ケセランパサラン読書記 ーそして私の日々ー

◆ 『日本文学の歴史 11  人間讃歌』  稲垣達郎・下村富士男  編  角川書店 

                     

 我が家は、“家”というより、“古本屋の物置”というような状況で、人生残りの時間を考え、できるだけ整理しようと決意して処分箱に入れた本。

 後ろ髪引かれて、ふと手に取ってしまう。
 と、それが、なかなか面白い本だったりするのである。

 その一冊が、これ。


 以前に読んだ記憶が甦りつつも、笑ってしまうのです。

 作家って、ほんとユニークで、変に可笑しい。
 本人たちは、借金だったり、いろんなことが起きる度に真剣なんだけど、それが、なぜか、笑えて、時々、妙に切なげだったり、して。

 書く人たちって、文字を残すから、そのあたりが、やっぱり、後世の人間にとってはありがたいね。


 そんな、なんだかんだが、綴られている目次をざっと記してみよう。


 大正の開幕
 伸びゆく白樺
 実篤と直哉
 インテリゲンチャの登場
 第一次大戦とデモクラシー
 第四階級の誕生
 リアリズムの終焉
 苦悩する近代
 童心の発見
 新しきうたびと
 近代史の展開
 犀星と朔太郎
 芸術と実生活のあいだ
 関東大震災
 廃墟に芽吹くもの
 大衆の広場へ

 特集
 『暗夜行路』の旅
 茂吉の文学と風土
 『大菩薩峠』地誌抄

 以上。

 特に、とってもウケて笑ったのは、“伸びゆく白樺”と“犀星と朔太郎”の章。
 犀星も朔太郎も、まさに人間だよね!と、だれだっけ、あのなんたらみつおのセリフと同じ、言葉を発してしまうのです。


 “童心の発見”は、あの鈴木三重吉のはなしである。
 散々、あちらこちらで、彼の悪行というか、改作は自明の事実となっているので、驚きもしないけれど、『赤い鳥』には、以外な大文豪も書いているから、やっぱりねと、一見の意味ありなんですよね。

 『蜘蛛の糸』は、芥川の生原稿が自宅に残っていたから、現在の『蜘蛛の糸』があるわけで、それがなければ鈴木三重吉の改悪作品を読むことになってしまうのだ。否、それなら確実、現代まで存在していなかったですね。


 奥付をみると初版本で昭和43年とある。
 因みに定価650円。


 当時の私は、いったい何を考え、この全集を買ったのか、今やまったく不明だけれど、それにしても、角川源三は、面白い仕事をしていたものだと、感嘆!

 本好きには、オススメのレア本です。
 とにかく、往時の写真も満載で、かなり楽しめることは間違いなしです。(^○^)





 




 

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