韓国ドラマ「病院船」から(連載3)
「病院船」第1話➡病院船に導かれし者③
★★★
ヒョンはスギョンの手をほどく。
「運転手が来る」
車に乗り込もうとするヒョンに言った。
「お父さんのことは…もう忘れたい」
ヒョンは泣きたくなるのをこらえた。涙をこらえながら言った。
「必ず休んでから帰るんだよ。運転は代行に任せて」
「…」
「分かったね」
ヒョンは自分の車もそのままにスギョンの前から立ち去った。
★★★
港に停泊する病院船の場所にクァク・ヒョンは1人でやってきた。船にかかった橋を渡る。
デッキにナースたちの姿がある。ヒョンは彼女たちに声をかけた。
「こんにちは」
「どなた?」ナースのゴウン。
「初めまして。内科医のクァク・ヒョンです」
「ここに当選したんですか?」
「いいえ」
ゴウンは驚く。アリムを見る。
「じゃあ、なぜ病院船に?」
「僕は志願しました」
「何だって!」
デッキの後ろで声がした。
男がナースたちの間に顔を出した。
「誰が何をしたって?」
「あの先生…この船に志願したんだって」
男はクァク・ヒョンを繁々と見た。
「甲板長になって5年になるが、ここを志願してきた医者は初めて見た」
「看護師歴10年の私も初めてよ」
2人の話にアリムは目を皿にした。
彼は愛嬌まで見せている。
しかもイケメンだわ…
「では、船に乗ってもよろしいですか?」
「ど、どうぞ、乗ってください」
アリムが真っ先に返事した。
さらになれない言葉で続けた。
「病院船にようこそ」
船長のパク・ソヌは、病院船に戻る車の中で内科医は志願してきた、と事務長に説明した。だから、逃げるはずはない、と。
「そうだったんですか」
車を運転しながら事務長は胸を撫でおろしていた。
「だけど、その人は正気じゃないですね」
後部席の1人の言葉に、事務長は急ブレーキを踏んだ。
船長と事務長はジロリと後ろを睨んだ。
ゴウンらはさっそく船内を案内して回った。
「こちらは甲板員の方たちです。色々とお世話になってます」
「クァク・ヒョンです。よろしく」
「こちらが甲板長」
「どうぞよろしく」
彼は誰に対しても腰が低かった。
ゴウンは甲板から階段を上がりだす。
「医療と船舶の2チーム体制で―業務を遂行してるの。船舶チームは病院船の運航を担います」
2階へ上がってきた。見晴らしのいい船室やくつろぎの場所になっている。
「船舶チームは患者移送なども手伝ってくれます」
他のスタッフらと挨拶やハイタッチを交わしながらゴウンの案内は続く。
先輩の甲板員は船のマストの場所にいる乗組員に声をかけた。
「ジョンホ、新しい先生だ」
ヒョンは梯子を上った。メインマストの棚段に上った。そこから周囲を見回した。少し高さが上がるだけで眺めは格段にアップする。
「いい眺めだ」
眺めに充足するとヒョンは甲板員に礼を言って下におりていく。
おりて来るのを待っていたゴウンはさらに案内を続ける。
「こちらがうちの看護師たちです」
ヒョンはそこでも丁寧に挨拶した。
「よろしく」
最後にゴウンはヒョンを連れて本船のメインステージを備えた診察室に向かった。