韓国ドラマ「青い海の伝説」(最終話)⑤
韓国ドラマ「青い海の伝説」(最終話)④
★★★
講演を終えたナムドゥがジュンジェらのもとに駆け付けてくる。
入って来るなりナムドゥは大きな声で注文を出す。
「ここにスンデスープをひとつ」
ナムドゥが席につくと隣のホン刑事が訊ねる。
「詐欺はもうやめたのか?」
「当然でしょう」
ナムドゥは対面のジュンジェを見る。
「こいつに捕まるのはまっぴらだし、兄貴の顔も立たない」
ジュンジェは笑った。
ホン刑事に酒を注いでもらいながら言う。
「今はちゃんと働いてますよ。それにしても、こいつの話を聞いた時は、ただのジョークかと…本当に検事を目指すなんて誰が本気にするんですか?」
ホン刑事は2人とグラスを重ねながら得意げに言った。
「つまるところ、俺のおかげだろうな」
ジュンジェはナムドゥと目を見合わす。
「ジュンジェ、お前は俺に出会って更生したんだ。見習うべきはお前じゃなく俺だったと胸に言い聞かせ―ナムドゥも精進してくれ。そうしてお前も正義の道を歩み始めた」
ジュンジェは苦い顔でいう。
「自信過剰ですよ」
「確かにそうだ」とナムドゥ。「なぜ、急に公務員を目指そうと? 検事になるなんて、よほどの決意がないとやれない仕事だ」
ジュンジェは手にしたグラスの液体を見つめおろす。大きくため息をつく。
どうしてだったのか…?
「さあ…な~、……そのきっかけを、なぜか、よく思い出せない…」
ジュンジェが黙ると、ホン刑事もナムドゥも黙った。
ナムドゥは酒ビンを握った。ホン刑事にお代わりを促す。
「ああ、もう…ともかく飲みましょう」
「ああ~」
「蒸し肉を?」
「いいね、蒸し肉を1つ」
まっとうな生き方をなぜしたくなったのか…亡くなった父や母のために…? それだけじゃない理由がいつもあるように思えてならない…しかし、それを思い出せない…
いつもここまでで終わってしまう。
まあ、いい。ジュンジェは思い直してグラスを握った。
「今日はとことん飲もう…」
★★★
ジュンジェらと酒を飲んだホン刑事はそのままジュンジェ宅に押しかけた。家にいたテオも加え飲み直しをやった。
酔いの回ったホン刑事はテオにも訊ねた。
「お前も詐欺はやめたんだな?」
ナムドゥが横から口を挟んだ。
「ああ、もう…店で飲んでる時にも話したでしょ。今は真面目に働いてますよ。バグバウンティ? そういうやつです」
「バグ…何? 何だ? どんな仕事だ?」
「プログラムの脆弱性を見つけるため、模擬攻撃を仕掛けたりする仕事です」
「…」
「理解できましたか?」
「無理だろ」とジュンジェ。
「ともかくだ」
スルメをかじる口でさっきと同じ言葉を繰り返す。
「悪いことだけはするな」
テオはうんざりした顔で言う。
「聞き飽きたよ、もう…」
「ところで俺の携帯はどこに行ったんだ?」
とナムドゥが辺りを探し出す。
すると上着の内ポケットからテオがその携帯を取り出して見せる。
「またお前か…盗癖が抜けないようだな」
ナムドゥは腕を伸ばしてテオの手から携帯を奪い取る。
スルメを噛みながら「ちゃんと自制しろよな」ジュンジェ。
携帯を弄りだしながら、「他のもんも何か取られてないか調べた方がいいみたいだぞ」
ジュンジェはズボンのポケットなどを確認しだす。ホン刑事もスルメを置いて上着のポケットなどに手を入れたりする。無くなったものがあるのに気づいたりする。
テオはホン刑事の前に手錠を取り出した。
ホン刑事は呆れるやら感心するやら…。
「ほんとに何て奴だ~酔ってこのレベルなのか?」
ジュンジェを見て言った。
それぞれ酒でよい気分となったところでナムドゥは席を離れた。誰かに電話などしだす。
「スジョンちゃん、俺だけど寝てた? 仕事中なの? 何時に終わる?」
ホン刑事はナムドゥの電話をしばらく観察していたが、最後の酒を引っかけて立ち上がる。スルメを口にくわえたまま、行こうとするホン刑事の衣服をつかんだのはジュンジェだった。
「どこへ?」
酔った身体を揺らし、ホン刑事は答える。
「家だ」
それを聞いてジュンジェは掴んだ衣服を下に引く。ホン刑事は座り込み、ジュンジェと睨み合う形となった。
ジュンジェは間近でホン刑事の顔を見た。
「行くな!」
すぐに両手でホン刑事の顔を挟み付けた。 両側から押さえつけられた口はおちょぼ口になった。ジュンジェは挟み付けたホン刑事の顔を睨んだ。呂律の回らない口調で言い聞かした。
「今日は誰も帰さないからな」
「頼むから帰らせろ。明日も仕事なんだぞ」
ジュンジェはホン刑事の首に腕を回す。スルメを噛みなおしホン刑事の首に回した腕をギュッと引き付ける。
「帰すもんか。朝まで一緒に飲むんだ。飲むぞ!」
スルメを握った手を振り回して叫ぶ。
「おいおい、どうしたっていうんだよ」
ジュンジェの拘束を受けながら、ホン刑事は嬉しそうにした。
ナムドゥは女への電話を梯子で続けている。
「結婚したの? ああ、悪かったね。旦那さんと幸せにな…」
気分よく女たちに電話しだしたはいいが、思わしい結果は得られないらしい。
ジュンジェもため息をつくようになった。ホン刑事もジュンジェの異変に気付いた。横で問いかける。
「おい、どうしたっていうんだ…?」
「また始まったのか?」
離れた席からナムドゥが問いかける。
ジュンジェはため息のような声を絞り出す。
「会いたい…」
ホン刑事は辺りを窺って訊ねる。
「誰に?」
もう一度ため息をつき泣きそうな声になった。
「会いたい…」
「何だよ、もう…! シラケるじゅないか」とナムドゥ。「最近、いい酒やっても最後にはこうなっちまうんです。酔っぱらうと急に泣き出しちまうんですよ。それで寝て起きたら忘れてたりするし…」
ナムドゥが説明するそばからジュンジェはメソメソと泣き出した。
「会いたい…」
ナムドゥは叫んだ。
「だから誰に会いたいんだ? それを言えと言ってるんだ」
しかし、ジュンジェはそれを誰にも答えられなかった。答えた瞬間、彼女は自分の頭から消えていってしまう気がしたから。
彼女の心をつなぎとめるためには、ただ偲ぶことしかできないような気がしてたから。
セファは目を開けた。セファの目からも涙がこぼれ続け、真珠が生まれ続けていた…。
ジュンジェに会いたい…!
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