チョルスはユギョンを部屋まで送ってきた。助手席のドアを開け、ユギョンをおろした。
「わざわざ、ありがとう。呼び出してごめんね」
「いいんだ・・・ユギョン」
門の前でチョルスは切り出した。
「もう、呼び出すようなことはするな。結婚は近いんだろ。こういうことはしない方がいい」
「チョルスさん・・・」
「俺も出直したいんだ。過去は忘れることにした」
「・・・」
「じゃあ、行って。俺も早く帰らないと」
行きかけるチョルスをユギョンは呼び止める。
「チョルスさん、あの人を愛してるの?」
「あいつを?」
チョルスは返事に詰まる。
「答えられない?」
「君には関係ない。行って。俺は行くよ」
複雑な表情で背を返すチョルスに向かってユギョンはつぶやく。
「あの人への気持ちは愛じゃない。そうでしょ?」
ビリーはベッドで横になり、コン室長に脚を揉んでもらいながら思案に耽っている。
小さな声で嘆く。
「ヤツがアンナを捨ててくれないと、俺は彼女を連れ戻せない・・・」
「チャンの人間性を見落としていました」コン室長が手を止めて言った。「人一倍義理堅くて、責任感の強い男です。だから、捨てられないでいる」
「僕と比べてるのか?」
ビリーは怖い目をコン室長に向けた。
コン室長は大きく首を振る。
ビリーはため息をつく。
「どうしたもんかなあ・・・」
ふいに身を起こす。
「いっそ・・・真実を話してしまえば・・・」
二人は目を合わせる。悲観的な顔になる。
「かえって、悲惨な結果になってしまうよな?」
ビリーは再びベッドに倒れこむ。
「このままだと貧乏人になってしまうし・・・連れ戻せば御通夜が待つ・・・」
コン室長は身震いした。
「もう一本、点滴を打ちますか?」
「なんで、こんな事態になったのかなあ・・・思い返せば・・・最初の頃はすごく幸せだった・・・」
アンナはバス停のボックス内でじっと座り込んでいる。
彼女は自分がどうしてチョルスと一緒に暮らしているのかを考えていた。
「そうよ・・・本当は何も覚えていない。感情が戻ったと錯覚してるだけよ。・・・私にもチョルスとの・・・忘れられないような大切な思い出があったのかな・・・?」
ビリーはアンナとの思い出に浸っていた。
「僕の一番大切な思い出は・・・アンナが・・・結婚を承諾してくれた瞬間だった・・・」
ビリーはアンナの前で跪いて愛の指輪を捧げたのだった。
そうしてアンナの前で誓いの言葉を立てた。
「100日間、プロポーズを続けたら承諾していただけますか?」
「勝手にすれば?」
アンナは邪険な返事で自分の誓いをはねつけた。
自分はアンナの前で跪いて立てた誓いを実行した。雨の日も風の日も欠かさずだ。
そうして木枯らしが吹き、枯葉が舞い、雪が降り、99日間が過ぎた。
100日目を迎えたんだ。
ビリーの話にコン室長は頷いた。
「社長の熱意に感動して承諾してくれたんですね」
「いや、そうじゃない」
ビリーは答えた。
script type="text/javascript" src="//translate.google.com/translate_a/element.js?2db9cb=googleTranslateElementInit"></script> google-site-verification: google3493cdb