雨の記号(rain symbol)

ファンタスティック・カップル 第12話(14)







ファンタスティック・カップル 第12話(14)
Fantastic Couple Episode 12 (14)




 顔をしかめながらアンナは考える・・・あれは船(クルーザー)の上だった・・・。
 ビリーが指輪を拾ってアンナの前に戻る。
 指輪を渡そうとするがアンナの頭の中は混乱している。
 何か悪い記憶にさいなまれそうで指輪を見る気は失せた。
「もういいわ。それじゃ」
 断って歩き出す。
 ビリーはあわてて言った。
「僕が送ってあげますよ」
 アンナは足を止める。
「じゃあ、お願い」
 ビリーはアンナを助手席に乗せて車を走らせる。
 懐メロをセットして流しながら、アンナの反応をうかがっている。
「この曲は?」
 ビリーは待ってましたとばかりに答える。
「”My Way”、僕の好きな曲です」
 アンナは流れる音楽に耳を傾ける。この曲にも何か覚えがある。
 空白の世界が割れ、ドレス姿の自分がふいに立ち上がる。その後を見たくないと思って叫ぶ。
「消して」
「はい」
 ビリーはすぐ音を消す。
「そこで止めて」
「はい」
 ビリーはバイクの並んだ場所に車を横付けした。アンナは礼も言わずさっさと車をおりて歩き去った。
 アンナを見送ってふと見ると携帯を忘れている。携帯を握ってビリーも車の外に出る。そのままアンナの後ろをついて歩く。
 アンナは膨らみのない記憶の断片に苛立ちながら夢遊病者のようにふらふら歩いていく。
 ろくに前を見ていなかったので金魚鉢を持って出てきた年配の男とぶつかってしまった。金魚鉢は路面に落ちて粉々に砕けた。路面に放り出された魚はパクパク口を動かしている。
 アンナはまた記憶を触発された。記憶の細胞は頭の中でぐるぐる動き出した。
「どこを見て歩いてるんだ」
 男は魚を見せて怒っている。
「クソ・・・どうしてくれるんだよ」
 しかしその怒りの言葉もアンナの耳には入ってこない。

(前にもこんなことがあったわ・・・)

「おい、ちゃんと前を見て歩けよな」
 男は怒鳴った。
「うるさいわね」アンナは逆切れする。「ちょっと黙ってて」
「何だこの女・・・喧嘩売る気か!」
 がなりたてるおとこの口を見つめているうち、記憶の中から別の男の言葉が飛び出してくる。

――これ以上、君の仕打ちには耐えられない。離婚しよう!

 離婚しよう! 離婚しよう! 離婚しよう! ・・・

 アンナは頭を振った。記憶の中の言葉を懸命に振り払おうとする。

 取り合おうとしないアンナに業を煮やし、男は拳を振り上げた。
 その手をぐいとつかんだ者がいる。
 チョルスだった。
「大丈夫か?」
 アンナはつらい表情をチョルスに向ける。
「どうした?」
「おかしいの・・・おかしいのよ」
「俺に何するんだ」
 チョルスに手首をつかまれた男が叫ぶ。
「弁償するから黙ってろ」
 チョルスは男を横に押しのける。アンナに訊ねかける。
「おい、大丈夫か? どうした?」
「頭が・・・頭が割れそうだわ」
「病院へ行こう」
 チョルスはアンナを心配して言った。



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