Home Room ・シンプルな暮らしと家

杉の床の暮し-3

Sugiyuka_03

杉板を内装に使うというと、そのイメージは、「自然素材の家」とか「無垢の木の家」とか、そうゆうものにつながりやすい。無垢の木を内装に使う事は確かにいいのだけど、どうしてもイメージを規定されてしまう。特に、使いやすい「杉の節あり」は、主張が強い。
床・壁・天井と「杉板」を張った家は、私にとっては、あまり心地よくない。そうゆうものを作りたいのではない。「自然素材の家」などのコンセプトである「人にとって安全」である事は当然であって、そうゆう事を『大見出し』にする必要はないと思うのだ。
「 家 」 にとって大切な事は 『 心地よさ 』 『 暮す事の楽しさ 』 だと思う。
それはひとりひとり違うものだから、建物として自己主張する必要はない。『心地よさ』『暮す事の楽しさ』を感じ、そうゆう気持を誘い出す、なにげない「仕掛け」や「装置」として建物を作ればいい。

「家」は、住む人の人生や暮しを映し出す『ギャラリー』になればいいと思う。だから、壁も天井も床も「そっけなく」「タフ」なものにしたい。人生の時々で『ギャラリー』の内容を変える事ができなければならないから、そのために「家」は「カンタン」なものがいいと思う。
床はモルタル仕上げでもかまわないし、石やタイルでもかまわない。。かまわないのだが、『ギャラリー』といっても、プライベートな『すまい』であるから、私としては『木』を使いたい。「そっけなく」「タフ」であり『木』であり「カンタン」であるもの、というキーワードでしぼっていくと、『杉の厚板』が候補の1つになる。

「素足で歩く」
これは人間の根源的な行為。素足で歩くのは気持いいものだ。大地と、地球とつながる感覚。
家に帰ってクツを脱ぐ・・という行為は、この日本において、気候的に・民族としての習慣・感覚として、これからもなくならないだろう。素足にとって「木の床」は、もっとも安心感がある。「厚板」なら「大地感」にもつながる。その「厚板」の中で手にしやすいのが「杉」。政策により日本中の山に植林された「杉」。床板に「大地感」を求めるとするなら、最も「日本的大地感を表す材料」が「杉の厚板」かもしれない。

「しっかりした木造」から始まり、無垢板だ、土壁だ、和紙だ、と自然素材を求めつつ、「自然素材の家」という範疇に今一つ入りきれず、でも何か質感を求めている。作り込む事にもあまり気が乗らない。
家は「ポンとカンタンにできるもの」がいい、という思いが強くなりつつ、「カンタンさ」の中の「質感」を求め模索する中、「杉の厚板の床」は、通り過ぎずに留まっている。自然素材としての「杉」ではなく、素足のための「大地感」を表すのに合っているのかもしれない。決してシャープな表現にはならないけれど、そっけないけれど、いつまでもなにげない優しさで、暮しにつき合ってくれる。。そんな気がする。

杉の床

(完)

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杉の床の暮らし

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熱心な「杉板派」でも「自然素材の家派」でもありません。
自分の「すまい」についての思いを振り返り、まとめつつ、自分の方向性を見つめ直すという作業でもありました。うまく整理できたわけではありませんが、糸口は見えました。「杉の床のある暮し」は「杉板の床」をお勧めしたい、というわけではなく、「家」を「暮し」をもっともっと「素(もと)」の部分で考えていけば、「いい家」を作る事ができる、という私の思いです。うまく表現できたなどとは全く思いません。しかしそれは、このブログ『Home Room』に書き留めた思考の断片に一貫するものです。これから家を建てようと考えられている方に、何かしら感じていただけたら幸いです。ハウスメーカーや建売が悪くて、設計事務所と建てる家がいい、という事ではありません。せっかく建てる家ですから、「楽しい暮しのできる家」を作っていただきたいと思います。「家族が楽しく暮らせる事」は、本当に「幸せ」な事なのですから・・・・

>>> もう1つの「杉の床のある暮し」の話

>>>住まいと暮しをもっと楽しく自由に+志田建築設計事務所

コメント一覧

しだ
ichideさん
> 杉は基本的に余ってるのでもっと流通して良いと思います。
> 馴染みがうすい事が問題なんでしょうね。。。。

そのとおりですね。日本中こんないっぱいあるのに・・・
国産の木材を使う事が特別みたいな事にされて、本当におかしいです。
かたや、外国の森をつぶして輸入してる。
だから、ささやかながら、抵抗(?)対抗(?)するためのテーマです。

> 実家に戻るたびにオモシロく空間がかわってくのが楽しみで
> ありますが、オヤジの仕事は素人ながらオモロイディテールに
> 満ちてますけど

いいですね。そうゆうの。。
でも、ちゃんとしたおかかえの大工さんがいるといいんですよね。

> 業者にやらすと安易で長持ちしない、味のない素 材選定
>(大壁でプリント合板とか、合板フローリングとか、サイディング)
> をするので

リフォーム業というのは、悲しいですよ。それをやることがいいことじゃないのわかっていてやっちゃうんですからね。いや、知らない場合も多いでしょう。
頼む方もやる方も、ハウスメーカー的なものを「よいもの」と思うんですからね。。

> 自然素材は暴れるから面白いのですが、それを面白いと思う人は中高年以上ではなかな
> か少ないのが残念です。若い世代に期待。

本当にそう思います。
私も「若い世代」に期待するのだけど、、、
ハウスメーカー的家に育った世代だから、、
本当、どうなるんでしょう~
ichide
杉は基本的に余ってるのでもっと流通して良いと思...
http://boat.zero.ad.jp/~zbj91722/index.html
私は実家の食堂と玄関が杉の床板で子供の頃からすっかり馴染んでいました。糠で磨いてぴかぴかになって我が家の顔でしたが、30年を経た後親が知り合いの業者に頼んでリフォームし、ありていのフローリングになっていました。まことに残念ですが、仕方ない。父親が増改築が大好きなので何度も実家はオヤジ自らいじって実家に戻るたびにオモシロく空間がかわってくのが楽しみえでがありますが、オヤジの仕事は素人ながらオモロイディテールに満ちてますけど、業者にやらすと安易で長持ちしない、味のない素材選定(大壁でプリント合板とか、合板フローリングとか、サイディング)をするので私は不本意だけど親がOKにしてるからしょうがない。
のこるは階段の松の無垢板と床の間の板だけになってしまいました。
自然素材は暴れるから面白いのですが、それを面白いと思う人は中高年以上ではなかなか少ないのが残念です。若い世代に期待。
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