親父

ある日、朝起きたら突然しゃべれなく
なってたら驚くだろうな。

つい先日親父がそうなって体も半分が
動かない状態にもかかわらず自力で病院へ
辿りついたそうだ。
救急車を呼べばいいのに。親父はそういう人だ。
最近じゃタクシー代わりに救急車を呼ぶような輩が
いるくらいなのに。

脳梗塞で入院。比較的軽かったのと
リハビリも効果が出始めて会話がかなりできる
ようになり歩くことも可能になった。
退院も間近だったのに昨日別の悪い箇所が見つかった。
主治医からじっくり話しを聞いて親父とも検討した結果
来週に手術を受けることに。
親父は、『次にちゃんとおまえとこうして話せるのはいつやろな』
とポツリとつぶやいた。
それは手術でもう二度と会話ができなくなるんじゃないかと
いう親父の心配がこめられていたんだろう。
初めて親父の弱気な言葉を聞いた。

親父は３５歳のときにくも膜下出血で生死を彷徨ってる。
オレが幼稚園児のころでおふくろも苦労しただろう。
当時は医療も発達しておらず入院してるにもかかわらず
点滴と氷で体を冷やすだけの治療だったそうだが奇跡的に克服し
１年後に見事に復帰した。今の先生に聞いてもよく治癒したと
感心していた。
親父の話しによるとくも膜下出血は恐ろしくて強烈な頭痛とともに
体が痙攣しだして３０秒から１分で意識がなくなるそうだ。
その短い時間におふくろに救急車を呼んでくれと一言言って
意識をなくしたそうだ。
今回、またそうなる可能性がある箇所が見つかったので
事前に手術することを決意した。
くも膜下出血の怖さを体験してるからこそ
頭蓋骨を開ける決断をしたのだ。

そんなこんなのここ数日。