そう、読むというよりも使うといったほうがいいだろう。中学以来行ったこともないお上りさんぼーずが、東京で遊ぶには必須の雑誌だった。コンサート、映画、絵画展と内容だけでなく地図までついており、裏町の小さなライブハウスに行くときはいつもカバンに忍ばせていったものだ。
表紙を飾る及川正通氏のイラストがよかった。ジョン=レノンなんかはしばらく表紙だけ切り取って飾っていたくらいだ。顔は良く似ているんだけど、人体部分はデフォルメがしてあり、独特の雰囲気を持つイラストだった。35年表紙を書き続け、同一雑誌の表紙では世界最長記録、ギネス認定だそうだ。
使うと書いたが、読む所がまったくないわけではなかった。記事で一番好きだったのは故中島らも兄の作『微笑家族』。記憶が定かではないが、カネテツフーズの広告漫画だったような気がする。かねてつのてっちゃんと父(ブルースブラザーズのサングラスをかけたジョン=ベルーシ似の過激なおやぢ)が繰り出すシュールなギャグだった。
ページの端には縦書きの読者投稿欄『はみだしぴあ』があった。面白ネタが詰まっており、演奏待ちの暇潰しには最適だった。「網タイツが好きな僕の姉は近所で“歩くボンレスハム”と言われている」なんてのは今でも覚えている。
愛読してきた「ぴあ」だが、隔週から週刊にしたときに縁を切らせてもらった。売り上げを増やそうとする姿勢が余りにも見え見えで腹が立ったからだ。直前になってライブを教えてもらっても、調整が付かないことだってある。また、その頃に通ったライブハウスでは月間スケジュールを配ってくれたので、なんとかなったのだ。
その内にインターネットが一般化し、演奏側・ライブハウス側共にチェックがたやすくなった。その後「ぴあ」は再び隔週刊に戻されたと聞いたが、もはや手に取ることはなかった。
縁は切ったものの、あれだけお世話になった雑誌が休刊と聞くと一抹の寂しさを覚える。「ぴあ」を片手に聴きに行った店で素晴らしい演奏を聴かせてくれた、ネイティブ=サン、ウエストロード、ポール=ジャクソン、房之助達の熱い思い出がそうさせるのだと思う。
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やっくん
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