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チカラ入りすぎて、長文です・・・すみません・・・。
三枝夕夏 IN db「U-ka saegusa IN db III」(★8点)
U-ka saegusa IN db Official Website 試聴はコチラ(BGV)
1年10ヶ月という長いスパンでリリースされた3rdフルアルバム。今作は今まで以上に「バンド感」を前面に押し出した仕上がりになっています。
「君の愛に~」から始まったパンクロック風路線。そしてオフィシャルメールでも賛否両論巻き起こった「Fall in Love」。シングル単体で聞いた時は納得のいかない面もあったんだけど・・・。全てはライブ、そしてこのアルバムのためだったんだな。そう納得出来る作品。
本人達が言っているとおり、全体的にロック的な曲が多めに並び、三枝夕夏の作曲曲が6曲を占める今作。2ndでは1曲だけだった事を考えると大躍進というか、ずいぶん頑張ってる印象です。聞く前は不安だったんだけど、「夏のフォトグラフ」「君の中に僕の居場所を探したい」なんかは出色の出来だったし、ライブでおなじみデシデシコールを歌詞に取り入れ、全編サビだけで構成されている「愛言葉」は『ライブを重ねに重ねた三枝夕夏 IN db』ならではの曲で、だいぶ方向性が定まってきたんだなぁと感じさせてくれます。
あと、ロックだロックだって言っても、決して取っつきにくいとかマニアックだとかそう言うことはなく、メロディーはちゃんとキャッチーにできているんです。そこが三枝夕夏 IN db流ロック、なんでしょうね。
三枝さんのボーカルも、多少スキルアップ。今までは歌うだけで精一杯な印象でしたけど、今回は「君の愛に~」での良い具合に力の抜けた歌唱や、「Honey」の、脳天気で気の抜けた歌い方は今までにはなかった歌い方を披露しています。余裕が出てきた感じです。
曲の方は粒ぞろいで結構良いんですけれど、残念なのは、若干サウンドが貧弱に聞こえる箇所が所々あるんですね。GIZAだからしょうがない(笑)といえばそれまでなんですけど・・・。特にライブで最初に聞いた印象が強く残ってた「君の中に~」は、それが躊躇。葉山さんのアレンジは悪くないけど、ちょっと響きが弱いというか、もっとアグレッシブな感じでガンガン鳴らしちゃっていいと思うんですよ。で、そんな濃い目のサウンドに咲く一輪の花が三枝夕夏のボーカル、みたいなのも希望します。
1st、2nd、3rd・・・と、作品を出すたびにどんどん三枝夕夏 IN dbの個性が出てきていて、良くも悪くも「今の三枝夕夏 IN db」が前面に出たアルバム、と言えるかなぁ。好みは別れそうな気がする。初期のソロだった頃の作風の方が好きならばあまり気に入らないアルバムかもしれないし(でも「明日に降る夢よ」は聞いた方がいいかも)、「君の愛に~」以降のシングルが好きならば、絶賛とまではいかなくても、まず気に入るアルバムだと思います。
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こっからはアルバム全曲レビュー!
えーと、シングルレビューの時と点数が違う曲が多々ありますが、「アルバムの流れで聞くと良い」とか「当時と印象が変わった」などの理由で適当に変更してます。
1. 飛び立てない私にあなたが翼をくれた(★8.5点) 作曲:大野愛果 編曲:小澤正澄
爽快なロックナンバーが多いアルバムですが、オープニングのこの曲は割合ハードでシリアスなロックナンバーです。ちなみに2005年度マイベストソングス20にも選出されています。小澤さんによるデジハードロックなアレンジがとっても良いのですが、この路線はこの曲だけ。ちょっと残念。
曲順はここしかなかったんだろうなぁ。アルバムの中では居心地が悪いし、かといってラストに置くわけにもいかないから1曲目にした、みたいな消去法的な配置っぽい気がします。
2. ジューンブライド~あなたしか見えない~(★7.5点) 作曲・編曲:徳永暁人
えぇー?この曲順はどうなのかな・・・。これは本編(3曲目以降)に組み込んでも良かった気がします。「明日に降る夢よ」の次とか。
曲は、地味だけどよくできたウェディングバラードソング。詳しくはこっちのシングルレビューをどうぞ。
3. 君の愛に包まれて痛い(★8点) 作曲:水野幹子 編曲:古井弘人
ここからリスタート、そして加速開始!って感じですねー。今の三枝夕夏 IN dbの路線を決定づけたシングルでもあります。爽快感あふれるパンクロック風ナンバーで、三枝さんのいい意味で軽い歌声も上手い具合にマッチしています。
詳しくはこちらのシングルレビューにありますが、当時、初めて聞いた時はショックだったのを覚えてます(笑)。今では好きな曲ですけどね。ある意味で踏み絵みたいなシングルでした。
4. 愛のワナ(★8点) 作曲:水野幹子 編曲:古井弘人
続けてもう一発!「君の愛に~」と同じような路線の曲。シングルレビューの時は『盛り上がってきた!って所で終わってしまう』って書いたのですが、前の曲も盛り上がる系の曲だからか、この流れで聞くとそう感じません。と言うわけでシングルレビューの時より点数アップ(シングルレビューはこちらへ)。とってもキャッチーなサビメロがたまらない1曲。
5. 夏のフォトグラフ(★7.5点) 作曲:三枝夕夏 編曲:古井弘人
三枝夕夏作詞作曲の、アルバム曲1発目。アルバムの方向性を象徴するようなクールなロックチューン。これ、ABメロがすっごく良いんですよ。おおおお!やるじゃん!って感じで。編曲の古井さんもグッドサポート。
ABメロで持った期待に比べるとサビは意外と普通というか、キャッチーではあるんだけどABメロが良すぎて霞んでしまうというか、お互いが良さを相殺し合っちゃってる感がしないでもないですが、まぁABメロが手抜きでも困るのでこれもいいか。
6. 君の中に僕の居場所を探したい(★8点) 作曲:三枝夕夏 編曲:葉山たけし
ライブで先駆けて披露された曲、と言うことで一応アルバムメイン楽曲な扱いだと思うのですが、これはかなりイイです。なんと詞先で作った曲らしいのですが、それでこの曲が出来るか。やるじゃん三枝さん。サビの盛り上がり具合も良く、聞き手を惹きつけてくるABメロもオッと思わせる出来でいい。あとやっぱりこの曲は詞だな。三枝さんの詞にホレてるワタクシにはグッとくる詞です。タイトルからして三枝節炸裂。サウンドはもっとロックロックでも良かったような気がする。
7. もう自分が自分に嘘をつかないように(★7.5点) 作曲:三枝夕夏 編曲:小澤正澄
14thシングルC/W。この曲、ファンからの人気が高いみたいで、mixiミュージックランキングでもかなり上位に位置してます。まぁそれも納得の曲。タイトルからして三枝節だし。歌詞も曲も三枝さんらしい(悪く言えばあまりプロっぽくないとも言えるんだけどw)。小澤ちゃん編曲なんで、2ndアルバムの雰囲気に近い感じ。三枝さんらしさが良い方向に出ている曲。本人曰く「ちょっとダサイのがウリのバンド」なので、そういう意味では三枝夕夏 IN dbの真骨頂かもしれないなぁ(笑)。
8. 明日に降る夢よ(★9点) 作曲:寺尾 広 編曲:小澤正澄
三枝さんソロの頃のピュアな雰囲気と、バンド化以降の雰囲気が上手くマッチしてますね。とにかくメロディアスな曲で、そして今だから歌える曲だと思う。ソロの頃の歌唱力じゃここまでの曲にはならなかっただろうな。なんだかんだ言ってそれなりに歌は上手くなってます。しっとりバラード⇒サビでテンポアップするアレンジも良いです。小澤さんにしては(?)すごく丁寧な感じでグッド。
5~7曲目と連続で三枝さん作曲曲が出た後にあるせいか比べてしまいますが、この曲やたらクオリティが高い(笑)。これは万人にオススメしやすい曲です。ちなみに寺尾広さんは三枝夕夏 IN dbには初提供。もっと作って欲しいですねぇー。
9. 100もの扉(★7点) 作曲:大野克夫 編曲:古井弘人
シングルバージョンをそのまんま収録、ということで愛内里菜とスパポイの声もそのまま入ってます。まぁ愛内やスパポイのアルバムに入れるよりはこっちに入っていたほうが違和感は少ないだろうけど、どうせならアレンジそのままでボーカルは三枝さんオンリーで聞いてみたかったかも。「U-ka solo version」じゃなくてね。シングルレビューはコチラで。
10. 空飛ぶあの白い雲のように(★7.5点) 作曲:大野愛果 編曲:葉山たけし
岩田さゆりの原曲に比べると、当然の如くバンド感の増した仕上がりです。もともと岩田さんと三枝さんで声質にそこまで大きな違いがないから、差別化するの難しいだろうなぁと思ってたら案外「三枝夕夏 IN dbの曲」にしっかりなってた。葉山さんのアレンジGJ!!ではありますが、岩田さゆりバージョンに比べるとやっぱり、多少は劣ってしまうなぁ。ドラマティック感が減少してます。あと1番→2番で最後サビの繰り返しナシでフェードアウトするのは、原曲を知ってると多少違和感アリ。良いか悪いかは微妙な所かも。
・・・って夕夏、原曲が完璧すぎたから、聞き劣りするのはしょうがないか。
11. Everybody Jump(★8点) 作曲:岩井勇一郎 編曲:古井弘人
もはやおなじみ?パン工場ライブをテーマにした曲で、パン工場ライブの観客の掛け声をコーラスに起用してます。ライブをテーマにしただけあって、当然盛り上がる系のナンバーです。個人的にはこの曲で今の路線大賛成になりました。それくらいいい曲ってことです。シングルレビューはコチラ。
12. Fall in Love(★6.5点) 作曲:三枝夕夏 編曲:古井弘人
「君の愛に~」に続く踏み絵シングルその2(笑)。とにかく最初にアニメで聞いた時のショックはかなり大きかったです。その当時の記事がコチラ。そしてシングルリリースの際の感想はコチラ。で、今回また点数アップしてます。今では結構好きになってる自分が居ます・・・。まぁ、覚えやすいメロディーだし、ライブでも振り付け付きで盛り上がってたし、これはこれでいいんではないかと。アニメで聞いたときは、本当愕然としたなぁ、3rdアルバムがここまで良いと思いもしなかったもん(笑)。
やっぱりシングルにしたのは気が狂ってるとも言えるけど、まぁアルバムの1曲しては悪くは・・・ないです。
13. 愛言葉(★6.5点) 作曲:三枝夕夏 編曲:古井弘人
三枝さん、短いタイトルでウケを狙うこともできるようになったんですねぇw
愛言葉はデシデシ!Happy人生デシデシ!って。そこのメロディーは1回聞けばすぐに覚えられるようなシンプルでキャッチーなメロディ。「どんな時も どんな状況でも 今日もご飯がおいしい」とかの脳天気な歌詞と「心が見えなくなって 寂しく不安になって」という歌詞が同じ曲で書かれているのが三枝さんらしいというか。全編サビだけ繰り返しの完全ライブ向けナンバー。そして同時にファン向けでもあるかな。でも作曲三枝夕夏だけあってどこか突き抜け足りない感じも受けますね。
この曲も、サビはキャッチー、大サビの出来も良い(1回しか出てこない!)だけに、なんか惜しいんだよなぁ。この曲に限らず、三枝さん作曲の曲はどうも、キャッチーにしようとするあまり、全編キャッチーにしちゃって逆にメリハリがあまり無くなってしまっているような気がする曲がいくつかありますね。
14. Honey(★6点) 作曲:三枝夕夏 編曲:葉山たけし
あああ。あれですな。前作の「君のハートに胸キュンキュン」を狙った感じだなぁ。おもむろに「キュンキュン」って言葉出てくるし。三枝さん、ラストはこういうはっちゃけ曲で締めるのがお好きなようです。前作のインタビューでも「君のハート~」は絶対ラストに入れようと思ってました!って言ってたし。
元は全編アップテンポだったそうですが、そっちの方が良かったかも(汗)
恥ずかしい歌詞はアップテンポだからノリで通せるわけで、スローテンポだと恥ずかしい歌詞が余計恥ずかしいw サビ入り前の「ハニー♪」なんて声も、思わず吹き出しそうです。アップテンポになってからは、悪くないだけに惜しい。
ライナーノーツでは、
>作ってる段階で、ビートルズが初期の頃にやっていたスローな曲の世界観を取り入れてみたら面白いかもっていう話になって
・・・とありますが、確かに面白いけど、この曲の面白いは意味が違うと思うw
シメ方は、ああ、三枝夕夏 IN dbらしいなと言う終わり方でグッドです。
全作詞:三枝夕夏 (「愛のワナ」のみ三枝夕夏・水野幹子)