韓国ドラマ「青い海の伝説」第17話⑪
韓国ドラマ「青い海の伝説」第17話⑩
★★★
カン・ソヒの声にホン刑事は相棒を起こした。
「はい?」
「誰か家に来てるのか?」
相棒は眠そうに訊ねた。
「カン・ソヒが帰宅を…?」
「車に誰か乗せてたのかも」
イルジュンは手すりに頼り、そろそろと階段を下りる。カン・ソヒの声は下から聞こえた。誰が一緒なのか知りたかった。
―ホ・イルジュンは、あなたを新しい秘書だと思ってる。ここでしっかり監視するのよ。外に出さないで。電話も絶対に使わせないで。ほぼ視力を失ってるから難しくないわ。
ホン刑事は相棒と目を見合わせた。確かに誰かが一緒だ。
ひょっとして…?
―何か思い出したことは? 何も覚えてないの?
マ・デヨンは首を横に振る。カン・ソヒは彼の身体を揺さぶる。
―いい加減にしてよ。あと少しだっていうのに…!
明らかに殺意の言葉だ。話を立ち聞きしたイルジュンは慌てて部屋に戻ろうとする。
カン・ソヒは人の気配を近くに感じた。
誰かいる!
彼女は席を立った。外に出た。誰もいない。部屋に戻ろうとして振り返る。やっぱり誰かいる!
近くの物陰ではイルジュンが息をひそめていた。
★★★
ホン刑事は盗聴に使った機器をジュンジェ宅に持ち込み、収録した音声を再生した。
―あなたを新しい秘書だと思ってる。悟られないようにしっかり監視するのよ。外にも出さないで。電話も使わせないように。…ほぼ、視力も…
「話をしてる相手は誰?」
ナムドゥは訊ねる。
「相手は無言のままだ」とホン刑事。
―何か思い出したことは? 何も覚えてないの? ……いい加減にしてよ。あと少しだっていうのに…!
再生された音声に耳を傾けていたセファがつぶやく。
「マ・デヨン…」
ホン刑事は顔を上げる。ナムドゥもセファを振り返った。ジュンジェもテオもセファを見た。
セファは繰り返した。
「マ・デヨンよ。あの男は記憶を失ってるから」
「何の記憶を?」
ナムドゥが訊ねる。
「自分が誰なのかも忘れてる」
「マ・デヨンがどうして記憶を失ったんですか?」とホン刑事。
事情を知るジュンジェが口を挟む。
「逮捕して本人に聞いてくれ。捜索令状は?」
「明朝に出る」
「ありがとう」
ホン刑事は笑みで頷く。
部屋に戻ったイルジュンは携帯をオンにした。何かをセットしベッドの下に隠した。
そこへカン・ソヒが現れる。
「ああ…」
「私、急用が出来たから出かけるわ。薬を飲んで寝てね」
「おお、ここに置いてくれ」
カン・ソヒは笑顔になり薬と飲み物をテーブルにおく。
「ちゃんと飲んでね」
「分かった」
カン・ソヒは辺りを見て言う。
「あなた、携帯は?」
「ああ、どこかな…その辺にないか?」
ソヒは念のため、イルジュンの携帯に電話を入れる。電源が入っていないのを確認して電話を切った。
「出かけるわ」
イルジュンはソヒを呼び止める。
「何?」
「私のことを本気で愛したことがあったか?」
ソヒは小さく息をついた。笑みを浮かべた。
「いつでも本気で愛してるわ」
「…」
「行くわね」
「分かった」
ソヒが出ていくとイルジュンはすぐスコッチティシュを手にする。それに薬を包んだ。ゴミ容器に投げ入れ、色付きの水を飲んだ。
イルジュンがグラスの水を飲んだのを確かめると、ソヒは冷たい笑みを浮かべた。
ホン刑事の相棒はカン・ソヒが外出するのを見て尾行を開始した。
車の中からソヒはチヒョンに電話を入れた。
「久しぶりに私とお酒を飲まない? 人の多いところで…」
電話を受けたチヒョンも車の中だった。
「僕は先約があるんだ。ほかの人を誘って」
チヒョンはそう答えて電話を切った。
人の多いところ?
チヒョンはふいに胸騒ぎを覚えた。あわてて運転手に命じた。
「家に急いでくれ!」
その頃、イルジュンはベッドの上で苦しみもがいていた。飲み物に細工されたのを感じたイルジュンは、ベッド下の携帯を取ろうと腕を伸ばす。つかみきれないでベッドから転落する。
必死で携帯をつかみ出す。ジュンジェに電話をかける。…
その頃、ジュンジェは取引明細を手に、カン・ソヒらの不透明な金の流れを追跡していた。
「弁護士の借名口座に入金されてるみたいだ…」
ジュンジェの携帯は部屋で鳴りだした。
イルジュンは携帯がつながるのを待った。しかし、一向につながらない。
携帯は留守録に切り替わった。
「ジュンジェ…!」
カン・ソヒに、イルジュンを見張れ、と言われたマ・デヨンは部屋の花や観葉植物などを片付けだす。
捨てに行こうとしてるところにチヒョンが帰宅した。
チヒョンを見てマ・デヨンは言った。
「帰るのが早いぞ」
マ・デヨンにかまわずチヒョンは奥に走りこむ。
一方、ジュンジェはホン刑事らが引き上げた後、いったん部屋に戻った。