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韓国ドラマ「病院船」から(連載124)

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韓国ドラマ「病院船」から(連載124)



「病院船」第11話➡私に構わないで⑪




★★★


 キム・スグォンは病院の車を待機させ、ウンジェに言った。
「病院の車で行きなさい」
 ウンジェは恐縮する。
「それは結構です」
「ソウルじゃなく空港まで乗って行くんだ」
「ですが…」
「いいんだ。妻の恩もあるから遠慮するな」
「…」
「それから、彼の説得は容易じゃないぞ。確執があるからな」
「…」
「だが、キム・ドフン先生は悪い人間ではない。いい医者かは別として実力は確かだ」
 ウンジェは信念の表情を返す。その意味ではウンジェも同意見だった。
「患者の家族として丁重に頼めば、彼も医者として応じてくれるだろう」
「はい」
「秘書に頼んで航空券の予約もしておいた」
「何から何までありがとうございます」
「礼はお父様が治ってからだ。さあ、車も来た。行きなさい」
 ウンジェはキム院長に頭を下げて出て行った。
 その様子を見ていたジェゴルは父親のそばに来た。
「僕が送るのに…」
 キム・スグォンは答えた。
「彼女はプライドが高い。男がやたら干渉すると、彼女は羞恥心を感じて逃げ出してしまうぞ」
「羞恥心ですか?」
「そうだ。私の見立ては間違ってるか?」
「いいえ、そうじゃなく、今日は羞恥心の話がよく出るな、と思って…」
 キム・スグォンは息子を見つめ返した。
 ”珍しく真剣じゃないか。今までに見せなかった姿だ”
 そういう表情を残して息子の前から立ち去った。


★★★


 ウンジェはソウルのデハン病院に到着した。気は重かったが勇気を振り絞ってここまでやってきた。
 師であり上司であったキム・ドフンに追われる形でこの病院から去った。あの時以降、ここに戻って来ようとのプライドはずっと保ち続けていた。それは単にキム・ドフンへの反発ではなく自分の行為の正しさを信じていたからだった。
 しかしウンジェは考えの相いれない彼に頭を下げるためにここへやってきた。
 医者としての考え方は相いれない。だが、キム・スグォン院長の言う通り、今の自分が求める医者としての技量を彼は持っている。今の父を助けられるのは彼しかいないからだった。
 例の医療ミスを通じて彼は恨みを抱き続けている。あの病院を追い出しただけで恨みが消えたはずもない。
 何の得にもならない手術を受け入れてもらうため、ウンジェは彼の要求してくるものがたとえ信念に沿わなくても受け入れる覚悟もできていた。



 キム・ドフンのチームは手術を1つこなして出てきた。
「今日はついてたわね」
「そうだな」とキム・ジェファン。「強風でヘリコプターが飛ばせないと言われたから、操縦士に詰め寄ろうとしたら」
「ちょうどタイミングよく風がやんだ、だろ?」とミョン・セジュン。
「そうです」
「今日は祝杯といこう」とキム・ドフン。
「いいね、さすが科長…」
 その時、キム・ドフンの前にウンジェが立った。
 みんなは一瞬、言葉を失った。
「ソン先生」とキム・ジェファン。
「久しぶりだな」とキム・ドフン。
 ウンジェは深く頭を下げた。
「お元気でしたか?」
「変わりはないよ。今日はどうした? 何の用だ」
「…お願いがあってやって来ました」
「私に?」




 キム・ドフンは自分の医務室にウンジェを通した。
 後をついてきたキム・ジェファンらはウンジェの訪問を訝しんだ。
「何の用で来たんだろ?」
「お父さんの件じゃないの?」
「受けますかね」
「さあ…」




 カン・ドンジュンとジェゴルもウンジェの父親の手術を話題としていた。
「なぜ、断ると?」とジェゴル。
「当然だ」とキム・ドンジュン。「断るに決まってる。裏切られたんだから」
「裏切ったって…真実を暴露しただけだろ」
「まったく…”真実”とは青いな。正義が通用するならソン先生は病院船になど飛ばされてないさ」
「俺は楽しく勤めてるのに、そんな言い方は失礼ですよ」
「ほほう…お前も成長したもんだ。はっははは」
「だけど、ソン先生が手術するわけにはいかないの?」
「おい、本気で言ってるのか? 度胸のあるソン先生でも、父親の手術には動揺する。下手すりゃ事故を起こしかねない。もし、父親を死なせたら、ソン先生は二度とメスを握れなくなる」
 カン・ドンジュンの説明にさすがのジェゴルも黙った。
「ソウルまで出向いたのが無駄足になったら、どうなる?」
「そうなったらもう、どうなることやら…」




「受けるとも」
 ウンジェの前でキム・ドフンは答えた。
「父君の命が懸かってるんだから―私情抜きに受けるのが当然だ」
「教授…」
「しかし、困ったな。手術の予定が詰まってて時間を取れない。以前は君がいたから、時間を作ることもできたが、今は到底無理だ」
「教授…」
「他の医者を当たれ」
 キム・ドフンは席を立った。
「どうかお考え直しを」
 足を止めてキム・ドフンは答える。
「残念だが、どうにもならない」
「教授」
「帰りなさい」
 ウンジェは突然跪いた。頭を下げた。
「お願いします」
 キム・ドフンは再び足を止める。
「どうかお願いです」
 ウンジェは顔を上げた。
「父を助けてください」
 キム・ドフンはウンジェを見下ろした。

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