ケセランパサラン読書記 ーそして私の日々ー

◇『人類の星の時間』 シュテファン・ツヴァイク 著 片山敏彦 訳  みすずライブラリー



 人類の星の時間   
 STERNSTUNDEN DER MENSCHHEIT Zwolf historishe Ministuren

 著者
シュテファン・ツヴァイク
 訳者
片山敏彦

 〈星の時間〉について、ツヴァイクはつぎのように説明している。
 「芸術家の創造において成就される本質的、永続的なものは、霊感によるわずかな、稀な時間のなかでのみ実現する。
 同様に、歴史のなかでも崇高な、忘れがたい瞬間というものは稀である。……無数の人間が存在してこそ一人の天才が現われ出るのであり、坦々たる時間が流れ去るからこそ、やがて本当に歴史的な、人類の星の時間というべきひとときが現われ出るのである。」(序文)

 ゲーテ、ナポレオン、ドストエフスキー、スコットなどの天才が輝きを放った、十二の世界史の運命的な瞬間を凝縮して描いた、ツヴァイク晩年の傑作。


 名著であるし、内容も興味深い。

 しかし、忘れられてしまった「本」でもあると思う。
 日本でも、ドイツでも。


 ツヴァイクは独自の視点で、歴史の内側にあるエネルギーの波形を読み取り、決定的な状況の瞬間をえぐり出している。
 その見識と感性には眼が見ひらかれる。

 「識る」ということの重要性、その事で喚起される世界の、その瞬間を感知することによって、灰色の脳の扉が開き、光が射すようだ。



 


 

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