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予告しておきながらすっごくレビュー書くのが遅れました。つーか、だって、だって、重いんだもん。このアルバム。重すぎる。僕の心にクリーンヒットしちゃうよ。
今回、詞の引用が多いこともあって長いです。
上原あずみ「生きたくはない僕等」(★8.5点)
オフィシャルページ
なんと言っても、まずタイトルに圧倒される上原あずみ2ndアルバム。で、店頭で見た時もビックリした。「待望の2ndアルバム!」とか書いてあるシールってよく貼ってあるじゃないですか。そこに書いてある宣伝文句がスゴイんです。
「"生きる"それは決して綺麗なことじゃないけれど、君が生きている、存在していることがとても嬉しい」。
アルバム名「生きたくはない僕等」で「存在していることがとても嬉しい」。
色んな意味でスゴイよ。
さて、そんなアルバムタイトルetc.からして異質を放つこのアルバムですが、上原あずみの詞がけっこう様変わりしていて。かなり直接的な、そして絶望をありのまま書き出した詞が多いです。以前から鬱詞には定評のあった上原あずみですけど、これは凄すぎる。1stアルバムの時は、まぁ鬱っぽい悲しい詞だね、くらいにしか思ってなかった。それが今回、詞だけで強烈なインパクトを放つくらいになっています。まぁこのアルバムタイトルだから、ってのもあると思うけれど。
冒頭2曲の並びがまず凄い。「生きたくはない僕等 生きるべき理由が見つからない」と始まり「そして 僕等は死にゆく」で終わる1曲目。2曲目はアルバム中もっともヘヴィーなハードロック調ナンバーで、詞も「心を醜く歪め 体を凍り付かせた僕の罪」と、やはり重く、救いようのないくらいに暗い。その後の「Last moment」「U&I」も同様。
「Shiny way」みたいな明るい曲でも「光を浴びて 生きていきたいんだ」と、あくまで希望なんですね。つまり、今はまだ光を浴びていないのか。と思ってしまうし、「Song for you~精一杯力一杯~」でも、最初はただの明るい応援歌かと思いきや「時には背中を押す 事も 言葉も重いだけで」と、応援することへの難しさを描き、「人生ゲーム」では、カラっとしたメロディーに乗せて「僕の心と思考は生きると言うことに向かっていない」と書く。
「ママレード☆ラブ」、詞は幸せな時のPAMELAH(水原由貴)っぽいけど、曲は決して明るい曲じゃない。聞いていて「この曲、本当にママレード☆ラブだよね?」って確認してしまったくらい。
こういう詞をありのままに書き出すって、実はオブラートに包んだ言い方より遙かに難しいことだと思うんです。楽しい・幸せな歌詞を書くならば、そのまま幸せの言葉を、今までの経験から出してくればいい。書いてる本人もその方がいいんだと思う。楽しい、というのはつらい感情ではないから。
でも、こういう鬱な内容は、できるならば避けて通りたい感情なわけで。それでも、そんな感情をありのままに、ざっくりと書き出す上原あずみにホレてしまいます。
そして、上原あずみのボーカル。
歌唱力無し、鼻声歌唱、音程も不安定、の3拍子。デビューからずっと、変わらない上原あずみの特徴のひとつです(別にけなしてるつもりでは無いけども)。人によっては、この下手さは耐えられない、という人もいると思います。
確かにもし、この曲、この歌詞で、滴草由実や絢香や小柳ゆきとかが歌えば、かなりの迫力になったでしょう。
でも、それじゃぁ説得力が出ないと思うんです。このアルバムは「生きたくはない僕等」。生きる気力を失っているわけです。そんな曲でなまじ歌唱力のある人が歌ったとしたら「生きる気力あるんじゃん」ってなってしまうわけで。この詞、この内容だからこそ、上原あずみの貧弱なボーカルが映える。無意味に作詞をするボーカリストもいる中で、自作の詞で自身の貧弱なボーカルを補う、ってのもなかなか凄いことかもしれません。
僕には、決してBGM的には聞き流せない1枚です。いい曲だとか悪い曲だとか、そういう次元を越えてるとすら思える。それだけ衝撃的な作品。詞からも曲からも歌唱からも、とにかく「上原あずみ」という存在が大きく、そして儚く鎮座しているような、そんなアルバムだと感じました。
詩集、そこまで買う気ではなかったんだけれど、このアルバム、この詞ならば、買わないわけにはいかないですよ。ええ。
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