伊方原発の廃炉のために

2006年から「伊方原発のプルサーマル問題」として続けてきましたが、伊方原発の廃炉のために、に15年に改名しました。

確率論的リスク評価を真剣に採用するなら、川内原発は決して再稼働できない

2015-02-01 22:18:07 | 確率論的リスク評価

前記事

確率論的リスク評価とは?(お勉強)

に続く。

 さてさて、確率論的リスク評価の現状が一つ前の記事の一番上に書かれたような状況であるにも関わらず、新聞報道などで、お墨付きを貰ったかのように、川内原発の重大事故を起こす確率は十分低い、と宣っている御仁は?

・・・そう鹿児島県の伊藤県知事ですね。

”…原発事故でも、あまり心配する必要ないと思います。審査を受けた原発の炉心等がどう変化をするかは、結構時間があるので、ゆっくり動けばいい。制度設計は100万年に一回の事故を想定すればいい。その時の川内は5.6テラベクレル。炉心から5.5kmのところは毎時5マイクロシーベルトです。…”(11月7日記者会見録より)

 川内原発の重大事故発生確率も、伊方と同じく原子炉メーカーである三菱重工が(地震や津波などの外部事象を除けば)ほとんど同じリスク評価手法に基づいてこれこれの事故の確率は低い、という計算をした結果の付随文書を原子力規制委員会に提出し、それに基づいて審査書が作られたハズですから、現状の(川内の)確率計算は、外部の専門家の目で見れば、まだまだ不十分な評価である、ということが実際にNRC委員らを含む、電中研原子力リスク研究センター「技術諮問委員会」の専門家の評価で分かっているわけです。(前記事の前半参照)

 そんなものが通用するのは、安全神話が脳内復活している伊藤県知事だけである、と大声で言うべきことだと思います。

 ということで、伊藤知事に安全神話を吹き込んだ側の資料を見てみましょう。

●今年1月14日に(財)伊方原子力広報センター主催の原子力講演会に出て、(上記電中研原子力リスク研究センター技術諮問委員会委員の)山口彰東大教授の講演を聴いてきました。そこでは原子力防災の一般的な論を基礎自治体の職員さんや四電社員さん相手に吹き込んでいた中で、確率に関する目標も紹介をしていました。これです。

●残念ながら、ここの2列目から3列目までの確率低下をさせることが、絵に描いた餅であるのです。

●はい、一つ前の記事で後藤政志氏が最後に指摘していましたが、BWRの柏崎刈羽6,7号機の評価では、炉心損傷すれば確率1近くで格納容器破損に到る、という評価に衝撃を受けた、と話していました。これはすなわち、原子力規制委員会の目指す、1/10への確率低減は不可能だ、という反証ではないでしょうか。

 炉心損傷が起こる確率が10^-4回/年であるとして格納容器が保ってくれなければ1/10にはならず、それよりも先のシビアアクシデント対応のいろんな作業で、大規模放出をさらに1/10にすることは困難になります。伊藤知事がいう10^-6回/年というのは、原子力規制委員会のこの希望的「目標」を垂れ流しているだけではないのですか。 

 確率論的にBWRと比べて、PWRである川内原発は、格納容器の防護性能がはるかに高く、破壊確率を1/10に抑えることは可能だ、ということなんでしょうか。

 確率論的評価を導入するのであれば、BWRの再稼働まで視野に入れた今の原子力規制委員会の審査の進行は、重大な安全性の切り捨てをしようとしている、てな話なんでしょうか???

 


 ふう~、ここまで長々と書いてきましたがちゃぶ台をひっくりかえす話をしましょう。

 確率論的リスク評価をまともに用いるとすれば、川内原発では、あのカルデラ破局噴火の問題があることを忘れてはいけません。3万年に1回のカルデラ破局噴火がある、とすれば、そのカルデラ破局噴火に基づく事故シーケンスを書かなければなりません。 
・・・結果として放射能の大規模放出が起こる確率は3.3×10^-5回/年(=3万年に1回)になると考えられます。つまり途中の事故シーケンスの失敗の経過を辿る確率は1とせざるをえません。火砕流に呑まれて無事なシーケンスは考えられません。これは決して低い確率ではなく、許容できないリスクです。
 100万年に1回の大事故という伊藤知事の発言はなんの積もりでしょう。
 
 もちろん、原子力規制委員会は事前に大規模噴火を予知して、運転を止め、燃料棒を運び出すというファンタジーを語って再稼働を正当化しています。これが将来可能になるのなら、同様に地震予知や、大津波予知も行うことができるので、耐震性や耐津波性の確率論的リスク評価も行うことが不必要になるのではないでしょうか?
 
 さあ、カルデラ破局噴火の予知に失敗して、運転を事前に止めることができない確率はどのくらいでしょう?そのような分からない確率を求める手法としては、(これも一つ前の記事で出てきました。)専門家を5名集めて、投票してもらい、確率を5段階で決める手法が既存の手法です。その投票で決めた失敗する確率を上記の1の代わりに掛けてやればよいのです。 川内原発の審査がおかしい、とパブコメを沢山書いただろう火山学者さんたちの、再び出番ですよ。
 
 
 

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