その当時の町長と言えば その地方では大変な財力と権力のある者がなっていた。
「馬の用意ができました」馬引きの甚平が庭で待っている
「おお、そうか」とうなずいた国三郎は妻のみなに向かて言った
「今夜は川原湯温泉で宴会があるから 家には帰らない」
「いってらっしゃい」みなと使用人は国三郎を送り出した。
国三郎はカーキ色の軍服と同色の軍帽をキリリとかぶっていた
馬上の人となった国三郎の軍服にはいくつもの勲章が輝いていた。
太い眉大きな目どこから見ても男らしく目立っていた。
美しいみなは国三郎を見送ってホッとため息をつき
何とも言えない寂しそうな、悲しそうな顔をした。
(写真は北軽井沢の中古別荘)
そこに居合わせた使用人は皆そのわけを知っていたが
誰もが黙って下を向いていた。
みなの苦渋の人生が始まっていたのだ。
つづく