンジェも我に返った。
「まだ寝ないのか?」
「寝るわ」
「疲れてるだろ? 早く寝ろよ。考え事もせず、ぐっすり寝ろ。いいな」
「…」
「でないと、大好きな朝のドラマを見逃すぞ」
「…うん」
 何か眠りを押し付けられてる気がしたが、セファは手を開いて頷いた。
「おやすみ」
 ジュンジェも手を開いて笑みを投げた。
 手を閉める時「考え事をするな」とひと声投げた。
 それからベッドに戻ってほっと息をつく。
 とたんにまてセファの声が届きだす。

―今、怒ってたわ。どうしてかしら?

 ジュンジェはがっくり来る。
「頼む、やめてくれ」

―でも、笑顔で”おやすみ”って言ってくれたわ。

「やめろって!」
 ジュンジェは掛け布団を蹴った。

―あの笑顔の意味は何だったのかしら? 心配してくれてるし、私が好きなのかも…ブツクサブツクサ…

 ジュンジェはセファの煩わしい声に魘されながらいつしか眠りに沈んでいた。

★★★




 ジンジュは眉間にしわを寄せてナムドゥに電話を入れ続ける。
 今朝も電話はつながらない。
「ああ、もう…やっぱり電話にでないわ。クベクの飼い主はどうしちゃったのかしら」
 ぼやきながら携帯を置く。
「電話に出る暇もないみたい…大物だからね」
 ドンシクは食事の手を止めて言う。
「無駄骨なんじゃないか?」
「あなた…!」
 ジンジュは目を剥く。人差し指を立てた。
「この世に無駄な努力なんて存在しないの」
「…」
「こっちが諦めないなら、努力は必ず報われるわよ」
「そうかな…」
 ジンジュは心持ち目を落とす。
「だけど、どうすれば…」
 ふっとひらめくものがある。
「そうだ、ホ会長の方を攻めましょ。ねっ!」
 返事も聞かず携帯を握る。
「あら、奥様、お元気でしたか? おっほほほほ…ええ、もう…私たちだけで忘年会をやりませんか?」
「そうね。いいわよ」
 とカン・ソヒ。
「では、7時にお店で」
 携帯を置くとテーブルの容器を手にし、錠剤を取り出す。携帯と錠剤を握って席を離れる。
 それをドアの外で見ていたチヒョン。部屋に入り、容器を手にする。ふたを開けた。カプセル剤が二つ入っていた。取り出して握りしめる。
  

 ジュンジェたちも4人一緒に食事を取った。
 ジュンジェとセファを見てナムドゥは訊ねた。
「顔色悪いぞ。二人とも眠れなかったのか?」
「考え事をしてて…」
 とセファ。
 半眠状態のジュンジェはうっかり調子を合わせてしまう。
「俺はずっとそれを聞いてて…」
「何だ、それ?」とナムドゥ。
「いや、そうじゃなくて…こいつがガサゴソとうるさくて」
「私がガサゴソやってた?」
 とセファ。
 ジュンジェはセファを見た。
「ああ、やってた。大騒音だった」
 ジュンジェのきつい表情に、
「どうして怒ってるのかしら?」
 とセファ。
「私のことが嫌いになった…?」
 ジュンジェは顔をしかめる。目を落とす。
 また始まった…!
「昨日はあんなにご機嫌だったのに…どうして?」
 うな垂れていたジュンジェは箸を叩いた。
「そうじゃない」 
 と顔を上げた。
 これにはナムドゥもテオもびっくりする。
 セファも目を真ん丸にする。
 ジュンジェも我に返る。ごまかし笑いを浮かべる
 これでは自分に発生した異変を気づかれかねない。 
「そうじゃないんだ…じつはそれほどガサゴソはしてなかった。はっははは…気にしないでくれ。さあ、食べよう」
 食事を始めながら、ジュンジェはナムドゥやテオをちらと見やる。
 口を動かしているうち、屋内プールで楽しそうに水遊びしていたセファの姿を思い出す。それがなぜだったかも今は分かる。全部を知らないまでも水は彼女の元気の源なのは理解しだしている。
 
―…彼女に水に親しめる時間を少しは増やしてあげないとな…。

「兄貴」ジュンジェは切り出した。「ツリーを買いに行かないか?」
「クリスマスツリーか?」とナムドゥ。
「私も行くわ」とセファ。
「いやお前は家にいろ」
 とジュンジェ。
 気を落とすセファ。構わずにジュンジェは続ける。
「男3人でいくからお前は1人で家に残れ」
「…」
「一人でな」
「…」
「いいか。一人で家にいろ」
 ”大好きな水浴びをしてろ”と心でも言った。
 しかし、ジュンジェの心の声はセファに伝わらない。
 セファの推測はとんでもない方向に向かった。 
「何なのいったい…? 孤独を経験してみろ、ってことかしら? どうして?」
「そうじゃない」
 ジュンジェは箸を動かしながら力説する。
「男が一緒にいるとできないこともあるだろ」
「確かにそうだ」ナムドゥは同調を見せる。
「だろ? だから言ってるんだ」
「…」
「俺たちは七時まで帰らないから…それまでこの家にはお前ひとりってことだ」
「…」
「それまでは好きなことをやれ。家主になったつもりで」
 セファはジュンジェの言ってることがチンプンカンプンで混乱した。開いた目さえ役割を失ってしまうほどだ。
「家主になったつもりで掃除をしろってこと?」
「いいんだそれは! 家事なんかしなくていいんだ」 
 思わず大声になっている。
 ジュンジェは両手でセファの顔を挟みつける。
「お前が一番したいことをやるんだよ」
 顔が曲がるほど両ほっぺをつまんだ。
「分かったか?」
「何やってんの?」とテオ。
「どうしてつねるんだ?」ナムドゥも怒り顔になる。
「何となくだよ」
 気持ちを隠して立ち上がりジュンジェは席を離れた。
 セファはつねられた両ほっぺに手をやった。
「顔が熱いわ…つねられたからかしら…ほっぺた以外も熱い。どうしてかしら…?」
 セファの気分は次第に上ずって来るのだった。
  



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