9月の街宣時にチラシを撒いて紹介していました、上記パブコメ、12日の締切時にようやく、送ることができました。2部に分けて紹介します。
その1
★印部分がコメント本文です
引用元は愛媛県地球温暖化対策実行計画(改定素案)の概要 より
P.1 1 計画の基本的事項
P.1〜 1-1 地球温暖化の現状と国内外の動向
★現状には、今夏のひどい熱波について、すでに起きている気候危機の現れとして特筆して言及をすべき。世界各国のアンケートを紹介することで、危機意識が日本が特に低い問題を指摘するべき。
熱中症死亡者の推移
https://twitter.com/togura04/status/1684833073727471616
報道で温暖化との関連を伝えないのが問題か?
https://twitter.com/Knjshiraishi/status/1680747057169203201
NHKもアンケートで猛暑や豪雨 危機感持っている83%
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230912/k10014191701000.html
★不可逆的、急激に変化が起こるとされる問題群、「ティッピング・ポイント」問題を明記すべき。次第に対策強化すれば後から復帰解決する、という問題ではないことが危機感を高めることになる。
すでに西南極の氷床の崩壊はティッピング・ポイントを越えている、というシミュレーションも出ている。9つの世界的なティッピング・ポイントのうちの4つくらいはすでに越えているという説もある。
★以前の版の記述にあった、↓このグラフ(IPCC第六時評価報告書の記述で改訂)を再度明記すべき。このグラフを読むと、気温を安定化させるためには、累積CO2排出量が変わらない状態つまり完全に脱炭素するしかないことを示している。またそもそも定性的な温室効果があるというだけでなく定量的なCO2の温室効果で気温が上がっているという証拠の図でもあり、世界全体の炭素予算の議論のための基礎といえる。
出典はJCCCA全国センター
★国際的状況と目標の間に齟齬がある。国際交渉の動向を記述すべき。「COP28ではグローバルストックテイクとして、世界の目標の妥当性などについて見直しが行われ、その結果が2035年目標についての新たな各国のNDCに反映される予定。」など。
今年夏の気温上昇のレベルは本当に異常で、来年にはパリ協定の気温安定化目標のレベルである1.5℃に一端到達してしまいそうなほど。世界のCO2排出を正味ゼロにしないと気温は上昇しつづけるため、直ちに正味ゼロに到達しないと「手遅れ」、なのに日本政府は2050年に日本が正味ゼロとなることを目指してその時期まで直線的に減らすつもりで将来計画を立てている。
仮に次善の目標である2℃まで上昇してしまうと気象災害の頻度が増えるだけでなく熱帯の国々では人が住めなくなるほど熱波は拡がり、すでに臨界点を越えたと言われる西南極氷床の融解などで海面上昇も予測以上に進むとして、12月開催のCOP28国際交渉では世界全体の目標のチェック(おそらくは次善の2℃目標を削除して1.5℃を最終防衛線に強化するか?)の議論に入る。
以上の現状から、今の政府の目標そのままの2030年46%削減の数字を県の目標値にしたのでは手遅れなことはあきらかである。砂上の楼閣の計画を積み重ねても、作る前から崩れ始める。
P.4〜 1-2 計画見直しの趣旨及び計画の位置付け
★過去の不作為の原因の究明を通じて導入すべき対策を評価するべき。
P.5〜 1-3 計画の基本理念と基本方針
環境・社会・経済の好循環による持続可能な脱炭素社会の実現
【基本方針】
★電力会社との協定を結ぶことにより、基本となる電力の二酸化炭素排出係数の目標値を確定するべき。電力会社の自主行動計画におんぶにだっこしていては目標の達成が危ういため。
★脱原発を目指す姿勢を明確にして、電力会社に脱原発と整合する計画を作るよう働きかけを行うべき。 再生可能エネルギーを主力化することは国の基本方針となっているが、原発(及び石炭火力)は出力調整できない(そのためベースロード電源として定格出力することになっている)ことから、変動する再エネの導入を増やすにしたがって調整力を融通することがますます難しくなる。現在でも九州電力管内、四国電力管内で再エネの出力抑制が定常化しており、このことが再エネの主力電源化を抑制する効果を発揮している。なので、出力調整できない電源を段階的に減らしていくことで、新たな(化石燃料に依存しない)調整力を導入する余裕をもたせることが必要になる。これはすなわち原発の廃炉計画をきちんと立てることにつながる。
P.7〜 2 温室効果ガスの排出量等と再生可能エネルギーに関する状況
P.7〜 2-1 温室効果ガスの排出状況等
★産業部門(製造業)の内訳を明記すること。主要な対策が必要な産業とその削減可能性を明記すること。愛媛県においては、製紙産業と石油化学工業の2つを目玉業界として指定して、削減量も大幅に提示することが、他部門を圧迫しないレベルでの排出削減で済むことにつながる。
P.10〜 2-2 再生可能エネルギーに関する状況
>○再生可能エネルギー設備導入量は、約1,164MW(2021(令和3)年現在)であり、このうち約80%が太陽光発電設備となっています。なお、地熱及び洋上風力発電設備は導入されていません。 ○再生可能エネルギーの導入ポテンシャルについて、発電導入ポテンシャルは、年当たり113,874GWhであり、「風力(洋上)」が最も高く、次いで「太陽光(土地系)」「太陽光(建物系)」とされています。熱利用導入ポテンシャルは、年当たり90,619TJであり、「地中熱」が最も高く、次いで「太陽熱」「バイオマス」とされています。
★洋上風力のタイムリーな開発のために電力会社に地域開発計画を求めるべき。既存の高圧送電網の活用を前提とすれば、佐田岬半島北岸のエリアを具体的な場所として提示してはどうか。再生可能エネルギーのポテンシャルの大半はここのエリアの洋上風力とされているので。そして、現在でも太陽光と風力のバランスが取れておらず太陽光のシェアが大きいことが、フレキシビリティの確保を難しくしているため洋上風力の太陽光と比べての強化は急務。
P.13〜42 4 温室効果ガス等の削減目標(区域施策編)
P.13〜21 4-1 削減目標
○長期目標(本県が目指す姿)として、2050年に温室効果ガス排出量実質ゼロの「脱炭素社会」、中期目標(本計画)として、国目標と同様に2013年度比46%削減を掲げます。
★目標不足。 p1,で記述した国際的状況や危機の深化状況を踏まえて、いずれにしても目標は徐々に今後も強化されていくと想定しておくべきであり、国と同じ削減目標だけでは不足である。
高い目標といえば本来は日本の1.5℃達成のための人口一人あたりの公平な分配に基づく「炭素予算」は2030年にも尽きると(緑の党GJ試算)言われておりこれにならって100%というべきところだが、最低限でも環境NGOsが可能と試算している国全体での62%を用いるべき。国全体で経済的に国際比較で必要とされる90年比62%削減を採用すると2013年基準では70%程度の削減となる。
P.22〜42 4-2 削減目標等の達成に向けた対策・施策
>○本計画の基本方針を踏まえ、削減目標等の達成に向け、以下の対策・施策を推
>進します。
★効果的な気候変動対策の原則として
- 可能な限り全て電化
- 再エネを過剰建設
- 大規模送電網と市場創設
- 揚水や蓄電池等の建設
- 大量の植林
- 農業の脱炭素
- セメント・鉄鋼・製紙・重化学工業等のプロセス脱炭素
- 重い炭素価格
- 化石燃料補助金廃止
が挙げられている。
このような対応策の原則に従って、効果の上がる2割を優先に対象とすることで8割削減を達成できるような重み付けをした手当をするべき。
目標の内訳では、工業界には甘い数値目標を立てて、その分家庭部門などの目標比率を厳しくしている。元々無理筋な経済成長率を前提にしているからだろう。家庭部門の削減を担当する主権者として、分配の方針が間違っている、と異議を申し立てる。工業県の愛媛県で、工業界に配慮をすることで生活者が首を締められる事態はなんとしても防ぐべき。
(3)環境負荷の小さい交通の促進
○公共交通機関や自転車等の利用拡大 ○交通渋滞の緩和・交通の円滑化
★都市計画の意義を見つける分野として、都市交通への取り組みが挙げられる。安全な自転車・パス専用レーンを複数路線の市街地に完全導入し、自動車レーンを削減すること、都市中心部の駐車場密度を減らす総量規制を行い、中心部からの自家用車の排除を目指すことなど。
既存の自動車専有面積を削って自転車道を整備することが重要です。
従来の一車線を削って敷居で分離された安全な自転車道ネットワークの整備を重視するべきです。また電動アシストカーゴバイクを輸入促進して、都市部での自家用車のニーズ自体を削減し置き換えることを、都市計画の中心に置くべきです。
★飛行機の便数を削減する方向性を決めるべき。観光のためといいながら、飛行機路線を拡大することは多くのCO2排出増加を誘発している。便数を減らすことで、特に近距離の飛行機利用を削減するべき。
>(基本方針3) エネルギーの脱炭素化の推進
>(1)再生可能エネルギーの導入拡大
★大規模洋上風力は脱炭素化の鍵。目標と政策が重要だが、今そのような発電会社はないから問題。既存の電力会社に義務付けて開発を進めさせるべき。四国電力は台湾の洋上風力にも出資をし、今は損失を出して撤退かもしれないが、意欲はあるし指向性を持っているといえる。
・浮体式洋上風力の高い目標設定
・送電インフラ整備の前倒し
・セントラル方式の早期導入による地域との調整
・関連産業の誘致・育成と港湾整備
これらのためにも、四国電力に導入を義務付けることで政策を総動員できる体制を作るべし。
>(3)水素エネルギーの導入拡大
>○グリーン水素の地域循環体制の構築 ○水素の利活用の推進と普及啓発
★水素はグリーンウオッシングの対象として、業界、総合商社などのPRが入って推進されているが、輸入エネルギーであるグレイな水素の拡大にはほとんど意味はない。エネルギー自給を目指して「脱産油国資源」を強調するために、水素インフラの導入拡大には慎重路線を取るべき。
>(2)循環型社会の構築
>○廃棄物の発生抑制・適正処理
★廃棄物削減のための抜本的な対策を抜きには、46%目標自体を達成することも無理かと思います。
まずは生ゴミの分別回収と堆肥化を実現して、有機農業用の肥料化することを目指すべきです。有機農業および再生農業における脱炭素のための各種施策を市の担当分野として取り込んではいかがでしょうか。
そして有機肥料とはできない残滓についてはバイオ炭を作り、農家に土に鋤き込んでもらう、などの従来、市では取り組んでいない各種の吸収源対策を活用すべきです。
参考文献 ポールホーケン編『リジェネレーション』
>(4)普及啓発の強化
★単なる普及啓発というだけでなく、気候市民会議を開催して大勢の衆知を集めること、会議に参加する中で、こんな対策があるのだ、ということを納得し、周りの人を巻き込んだ意思決定を始められるようになる。
P.46 5 県の事務事業における削減目標(事務事業編)
5-1 削減目標
★一事業者としてほかの事業部門横並びになるのではなく、先行すべき先進事業体が「県」である、と位置づけて目標を高く掲げるべき。
国全体として必要な62%(70%)削減の数字をそのまま使うのはどうか。
P.47〜 5-2 削減目標達成に向けた対策・施策
>【重点的な取組み】
> (5)再生可能エネルギー電力の調達検討
★(5)再生可能エネルギー電力の調達は「検討」ではなく資金を積み立ててでも早期に実施するべき。大口需要家として県が採用することを確定すれば、PPA事業者にとっての需要が拡大することになるので、再生可能エネルギーの開発増加に直接つながるため。
>【脱炭素や環境保全につながる庁内でのその他の取組み】
>○職員研修の実施による意識徹底・行動変容の促進
★気候市民会議の団体職員版を作って対策の必要性、可能な措置の範囲の意思決定を行わせてはどうか。一人ひとりの当事者が状況認識の深化を通じて、分かっている現場の声を組織の意思決定に反映させるフィードバックとなるため。
P.49〜 6 気候変動の影響への適応(気候変動適応計画)
>農業・林業・水産業(水稲・果樹、病害虫・雑草等、農業生産基盤)
>(主な影響)
>○品質低下、生育障害、減収
★いよいよサバイバルの時代、気候災害をいかに生き延びるのかという適応策の文言にも見るべきものがない。農業分野など、ひとまずという趣旨でチェリー・ピッキングして果樹ならミカンだけ、など適応策を実施する業種を選んでいればいいというのではなく、問題にはすべて対応しなければならないことを明記するべき。
★「気温上昇限度1.5℃(ないし2℃)以上の場合に海洋生態系が適応するすべはないものと考えられる」などの表現で「何度レベルまでの適応策」を前提として想定するのか、をはっきりさせる必要があるのではないでしょうか。
参考:本「温暖化で日本の海に何が起こるのか 水面下で変わりゆく海の生態系」山本智之著ブルーバックスB-2148,2020年8月刊
シナリオRCP8.5では瀬戸内海のクロメなど、カジメ類の海藻類が温暖化の未来で完全になくなってしまうことが紹介されています。(5-5変容するアワビやサザエのエサ場-瀬戸内海から消える海藻とはp.248)
その一方で温暖化により全国的に温帯性サンゴが北上していく移動が、逆に海洋酸性化が進むことでサンゴの生育に適さない海域が南側に拡がる動きも受け、両方の動きに挟まれサンゴの生息適地が消滅することが紹介されています。(4-10日本からサンゴが消える日-「2070年代に全滅」予測もp.213)
一次生産の生態系が大きな変容を遂げて、漁業もひどい悪影響を受けることでしょう。これは生物種の絶滅に関わる大きな問題である、と緩和策の必要性にも触れるべき中身です。
★IPCC最新報告書によると、今日、適応策への費用には緩和策と同じ規模の資金を提供する必要がある、とされている。適応策の大幅予算化のため国への予算要請を積み上げるべき。
>(主な適応策)
>○流域治水の推進
★将来的な気候変動のレベルとしては2℃上昇のRCP2.6の場合を元にして、愛媛県が肱川流域の降水量予測を行い、かつ様々なシナリオを立てて、これを基本高水想定に用いること。肱川流域の計画は基本高水がえいゃっ、で変えられたばかりだが、その根拠がさだかではないため。
★流域治水に住民参加の仕組みを組み込む、具体的にはくじ引きで参加する市民に専門家が惜しみなく情報を提供して熟議してもらいコンセンサスを取るという、気候市民会議の仕組みを導入すること。
P.66〜 7 計画の進行管理
★地域の適応策(つまり気象災害の事前防災)の分野こそ、各々の分野の抱えている暗黙知のようなものが大事になる。これを議題にして、直接民主制(くじびき)の取り組みである『気候市民会議』を開催することで、市民への啓発にもおおいにつながると考えられる。
気候市民会議を個別テーマごとに開催することで、大勢の衆知を集めると共に、住民の防災意識を高めるのに役に立つので、気候市民会議を「適応策テーマ」で実施するべきである。■