読み終わった時、なんか、わかるなーと思った。
なにが、わかるなー、と思ったのか、ずっと考えている。
読後、浮かんだのは、母が、秋田の山あいの村の道を、夕方、町の中学へ通学している兄を懐中電灯を持って、迎えに行ったら、狐の嫁入り行列に出くわして、米代川の橋を渡れなかったことがあると、話したことだった。
母は、なんども狐に化かされて、と言っていた。
母は生まれ育った、秋田の山の中の日常を、ふと、思い出したように、語るときがあった。
母の家に、旅人が宿を求めてきたので、止めてあげたら、旅人の持っていた荷物から白蛇が逃げ出したことがあったと。
その白蛇が、母の実家に棲みついて守り神になったと。
母の秋田の実家の庭の奥に、その白蛇を祀る祠があった。
また、母の出征していた兄が、母の枕元に、マントを羽織った姿で立った夢をみたという。
見たことがない植物の生い茂る所にいると言って、去って言ったのだと母は言う。
母の兄は、特攻で、南の海で死んだ。
まだ、いっぱいある母が話したそれら話は、それは今で言うファンタジーじゃなくて、母にとっては日常の時間軸で起きたことだった。
聞いている私も、まったく不思議な事と思わずに聞いていた。
そんなことが走馬燈のように、浮かんできたけれど、『いちかちゃん』の読後の感想には、全然、なっていない。
まずは、昨日から、ずっと頭のなかに、浮かんでくることを、整理整頓しなくてはならないようだ。
いとうみくさんて、やっぱり凄い作家だなーと思った。
いちかちゃんという子の、いとこの一人称で語られる、その子の視点の、揺るがないおおらかさの描写。
いちかちゃんの、無碍な個性の描写。
すごいなー、と思った。