もっと空気を

私達動物の息の仕方とその歴史

地獄の吸血鬼イカ!!

2020-01-23 20:00:56 | 日記
地獄の吸血鬼イカ:イカとタコの祖先!

タコやイカは巻き貝や二枚貝などと同じ軟体動物で、約5億年前に生まれた最初の軟体動物は頭部に1枚の貝殻の板を持つナメクジ様の動物でした。
そこから数億年がたって、2億年前から1億5千万年前の中生代ジュラ紀(恐竜が繁栄し鳥が出現した)に共通祖先のコウモリダコを経てタコやイカに進化したようです。

コウモリダコは現在も熱帯・温帯の600~900mの酸素が少ない深海に住む約30㎝の軟体動物で、活発には運動しない生活を送っています。
イカとタコの両方の形態を持っているので、祖先と考えられていますが、まだはっきりしていません。

<コウモリダコ>
図のように、暗赤色の体、巨大な青い目、8本の腕の間にマントのような皮膜を持ち、伸びる腕には鉤のような突起物がある恐ろしげな容姿をしています。
この怪しげな姿態のために学名は「地獄の吸血鬼イカ:Vampyroteuthis infernalis」というすさまじいものです。
和名は、足と皮膜がコウモリ傘のように見えることに由来しています。
8本の腕の根元には体長の8倍ほどの2本の長い「触糸」があり、粘液を分泌してプランクトンの死骸や藻、甲殻類の殻などを集め、ボール状にまとめます。
それを腕にある多数の肉質の「触毛」を使って口に運んで食べているようです。その点は現在のイカやタコの食生活とはかなり違います。

私達が、ほとんど毎日のように、茹でたり、刺身やイカ焼きにして食べているイカやタコに、こんなミステリアスな過去があったのですね!


参考文献
モントレー湾水族館研究所(MBARI)の研究
2012年9月26日「Proceedings of the Royal Society B」誌オンライン版。
タコの心身問題
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イカの知的な能力について

2020-01-23 18:00:00 | 日記
イカの知的な能力について

タコと違ってイカは水中を群れで泳いでいて、その時には見張り役もいるそうです。また餌をとって食べる順番も決まっていたり、子孫を残すオス同士の争いで交接の順位が決まったり、などイカの社会にも階層がみられるといわれてます。
更に学習もできて、例えば2つの異なる図形のうち、一方が出たときは餌を採れて、別の図形では採れない練習をすると、図形だけで餌をとれるかどうか判断できる条件付けの学習や、簡単な迷路の中で出口を探す練習をすると、その道順を記憶したそうです。こうした学習の記憶には、私達の記憶と同じように、短期の記憶と長期の記憶があるらしい。

さて、犬や猫は嗅覚が発達していて、「臭い」が世界を知る重要な情報であり、コウモリやイルカは超音波を使った「音」で仲間や餌の場所を知ることができます。動物によって外界を知るための情報源はそれぞれが持っている目や耳や鼻などの得意な感覚器官を使っています。
どうやら、イカは私達類人猿と同じように視覚に頼る動物のようです。
その脳は両方の大きな目の間にあって、特に左右の目の裏側には「視葉」という目に入った画像を処理する専用の脳をもっていて、それを含んだ脳全体はずいぶん大きいといわれています。

イカの水槽に鏡を入れると、鏡に映る像を見たときには仲間や敵に対するのと違う行動パターンがみられます。そこで、イカの両目の間にマークを付けて鏡を見せその反応を調べたところ、鏡を見る時間が長くなるという反応があったとのことです。
これはマークテストといい、鏡に映った像を自分であるとわかっているかどうか(鏡像自己認識)を調べるために動物行動学で使われる方法で、哺乳類ではヒト以外にチンパンジー、オランウータン、イルカ、ゾウ、ブタなど少数でしか確認されていません。
イカがみせた鏡への反応から、イカも鏡の像を自分とわかっている可能性があるようです。

チンパンジーの研究によると、鏡に映った像が自分自身だとわかる能力は自分と他のチンパンジーを区別できて、他のチンパンジーの行動や存在をわかって行動することができる能力と強い関連性があるとのことです。
イカは数億年の進化の間に、その大きな脳と発達した目を持って仲間と共に海中を泳いだ結果、自分と仲間のイカを区別して意識できるようになり、自分は自分だと判っているのでしょうか!

このように、イカもタコも大きな脳と発達した目、高い知的能力を持つことがわかってきました。脳は栄養も酸素を最も多く消費する臓器と言われています。タコやイカの持つ効率のよい呼吸-循環器系が運ぶ豊富な酸素と栄養が大きな脳を支えて知的活動を可能にしているのでしょうか。

参考文献
石田譲 『イカの心を探る』(NHK出版、2011年)、J J Animal Psychology, 62, 1, 111-124 (2012)、Animal Cognition 2019, 22, 1171–83|
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