~星の彼方へ~
介護とアルツハイマー認知症と思い出と
Vol.2
「お母さん」「おかあさん起きて」
思わずそう言ってベッドに駆け寄った。
施設で夜中に巡回に来たときに母が息をしていないこと、心臓が止まっていることに施設のかたが気づいたとのことだった。
母の顔は青白かったが、目は少し開いていて、口も開いたまま、まるで生きているようだった。
頬にそっと手を当てた。冷たい。
手を握るとまだ死後硬直が起きていないのか、柔らかった。
昔はどちらかというとふくよかだった母は、骨と皮だけと言っていいほど痩せ細っていた。
今年に入ってあった時、私を見たときに目だけだけど嬉しそうにしてくれていた母。
すでに車椅子で介護5だった。
もうすでに軽快に話すことはできなかったけど、それでも生きていて欲しかった。
小さい頃私は母が大好きで真面目に「母が死んだら私も死ぬ」と思っていた。
そんな大好きな母が今、目の前でもう息をしていない。
「夢ならばいい」何度もそう思った。
昼間まではなんともなかったんですよ。施設の人の声が虚しく響く
「死」
どうしても受け入れられず私は何度も、母の頬を撫でる。
「お母さん、お母さん、ねぇ私だよ。会いに来たんだよ。」
介護付き老人ホームはコロナの影響で、好きなときに会いに来れなかった。
そんな中での愛する母の死
直視することができなかった。
きっともう一度母の息が吹き帰ってくれることを信じて
私はベッドのそばにたたずんでいた。
・・・つづく・・・