南木山(なぎさん)の春(1)
ここは北軽井沢・南木山(なぎさん)、有名な避暑地軽井沢の北側にある。
春の日差しを浴びて壮年の男が一人、別荘のベランダから外を眺めている。
男の目線の先は高くそびえているカラマツの芽吹きだ。
樹齢50年のカラマツ林の大木が林立し一斉にめぶいている、
細かい枝と枝が絡み合い数々の枝に若草色の葉が一斉に芽吹いている。
太陽の光に若芽がキラキラと輝いている、何という生命力だ!
男の名はは松井太郎 東京にある大手化学会社を数年前に退職している。
「カラマツの芽吹きっていつ見ても素晴らしいわね、私たち人間は季節の
移り変わりは感じるけれど身体中が春の芽吹きにはならないのよね。」
妻の花子がベランダに出てきてカラマツを見上げながらほっとため息をついた。
太郎は黙ってベランダの階段を降り、両手を上下に振りながら
カラマツの落葉を踏みしめて黄緑色の林の中に消えていった。
つづく
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます