韓国ドラマ「病院船」から(連載4)
「病院船」第1話➡病院船に導かれし者④
★★★
先輩の甲板員は船のマストの場所にいる乗組員に声をかけた。
「ジョンホ、新しい先生だ」
ヒョンは梯子を上った。メインマストの棚段に上った。そこから周囲を見回した。少し高さが上がるだけで眺めは格段にアップする。
「いい眺めだ」
眺めに充足するとヒョンは甲板員に礼を言って下におりていく。
おりて来るのを待っていたゴウンはさらに案内を続ける。
「こちらがうちの看護師たちです」
ヒョンはそこでも丁寧に挨拶した。
「よろしく」
最後にゴウンはヒョンを連れて本船のメインステージを備えた診察室に向かった。
★★★
「こちらへどうぞ」とゴウン。「超音波などの簡単な検査もできます。診療科は内科、歯科、韓方科、それに薬剤室もあります。ここがそうです」
ヒョンは中から処方箋を出す仕草のアリムに軽く合わせて礼をする。
「この上は操舵室です。そしてこっちがX線室。ここが歯科の診療室です」
「うわっ、すごい」
歯科室の設備にヒョンは感心して見せる。ゴウンは先に進む。
「ここが韓方科の診療室」
「そしてこの部屋が」
アリムが先回りして登場。アコーデオン式のドアを引いた。
「ジャーン、ここが先生の勤務する内科です」
ゴウンもやって来る。
「どうです? 気に入りましたか?」
ヒョンは笑顔を返す。
「はい」
診察器具に手を触れ、満足そうな表情をする。
手術室は外科医の戦場だ。ウンジェはありったけの技術と経験、知識を持ってその場に臨んでいた。
警告音が出る。
「血圧が下がっています」
粛々とウンジェの執刀は続く。
「先生!」とウンジェの後輩。
「今手術台にいるのは誰? あなたの父親?」
「先生…」
「感情移入せずに解剖だと思えばいい」
ウンジェはメスの入った場所を素早く縫い始めている。
「人間だと思わないで」
「ですがバイタルが…」
ウンジェは顔を上げる。後輩を睨みつける。
「深呼吸」
言われた通り深呼吸する後輩。
「ハサミ」
手を差し出す。手の平にパチッとハサミがぶつかる。黙って次の行為に入るウンジェ。ハサミを使い終わり、腹内に手を戻す。
「キム先生手を」
キム・ジェファンは怯えた目をウンジェに向ける。目で指図するウンジェ。恐る恐る手を入れるジェファン。
「私が押さえてる血管がわかる?」
首を横に振るジェファン。
「怖いの? 患者が死ぬかと?」
頷くジェファン。
「恐れてないで落ち着いて。あなたの震える手が患者を殺すことになるわよ」
「…」
「自信がなければすぐ出て」
「違います」
「なら私の代わりに血管を押さえなさい」
ジェファンは覚悟を決めた。自分の手で言われた血管を押さえた。
ひとりの医師がデハン病院外科長キム・ドフンの部屋に駆け込んだ。
「大変です、教授」
「どうした?」
「3番の患者ですが…」
「執刀してるのはソン先生だろ?」
「はい」
「なら心配ない」
「そうじゃなくて患者はチャン・ソンホなんです」
「チャン・ソンホって、まさかドゥソングループの後継者か?」
「はい」
ジェファンはたまらずに言った。
「もう限界です」
「しっかり押さえて」
指示を出しながらもウンジェの手は動き続ける。傷んだ内臓を取り出すのに成功する。
「では閉じるわよ」
「すごい!」
ジェファンはウンジェの沈着冷静なメスさばきに驚くしかなかった。
キム・ドフンは手術の見学室に顔を出した。
「経過はどうだ?」
手術にあたったスタッフは丁重に頭を下げる。
「縫合中です」とウンジェが答えた。
「ソン先生は出て来てくれ」
歩きながらキム・ドフンは訊ねる。
「患者について聞かせてくれ」
「午前5時7分に発生した交通事故により、肝臓と脾臓を損傷。肝右葉を切除し、破裂した脾臓は摘出しました」
この後、キム・ドフンがマスコミのインタビューに臨んだ。
―ドゥソングループの後継者が搬送されたと聞きます。容体は?
キム・ドフンはウンジェから聞いた通りの説明を行った。
科長に付き従ってきたウンジェは、キム・ドフンが受け答えしてる途中にマスコミの前から姿を消した。