人類の星の時間
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STERNSTUNDEN DER MENSCHHEIT Zwolf historishe Ministuren
著者
シュテファン・ツヴァイク
訳者
片山敏彦
〈星の時間〉について、ツヴァイクはつぎのように説明している。
「芸術家の創造において成就される本質的、永続的なものは、霊感によるわずかな、稀な時間のなかでのみ実現する。
同様に、歴史のなかでも崇高な、忘れがたい瞬間というものは稀である。……無数の人間が存在してこそ一人の天才が現われ出るのであり、坦々たる時間が流れ去るからこそ、やがて本当に歴史的な、人類の星の時間というべきひとときが現われ出るのである。」(序文)
ゲーテ、ナポレオン、ドストエフスキー、スコットなどの天才が輝きを放った、十二の世界史の運命的な瞬間を凝縮して描いた、ツヴァイク晩年の傑作。
名著であるし、内容も興味深い。
しかし、忘れられてしまった「本」でもあると思う。
日本でも、ドイツでも。
ツヴァイクは独自の視点で、歴史の内側にあるエネルギーの波形を読み取り、決定的な状況の瞬間をえぐり出している。
その見識と感性には眼が見ひらかれる。
「識る」ということの重要性、その事で喚起される世界の、その瞬間を感知することによって、灰色の脳の扉が開き、光が射すようだ。