課題ノート

2006年01月31日 22時52分53秒 | Weblog
研究者は実験ノートを書くのが仕事である。ところが、研究管理の仕事が増えると、実験ノートを書くよりも、他の、生データを出す人とのディスカッションの比率が大きくなる。本来自ら生データを出すべきなのだが、テーマの規模が大きくなると、当然一人では全ての実験は出来ない。特に自分が中心となってテーマを運営する場合は、全体調整の仕事に時間を割かざるを得ず、その分、実験が疎かになる。

自分で実験するときとは違い、他の人の生データを見るときは、すぐにその世界に入ることは難しい。そのタイムラグを少しでも短くし、備忘録かたがた「課題ノート」を作成し、ほぼ一箇月運用した。結果はなかなか好評。ただしその分、自分の実験ノートのページは進まず、悲しい。

現在、生データ以外の、打合などほとんどの仕事を、実験ノートの形式で記載している。会議への出席の時にもこのやり方は有効。例えば前言を翻した人などすぐに指摘できる。逆に、自分がやると言ってやっていないことも、自分のノートにはっきりと証拠に残っているわけで、それは都合が悪い。

次は(ブログと同じく)一年を目標に続けてみよう。


ブログ一か月

2006年01月28日 23時59分59秒 | Weblog
2006年1月3日にブログを初めて、ほぼひと月が経過した。まだまだ書き足りないことばかりだし、自分の文章力のなさも思い知った。ブログ標題に関連した書き込みにも至っていない。しかしながら、ほぼ一か月間にわたって継続できた。一応満足。

日曜日を除く毎日書き込んだが、やはり、すこし頑張り過ぎ。睡眠時間の減少という効果が出てしまった。企業研究者は健康第一。来週からは、毎週火木土の3回の書き込みとします。

大隅さんもコメントで指摘されていたが、「説明責任」がこれからも重要視されるだろう。大学人からのものがもちろん重要だが、企業人としての意見も必要。同時に、所属にとらわれない「研究者」としての説明も、果たしてゆきたい。

「ポスドクのキャリアパスについて」(コメント)

2006年01月27日 23時59分59秒 | Weblog
2006年1月25日付「ポスドクのキャリアパスについて」について、いただいたコメントと、その回答です。

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Commented by osumi1128 at 2006-01-26 00:01
TONさん
ちょうど、コメントバックしている間にコメントを頂きました。
「課題解決力」こそ、研究遂行上で必要不可欠なものであり、それを日々指導しているつもりなんですが、「現実的な計画を立てて、実行する」というところが足りないのでしょうか・・・?
あるいは、応用がきかないとか。

Commented by TON at 2006-01-26 01:33 x
大隅先生
いえ、「現実的な計画を立てて、実行する」能力を持っているポスドクの方はたくさんいらっしゃると思います。実際に私のグループでもポスドクの方たちと一緒にやっていますが、それぞれ仕事は充分はかどっていますし、特許出願にも結びついています。全体から見た比率は低いのでしょうが、企業で活躍中、あるいはその経験を持つポスドクは、実数として増えているのではないでしょうか。大学・企業それぞれの思い込みを解消する、というのも必要かもしれません。それには、このブログはいい場だと思います。

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この議論をきっかけに、コメントやトラックバックをされている方の主張をあちこち見てみた。残念ながら、解決に向けて立場の違う人同士が協調して努力しよう、というものではなかった。お互いそれぞれの価値観を主張しているにとどまっている。Webの特長である「本音」もあまり語られていない。デリケートな内容ではあるし、狭い業界なので個人が特定される恐れもあるからだろうか。

もちろんこういう場が全てではないが、たとえブログであったとしても、もっと建設的な議論が行われれば、「中央の」議論にも影響力を与えられると思うのだが、残念だ。

実験の失敗

2006年01月26日 23時57分07秒 | Weblog
今日、ある実験が、実は失敗していたことが判明した。材料の取り違えが原因。小さいこととはいえ、まだ誰もやっていないことに挑戦しているため、気がつくのが遅れた。もちろん、新しい段階に移るときに万全の検証を行なってから進めばいいのだが、検証に手間ひま・時間とお金がかかるので、最小限に止めざるを得ない。当然早く先に進んで結果を出したいので、どうしても、確認作業はおざなりになる。

今回もそうだが、こういう場合、失敗の責任は、やはり、研究管理者にある。(研究が)うまくいけば担当者の成果、うまくいかなければ管理者の責任。これは間違いないと思う。また、担当者はよく気づいてくれたし、失敗していることを落ち着いて検証してくれた。助かりました。

というわけで、今回は(も?)私の手落ちでした。申し訳ありません。担当者が早く挽回して、先に進めるよう、私も頑張ります。できるだけ短期間で復活できるよう、知恵を絞りましょう!

「ポスドクのキャリアパスについて」

2006年01月25日 23時59分59秒 | Weblog
ブログタイトルの通り、私(本ブログ開設者)は企業の中で「研究開発」の部門に属しており、その中でも主に「基礎研究」を仕事としています。実験室での作業が中心で、いわゆる研究者(のつもり)です。会社ですので(大学とは違い)、さまざまな立場の人と一緒に仕事をしています。昨今話題になっている「ポスドク」も常に研究グループにいます。これまでに同じグループとして4人、共同研究先まで含めると8人の方々と接してきました。以前に別件で取り上げた「大隅典子の仙台通信」では、「ポスドクのキャリアパスについて」が大きな話題になっており、次のようなコメントをつけさせていただきました(斜体部分は、文字数制限のため削除したところ)。

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企業で研究している者から、コメントさせていただきます。もちろんあくまで一個人の意見であり、過度に一般化できるとは思っていませんが、一つの考えとして、御参考まで。
「アメリカと比べて、日本では何故、博士研究員が企業から採用されないのか」
 アメリカには修士卒が少なく、日本には博士研究員が少なかった、という見方はいかがでしょうか。社会全体の仕組みが、それを前提にしている、ということです。ただし、統計データを持っているわけではないので、見込み違いかもしれません。この状況の中で、「ポスドク1万人計画」で作為的にポスドクを増やしたのが現在で、過去の実績等からやはり修士卒が優先して採用されているのでは。あるいは単純に需給バランスが崩れてしまっているのか。
「企業は即戦力を求めているか」
 そのとおり、会社は教育機関ではありません。ただし「即戦力」とは、「ビジネス能力」や「職務経験」ではありません。「課題解決力」といえばよろしいでしょうか。与えられたテーマを分析して課題を抽出し、現実的な計画を立て、実行する、といった能力です。特別な能力ではなく、博士号取得能力と近いものだと思います。基礎・応用の分野を問わず、研究する能力を備えている方は、充分「即戦力」です。
ところで、以上のコメントは、企業に就職したいという意思を持ったポスドクの方がたくさんいらっしゃる、というのが前提です。実際のところいかがでしょうか。別の言い方をすれば、「ポスドク」の方は、修士卒で企業に就職するという機会があった時に、あえて博士課程進学を選ばれたのだと思います。その時どういうキャリアパスを思い描かれたのでしょうか。

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さらにこれに関するコメントもいただいているので、追ってこちらでも報告します。

研究管理も仕事のうち

2006年01月24日 23時59分59秒 | Weblog
自分自身研究者のつもりなのだが、研究管理的なことも(もちろん)やらなければならない。例えばもうすぐ(国の年度の)年度末。プロジェクトによっては、それに合わせた報告書の作成や、経費の締めが必要な時期。研究員一人ひとりに、「この日は本当に休んだのか?」「出張旅費精算を早く・・(←自分もさぼっているので強く言えない)」「飛行機の半券(最後に残るやつ)を探せ」と、聞いて回り、いやがられる。柳田さん(注)もブログ(柳田充弘の休憩時間)で書かれているが、ほんと、実験どころではありません。

研究者になりたてのころは、1~3月は冬眠と称して、4月からの研究内容をじっくり(のんびり)考えてい(るふりをしてい)たもの。今は、いつにも増してバタバタするだけの、慌ただしい時期となりました。

(注)本ブログでは高名な先生であっても「さん」付けとさせていただいておりますので、御容赦願います。

研究開発の理想と現実

2006年01月23日 23時59分59秒 | Weblog
研究開発にかかわるプロジェクトを運営するためには、特に企業では、理想と現実のギャップに悩むことがしばしばである。自分の理想を最優先し原理原則を貫く立場と、現実路線に流されるものの最後には正しい方向性を見いだす立場の、どちらも、成功すれば構わない。しかしながら往々にしてうまくいかないわけであり、前者では自己満足は得られるものの発展性には乏しく、後者ではたいてい後悔するものの、それなりに先につながることがある。

今日は月度報告の日だったのだが、上記のどちらの立場をとるか、という議論が結構出た。面白がっている余裕はあまりないのだが、自分の立ち位置の再確認もでき、その意味では有意義であった。

なお、このテーマは折に触れてまた考察してみたい。





抜き取り検査

2006年01月21日 23時59分59秒 | Weblog
アメリカ産牛肉に、公的な検査済証明書がついているにも関わらず、危険部位の混入が見つかった。耐震強度、証券取引につづいて、またもや偽装。成田空港の動物検疫所の抜き取り検査で発覚した。ニューヨークの中堅牛肉処理業者「アトランティック ビール アンド ラム」が輸出したものだということだ。

これについて、検査がきちんと行なわれていて安心した、などという勘違いも甚だしい発言が目に付く。全数検査ではなく、積み荷の0.5%を無作為に抽出した抜き取り検査を行った結果、見つかった。ということは、かなりの商品が見落とされており、すでに流通していると考える方が普通だ。

総理大臣の施政方針演説で、「科学的知見に基づき」安全宣言が行われた5時間後に禁輸措置(輸入停止)になった。ブラックユーモアを通り越して、政府のあまりもの無策に恐れ入る。山内一也・東京大名誉教授が面白いことを言われたそうだ。「輸入が始まるのも早かったが、違反が見つかるのも早かった」。

金曜日

2006年01月20日 23時59分59秒 | Weblog
金曜日は、今週のまとめ(含、報告書「週報」書き)と来週の準備が重なるため、慌ただしい。往々にして積み残しが生じ、土曜日にはみ出てしまう。今日も全くその通りで、「週報」は明日時間を見つけて書くことになった。来週には月度の報告会「月報会」もあり、それの資料作りも必要で、もうパニック。本来の一次情報を得るための実験をする時間がどんどん減ってしまう。大学に比べて企業では明らかに「会議」と「書類」が多いようだ。大学では研究室は独立の単位だし、学内で知識を共有化しようとなどは通常しないだろう。企業はその逆。研究室の独立性は低く、異分野とのコミュニケーションが重要視される。

どちらがよいとか悪いとかではなく、目的によって両者の形態がある、ということ。しかしながら研究の効率は大学の方が上。企業研究者は非効率の中で戦わなければならないので、大変なのです。

大切な書類ほど・・・

2006年01月19日 23時59分59秒 | Weblog
今日は、午前中に急ぎの重要書類の作成依頼が入り、やむなく夜までかかって作成、なんとか提出。このところ、重要な書類に限って、作成に実質かける時間がとれず、不十分なまま出している。大変よくないことだと思うのだが、どうしようもない。

書類作成能力をもっとつけないといけないのかな。

このあおりで、昨日のデモのフォローや自分の実験は完全に先送り。
あ~あ、である。


装置の操作デモ

2006年01月18日 23時59分59秒 | Weblog
今日は某大手メーカーに、持ち込みで、装置の操作デモを行なってもらった。誰もが名前を知っている会社であり、私の属する業界でも玄人筋には名が通っているところだ。ところがこの装置はこの会社にとってはあまりなじみがない(と思われる)操作を行なうもので、昨年の発売と同時に話題になっている。この装置を、遅ればせながら使用したいと思い、実機を持ってきていただいて操作を習った。実際には、こちらのやりたいことが、完全にその装置の目的に合致するものではないので、部分的な結果しか得られなかった。それでも若干の改良を行うことで、十分使えるであろう感触が得られ、明日から延長戦の予定。わざわざお越しいただいたMさん・Sさん、ありがとうございました(&これからもよろしくです)。


資料整理、新たな論文執筆

2006年01月17日 23時59分59秒 | Weblog
直近(今日明日明後日)の締切り案件がないということで、少したるむ。本当はそんな余裕はないはずなのだが。居室(事務室)が移動してから一年以上(13箇月)が過ぎようとしているのに、未だに資料があちこちに詰め込んだままの状態。無理やり引き出しを一箇所空けて、そこから整理開始。まず袋ファイルからということにして、あ行からスタート。やはり空きを少しでもつくってからだと、進むペースが格段に速い。何とか暇をみつけて頑張ろう。

いま共同研究者と新たに書こうとしている論文は、小さいことだが、業界の多くの人が無意識に間違っていることを指摘し、その現象を科学的に正しく説明しようというもの。こういう時に「企業研究者」というのは不利。よっぽどうまく書かないと信用されないのである。何故ならば・・・一段下に見られているから!

このあたりはいずれまた、まとめて書きます。



課題ノート(続)

2006年01月16日 23時59分59秒 | Weblog
本当に使い始めてみた。割といけそうだが、ページがどんどん進む。すなわち、かかえている「課題」があまりにも多い!ということが、自分でも定量的に理解できた。ちょっとやり過ぎ、これではいけないな。ま、どこまで細かいものまでノートで管理すべきかだが、一往復の「行って」「帰って」で済まないものは、全部かな。通常の実験ノートでも、毎度の試薬作製や材料調製をどこまで記載するか迷う場面があるが、同様のことがこちらでも起こる。

もう少し(少なくとも今週は)このまま続けてみよう。


課題ノート

2006年01月14日 23時59分59秒 | Weblog
実験ノートに対する言葉として「課題ノート」と書いてみたが、いい言葉かどうかはわからない。今週、ルーズリーフで試してみたが、よく考えてみると、実験ノートと同じ形式でいいのでは、と、ひらめいた。すなわち、課題ごとに番号を発生させて、ページ単位で記載。別の課題になれば、次のページに書く。ページが一杯になれば続きのページを指定して、後からたどれるようにする。

実験ノートはA4の「大学ノート」を使っている。たまたまこちらはB罫。少し気分を変え、実験ノートと区別がつきやすい(表紙の色が違う)ように、A罫のもので、来週から試してみることにした。

お楽しみ。