ケセランパサラン読書記 ーそして私の日々ー

◆『倅・三島由紀夫』 広岡梓 著 文春文庫

  

 平岡梓とは、言うまでもなく三島由紀夫の実父である。
 三島が、市ヶ谷で割腹したのは、1970年11月。
 この本、『倅・三島由紀夫』が上梓されたのは、1996年11月である。

 息子のことを、親は、どれぐらい知っているだろう。
 
 三島のような死に方をされたとしたら、私は、親としてなにを語れるだろう。
 己の、来し方を振り返ってみる。
 多分、私が、自信をもって、息子について語れるのことは、ほんの幼少期の頃のことぐらいかも知れぬ。
 あとは、幻想みたいなものだろう。

 親の子への記憶というものは、多分、自分の腹から生まれた自分の細胞の分身みたいなものだから、同じような感覚、センスとでもいうのか、そんなものを、互いに持っているはずだという親の独善かも知れぬ。親の抱いている幻想が為している記憶だということを、親は大いに自覚すべきことなのかも知れぬ。

 いわんや、息子が大学を生まれ育った町の遙か彼方を選択し、進学後、その間、ほとんど1年に1回ないし2回の帰省中の短期間に、成長してから息子の世界観、価値観、そのような、いわば哲学的なことを、理解しているとは、私には、自信を以て言えないような気がする。せいぜい、箸の上げ下ろしぐらいは、ちゃんとやってくれてるだろうぐらいは、自信は以て言えるかな、という程度である。

 三島由紀夫の父、平岡梓が、文字にして三島を語ったことは、ある意味、三島評論の書き手には、大いに役立つ資料となったであろうことだと思う。
 それは、あくまでも父、平岡梓の視点で書かれたものであっても、三島という人を知る一部分に過ぎなくても、貴重な資料となることは間違いない。
 
 だいたい、三島のすべてを書くなんぞ、三島自身だって、三島由紀夫を語れていたかどうか……。

 そんなことを思いつつ、読んだ。

 それにしても、三島が命を賭けた、途方もない、時代が、皮肉にも、やってくやもしれません。
 かなり現実味をおびて。
 私は、沖縄で叔父が戦死しているし、そのことの虚しさと苦しさと悔しさを、祖母からも母からも、いっぱい聞いてきたし、戦時中の悲惨で過酷な状況も散々、聞いてきたので、たとえ、どであれ、戦争は、とっても厭だ。


 連休中に、帰省した息子と、いろいろな戦争映画の話しをしていているうちに、もし、ロシアがウクライナのように北海道を突然、攻撃してきた場合、どこが、生命線となるだろうという話しになった。
 北海道は、北方四島が根室から目視できる位置にある。
 サハリンだって、ウラジオストックだって、目と鼻の先。
 そんな気になったら、ロシアはどこからでも、やってこられるのだ。
 随分前のことだが、函館空港に、なんらレーダーに捕らえられず旧ソ連の戦闘機ミグが飛んできたことがある。それは亡命が目的だったので、日ソの戦闘状態にはならなかったけれど、あわや!という事態であったことは事実である。

 そんなことを考えると、北海道の横断ラインの一番短いエリアが防衛線になるだろう。そうなると、やっぱり防衛線は渡島檜山あたりから、津軽海峡だろうという話しになった。
 北海道を、横に1本線を引くと、一番短いラインは、檜山支庁とその隣の渡島市庁である。

 実はこのあたり、明治新政府と榎本武揚が闘った函館戦争の戦場にもなった場所である。
 榎本の開陽丸が座礁したのは渡島、江差の海であり、土方歳三が、馬上、鉄砲で撃たれたのは、函館郊外の峠である。


 北海道地図の、函館から道央へ向かうくびれの部分。左が檜山支庁、右側は渡島支庁。
 北海道を、まずは14エリアに分け、支庁と称している。因みに札幌は石狩支庁に属する。(支庁という概念は都府県にはないので、わかりにくいだろうなぁ。)

 それで一番長いラインが、第二次世界大戦後、ソ連がポツダムで先勝の領土として主張したのが留萌ー根室だ。このラインの長さは、日本地図上最長ではないだろうか。当然の如く、共産主義ソ連の拡大をおそれた米国のオシで、北海道は日本国の領土のまま、サハリン、北方四島を手放したのです。(わたいのヒストリア蝦夷地編)
 ついでにひとこと。
 樺太、北方四島と北海道での対ソ連戦は、ポツダムの敗戦受託の8月15日以後も戦闘は継続されたのです。案外、知られてないけれど。

 北海道は、日本国領土の4分の1をなし、北海道の食料自給率は日本国唯一の200%である。
 それを守りきれるかどうか、また北海道居住者はロシア共存を望むか、否か、などと、三島から、おおよそ、話題は飛んで、飛んで、超怖いシュミレーションごっこの夜になったのでした。

 長々、書いちゃった。
 読む人、いないよね。(苦笑)

 三島由紀夫から、榎本武揚、土方歳三まで、とっても飛躍した話題になってしまいました。

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