韓国ドラマ「青い海の伝説」第17話②
韓国ドラマ「青い海の伝説」第17話①
★★★
その頃、ジュンジェは粘り強く父親の説得を続けていた。
「もう一度だけ言う。いや…、頼むよ。頼むから俺を信じて…俺と一緒にここを出てくれ」
「行かない」
イルジュンは受け入れない。
ジュンジェは説得を諦めた。父に背を向け、帽子をかぶった。
父親の部屋を出たジュンジェのところへナムドゥがやってきた。
「どうして大声を出したんだ?」
ジュンジェは答えずに部屋を離れる。
「作業を終了しました」
階段をおりたナムドゥは家政婦に報告する。
家政婦は怪訝そうにジュンジェを見た。
「薬を飲んだ虫がもがいて出てくると思います。ではこれで失礼します」
ジュンジェの言葉に真実を感じつつ意地を張ったイルジュンは、ベッドに腰をおろしたまま涙に暮れた。
いまさら後戻りはできない。それがイルジュンのせめてものプライドのようだった。
カン・シネはジンジュの企んだウソの会合の席へ顔を出した。
★★★
会合には4人の顔ぶれがあった。まだジンジュの姿はない。
「どうしたの? 急に黙るなんて私の噂でもしてた?」
1人が答えた。「
「大した話ではありません」
「お久しぶりです。心配してたんですよ」
「こちらへどうぞ」
カン・シネは黙って腰をおろす。
「ジンジュはまだ来ないの?」
「はい」
1人が答えた時、ドアが鳴った。ジンジュが入ってくる。
「あら、カン・ソヒさんも来られたんですか?」
「カン・ソヒさん?」
「だってそうでしょ? 奥様って呼んでほしいの?」
「…!」
「だけど、誰が招待したのかしら。気の毒だからあえて呼ばなかったのに…」
「気の毒ってどういうこと? 何を話す気?」
「別に話っていうほどでも…」
ジンジュはドアの方を見る。誰かを呼んだ。
「姉さん、入ってくださいな」
ドアが開き、1人の女が入ってくる。モ・ユランだった。
カン・ソヒの表情は変わった。
出かけた時の元気を消費してセファは帰宅した。
家の中は照明も乏しく静まり返っている。誰も戻っていないようだった。
セファは部屋を見わたした。
― ジュンジェ、私はここが好きだった。初めての家。いろいろのことがここであった。いろいろのことをここで学んだ。…いつでも帰って来られる場所。あなたと笑顔で過ごした場所。…あなたを見つめて、あなたを愛せた場所。でもこれ以上は…ここにいられないみたい…
「私は失礼するわ」
カン・シネは席を立とうとする。
「でもね」ジンジュが制した。「せっかくですから、少しお話を聞いて行かれたらどうですか?」
カン・シネは不快そうにジンジュを見る。
ジンジュはまくしたてる。
「皆さんもSNSなどで噂は御存じだと思いますが、こちらの方こそがホ会長の―謎に包まれていた前妻なんです」
「…」
「ホ会長と離婚後、生き別れていた息子さんと、先日、再会を果たしました」
「えっ!」と1人。「家を出て行方不明だったとかいう…」
「そうなのよ」
みなはいっせいにモ・ユランを注目した。
「よかったですね」
「拍手を送りましょう」とジンジュ。
カン・シネ以外は手を叩いた。
「言ったでしょ」
モランはカン・シネを見た。
「必ず見つけ出して元いた場所に戻すとね。覚悟してて」
カン・シネは鼻で笑う。
「よかったわね。感動的な再会を果たすことができて…でも、元いた場所に戻すのは無理よ」
「…」
「その場所はもうないから」
「何ですって?」
「誰も知らないみたいね。お生憎様。夫は国内外で所有する全財産を私とチヒョンに譲るそうよ。遺書も公証を受けた」
ジンジュは驚きの声を上げる。
「楷書を継ぐのもあんたの息子じゃないわ。私の息子、チヒョンよ」
「…」
「誰がここにいたかしっかり覚えておくわ」
女たちはそろって動揺を見せる。カン・シネは皆を見回した。
「今後―私の援助は期待しないでね」
言い終えると席を立った。
カン・シネが出ていった後、ジンジュはモランを見た。
「姉さん、今の話は本当かしら? 本当ならホ会長はひどすぎるわ」
別の女も同調した。
「実の息子をさしおいてどうしてなの? ありえない」
「まったくよ…! ほんと信じられない。本当に譲ったらホ会長は…最低の人間よ」
モランはみなの話を黙って聞いていた。
その頃、ジュンジェは粘り強く父親の説得を続けていた。
「もう一度だけ言う。いや…、頼むよ。頼むから俺を信じて…俺と一緒にここを出てくれ」
「行かない」
イルジュンは受け入れない。
ジュンジェは説得を諦めた。父に背を向け、帽子をかぶった。
父親の部屋を出たジュンジェのところへナムドゥがやってきた。
「どうして大声を出したんだ?」
ジュンジェは答えずに部屋を離れる。
「作業を終了しました」
階段をおりたナムドゥは家政婦に報告する。
家政婦は怪訝そうにジュンジェを見た。
「薬を飲んだ虫がもがいて出てくると思います。ではこれで失礼します」
ジュンジェの言葉に真実を感じつつ意地を張ったイルジュンは、ベッドに腰をおろしたまま涙に暮れた。
いまさら後戻りはできない。それがイルジュンのせめてものプライドのようだった。
カン・シネはジンジュの企んだウソの会合の席へ顔を出した。
★★★
会合には4人の顔ぶれがあった。まだジンジュの姿はない。
「どうしたの? 急に黙るなんて私の噂でもしてた?」
1人が答えた。「
「大した話ではありません」
「お久しぶりです。心配してたんですよ」
「こちらへどうぞ」
カン・シネは黙って腰をおろす。
「ジンジュはまだ来ないの?」
「はい」
1人が答えた時、ドアが鳴った。ジンジュが入ってくる。
「あら、カン・ソヒさんも来られたんですか?」
「カン・ソヒさん?」
「だってそうでしょ? 奥様って呼んでほしいの?」
「…!」
「だけど、誰が招待したのかしら。気の毒だからあえて呼ばなかったのに…」
「気の毒ってどういうこと? 何を話す気?」
「別に話っていうほどでも…」
ジンジュはドアの方を見る。誰かを呼んだ。
「姉さん、入ってくださいな」
ドアが開き、1人の女が入ってくる。モ・ユランだった。
カン・ソヒの表情は変わった。
出かけた時の元気を消費してセファは帰宅した。
家の中は照明も乏しく静まり返っている。誰も戻っていないようだった。
セファは部屋を見わたした。
― ジュンジェ、私はここが好きだった。初めての家。いろいろのことがここであった。いろいろのことをここで学んだ。…いつでも帰って来られる場所。あなたと笑顔で過ごした場所。…あなたを見つめて、あなたを愛せた場所。でもこれ以上は…ここにいられないみたい…
「私は失礼するわ」
カン・シネは席を立とうとする。
「でもね」ジンジュが制した。「せっかくですから、少しお話を聞いて行かれたらどうですか?」
カン・シネは不快そうにジンジュを見る。
ジンジュはまくしたてる。
「皆さんもSNSなどで噂は御存じだと思いますが、こちらの方こそがホ会長の―謎に包まれていた前妻なんです」
「…」
「ホ会長と離婚後、生き別れていた息子さんと、先日、再会を果たしました」
「えっ!」と1人。「家を出て行方不明だったとかいう…」
「そうなのよ」
みなはいっせいにモ・ユランを注目した。
「よかったですね」
「拍手を送りましょう」とジンジュ。
カン・シネ以外は手を叩いた。
「言ったでしょ」
モランはカン・シネを見た。
「必ず見つけ出して元いた場所に戻すとね。覚悟してて」
カン・シネは鼻で笑う。
「よかったわね。感動的な再会を果たすことができて…でも、元いた場所に戻すのは無理よ」
「…」
「その場所はもうないから」
「何ですって?」
「誰も知らないみたいね。お生憎様。夫は国内外で所有する全財産を私とチヒョンに譲るそうよ。遺書も公証を受けた」
ジンジュは驚きの声を上げる。
「楷書を継ぐのもあんたの息子じゃないわ。私の息子、チヒョンよ」
「…」
「誰がここにいたかしっかり覚えておくわ」
女たちはそろって動揺を見せる。カン・シネは皆を見回した。
「今後―私の援助は期待しないでね」
言い終えると席を立った。
カン・シネが出ていった後、ジンジュはモランを見た。
「姉さん、今の話は本当かしら? 本当ならホ会長はひどすぎるわ」
別の女も同調した。
「実の息子をさしおいてどうしてなの? ありえない」
「まったくよ…! ほんと信じられない。本当に譲ったらホ会長は…最低の人間よ」
モランはみなの話を黙って聞いていた。