ショートショート

新鮮な野菜が売りの小さなスーパーのレジでバイトしてるオレ。
自慢じゃないがこのスーパーの野菜は他店に比べて新鮮だし
値段も安い。いや正確には超新鮮なもの以外の値段を
早めに下げるので全体的に安く見えているのが本質だ。
その見切りの早さが好評で客は常に一杯。
商品が回転するからさらに新鮮なものを仕入れられる。
いわば勝ち組スーパーなわけだ。

あ、またヤツが来た。
ヤツは週に２回くらい現れるサラリーマン風男。
ヤツはいつもスクーターでやってくる。
会社帰りに来店しているのだろう。
中年オトコのスーパー通いってのはどことなく
情けない。
わけありなんだろうなぁ。。。
その証拠にさえない銀のジェットヘルメットを
脱がずに顔を隠すようにいつも買い物をしている。

スーツの上に着た防寒カッパも物悲しい。
左手にビジネスカバン、右手にスーパーのカゴ。
両手がふさがったまま歩いている姿は情けない。
背中には重苦しい哀愁がただよってる。

オレはヤツの秘密を知っている。
誰も気づいていないだろうがオレは
知っているのだ。
なんとヤツはベジタリアンなのだ。
買っていくものは必ず野菜のみ。他のものには
見向きもしない。

独身なんだろうか。妻に先立たれたのか。
何故ベジタリアンになる必要があったのか。。。

そして遂に見てはいけないものを見ることに。
ヤツが野菜を袋へ入れているときに
下のゴミバコに捨ててある大根の葉を拾って
同じ袋に入れたのだ。。。

あんな人間にはなりたくない。
悲しい独身中年ベジタリアンサラリーマンにだけは、
絶対にならないゾ！！！！！

＃お、ラッキー。大根の葉、捨ててあんじゃん(^^)
＃今日はついてんなぁ。
＃さぁ、野菜も仕入れたし早く千ちゃんに食わして
＃やんないとなぁ～
＃そういやさっきの若造、いやに変な目で見てたな。
＃ま、いっか。オレも昔はスーパーでバイトしてたしな(^^)
＃あれは確かン十年前だっけ・・・・

新鮮な野菜が売りの小さなスーパーのレジでバイトしてるオレ。
自慢じゃないがこのスーパーの野菜は他店に比べて新鮮だし・・・・

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