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韓国ドラマ「30だけど17です」(連載27)

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韓国ドラマ「30だけど17です」(連載27)


「30だけど17です」第3話(期限付き同居の始まり)⑦


☆主なキャスト&登場人物


○シン・ヘソン➡(ウ・ソリ)
○ヤン・セジョン➡(コン・ウジン)
○アン・ヒュソプ➡(ユ・チャン)
○イエ・ジウォン➡(ジェニファー(ファン・ミジョン)
○チョ・ヒョンシク➡(ハン・ドクス)
○チョン・ユジン➡(カン・ヒス)
○ユン・ソヌ➡(キム・ヒョンテ)



★★★

 ソリは笑顔で説明した。
「ペンは食欲がない時でもパプリカなら食べます」
「そうなのか」チャンは感心した。「さすが元の飼い主だ。トックが何だか元気になってる」
 ソリは嬉しそうにする。
 一方ウジンは忌々しそうにチャンを見やった。
 トックが美味しそうにパプリカを食べるのを見ながら立ち上がった。

「用事もすんだようだし、食べたらお引き取りください」
 テーブルを離れようとするウジンにチャンは言った。
「こんな時間に女性を1人で帰すの?」
「…」
「夜が明けてからでもいいのでは」
「見知らぬ人を泊めろとでも」
「午前2時半なのに追い出すつもり? 叔父さんの転居先も不明らしいから、今夜だけでも階段下の部屋に」
「いいですか?」とソリ。
「いや、ダメです。帰って」
「こんな時間に帰すのは危険だと思います」
 ジェニファーが口を挟んだ。
「そうだ」
 チャンがテーブルを叩いた。
「もう午前2時半だよ。いいじゃない」
 少し考えてウジンは言った。
「部屋に戻る」
 ウジンは戻っていくのを見てチャンは言った。
「泊っていって」
「でも、ウンコおじさんがダメだと…」
「ああ、あれね。あれは”OK”という意味です。ミスター・コンは口数の少ない人だから俺が通訳します」
 チャンは胸を叩いた。
 ソリは嬉しそうに食事を再開した。


★★★


 食事をすませてソリが前に使っていた部屋に引っ込んだ後、チャンは何やら抱えて部屋の前にやってきた。
「おばさん、僕です」
 ソリを呼んだ。 
「布団と枕と水を持ってきました。それから、蚊取りラケットと時計もここに置きます」
 置いて戻ろうとしたチャンは、ソリが何の反応も見せなかったのを怪訝に思った。
 いるかどうか確認するため、ユニットドアをそっと引いた。部屋を覗いた。ソリの姿がない。
「ん?」
 ドアをぐっと開く。
「どこ行ったんだろ…」
 床に置いた布団などを手にして中に入った。
 入ってみて気づいた。布団や枕はすでに運び込まれていた。
「ジェニファーが用意してあげたみたいだ」
 チャンは辺りを見回す。ケースに収まった楽器が見える。チャンの口から意外そうな声がもれる。
 近寄って赤い布をめくった。ケースに収まっていたのはバイオリンだった。


 ソリは庭に出ていた。木製の長いすに腰をおろし、ペンを膝において夜空に目をやっていた。
 右手をかざし、親指と中指の間に収まった円い月を眺めていた。
 
 夜中の騒動で寝そびれたウジンはトックの餌を持って下におりてきた。しかし、トックは見当たらない。
 呼んでも姿を見せない。
 窓からカーテンをあけて外を見ようとしたら、後ろからチャンの声がする。
 振り返るとチャンが訊ねた。
「どうしたの?」
「トックがいないみたいだ」


 ソリを捜してチャンが庭に出てきた。
「寝ないでここにいたんですか?」
「ええ、何となく…」
 チャンはソリの横に腰をおろす。
「眠りがこなくて」
「探しものはバイオリンだったの」
「えっ?」
 ソリはチャンを見た。
「布団を持っていった時に見ちゃった」
「かまわないよ。気にしないで」
「…」
「ママから譲られたバイオリンなの。一度、失くしたことがあって…ここで見つかってよかった」
「おばさん、バイオリン弾くの?」
 ソリは頷く。音楽の話になるとソリの話は弾む。
「好きなだけ練習しろとパパがこの家を建てたの」
「へえ…」
「パパが設計して家族でレンガを運んだし、庭の木だって植えました」
「…」
「あの部屋はパパからのプレゼント」
 ソリは子供の頃に思いを馳せる。


 パパは言った。
「”ソリ、いいものを見せよう。本棚を引っ張ってみて”」
「”こぉー?”」
「”そうだよ。中を覗いてごらん。ジャジャ―ン”」
「”ソリ、よかったね”」
 母親も嬉しそうだった。
 ソリは音楽とバイオリンに埋もれてあの部屋で育ったようなものだった。
 
 ソリは両親と過ごした日々を思い出しながら言った。
「この家は…パパとママとの思い出が残る唯一の場所なんです」
「…」
「私には博物館みたいなものだわ」
 いったん頷いたチャンは怪訝そうにソリを見た。
「さっきは叔父さんと暮らしてたと」
「両親は私が14歳の時、トンネル事故で死んだの。それからは叔父さん夫婦と暮らしてきたの」
「だったらどうして―叔父さんは急いで家を売ったんでしょう」
 ソリは表情を曇らせた。
「私もそれが気になります」
「…」
「ここにいるとばかり思ってたのに…警察に行っても動いてくれないし、友達の行方も分からない。私の知ってる人は―全員この世から消えてしまった感じ」
 残った家族と友達はペンだけとばかり、ソリはトックの頭を撫でた。

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