雨の記号(rain symbol)

韓国ドラマ ファンタスティック・カップル 第12話(11)





 チョルスの帰りは遅かった。アンナを始め、子供たちは眠りについていた。
 チョルスはアンナの寝床の前に立った。
 アンナの眠りは深くチョルスに気付かない。
「そうだな…清算した方があとくされもないかもな…」
 部屋には深夜の冷気が入ってきている。
 チョルスは身を震わせた。
「ちょっと寒いな」
 窓に歩み寄って開いているカーテンを閉じる。
 部屋に戻ろうとした時、アンナの寝姿を気に留める。彼女は毛糸のフードをかぶり、身を縮こまらせて寝ている。
「サンシラーッ」
 声をかけ、身体を揺さぶる。
「ここは寒いから俺の部屋で寝ろ」
 アンナは目を開けた。チョルスを見た。
「けっこうよ。急に優しいフリなんかしないで。ここが一番落ち着くの。いいからあっちへ行って」
「なら、好きにしろ」
 チョルスはアンナのそばを離れた。
 アンナは目を開けた。ドアの音がした。アンナはチョルスの部屋と反対側に寝返りを打った。
「優しくなんかしないで…気持ちを整理しなきゃ…」
 部屋に入ったチョルスはベッドに腰をおろした。
 あれじゃいくら何でも寒かろう…思いついて押入れから電気毛布を引っ張り出した。
 寝ているアンナのところに運んだ。布団の上に投げつけた。
「好きなように使え」
 無愛想に言いおいて部屋に戻った。

 アンナは投げつけられた布団にそろそろと手を伸ばした。目に止まったコードを握った。
「何? 変な布団ね…これ、何に使うの?」


 朝になり、小鳥が鳴きしきっている。
 チョルスは部屋から出てくる。
 アンナの寝床が気になって見た。昨夜渡した電気毛布をびっしり身体に巻いて寝ている。しかし、電源の差込プラグはそのままにし、電気毛布の機能を使っていない。
 案の定か…チョルスの口もとから笑みがもれた。
「おい、サンシルッ」
 アンナは身体を起こし、寝ぼけ眼をチョルスに向けた。
「電源を入れないと温かくなんかないだろ。どうして入れなかったんだ」
 アンナは気になっていた差込プラグを手につまんで見せた。
「これを入れるの? そんなら最初に言ってよ」

 
 チョルスは電気毛布の使い方をアンナに教えてやった。
 アンナは何も知らない新妻のようにはしゃいだ。
「あっ、チャン・チョルス、布団がポカポカしてきた…!」
「だろ? 冬は電気毛布が最高だ」
「ほんと、不思議だわ。布団の中に何が入ってるの?」
 チョルスはアンナのそばに来て座った。毛布を手で押さえ、指で熱線を探り当てた。
「ここをさわってみろ。これが熱線だ」
「…」
「こんなことも知らないのか?」
 アンナはチョルスを憎らしそうに見た。

(偉そうに!)

 アンナは思いついて言った。
「チャン・チョルス。枕とソファーにも熱線を入れられない? そしたらもっと温かくなるわ」
「そんなに寒いか?」
「…」
「これからはもっと寒くなるぞ」
「寒いと頭が冴えるものよ。今の私にはそれが必要なの」
「そうだな。もっと寒くなる前に帰って行かないと…」
 チョルスの言葉にアンナは意地を張る。
「これがあれば平気だわ。チャン・チョルス。どうして今頃になってこれを出すのよ?」
 アンナは枕を手にした。
「あっち行って」



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