辺りは明るくなり始めていた。朝の5時ごろだった。明朝の湿気に満ちた空気がジフの体全体を濡らした。
昨夜から寝ていない彼の疲れはピークに達していた。体が重く、頭がぼーっとする。
しかし彼に休むという考えは浮かばなかった。しばらくして今まで築いてきたものが、すべて崩されてしまうことが起こるかもしれないという現実が、彼に疲れを忘れさせた。
ジフは物陰から注意深くその二人組を観察していた。
二人組の男女は眠そうだった。
今から人間を殺しに行くというよりも、朝仕事場に集合するような、日常的な空気が漂っていた。
彼らにとっては、殺し自体は単なる日常生活の一部なのかもしれない。それくらいの当たり前さがあって、彼らから殺気が出ていないのか、もしくは彼らに本当に殺意というものがないのかのどちらかだった。
彼らはなにかを待っているようでもあった。
時間はあるが、なにをすれば良いのか分からない。何かしらの命を受けて、ただ待っていなければならないというようでもあった。
二人組はゆっくりと山の方へ歩いて行った。
元々人口の少ないこの島では、朝の5時ともなるとほとんど人がいなかった。
ジフは、彼らの後ろを尾行しながら、頭の中で思考を巡らせた。
いくつかの不確定要素があるが、もしこの二人組が、例の二人組であるならば、これはまたとないチャンスではないかと、彼は思った。
隙を見て後ろからモリを突き刺せば、殺せなかったとしてもかなり戦況が有利になる。
ただし、失敗した時はどうなるかわからない
、という要素が彼を踏みとどまらせもした。
彼は色々なメリットデメリットを考えるだけ考えて、ひたすら思考を巡らせた。
そうして、それだけのリスクを負って、背後からの攻撃を行うか必要があるのかどうか考えていた。
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