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アッラアアア

宝島 15

2019-04-14 | 宝島 ワンダーランド

彼は考え続けた。

そして、色々な考えとともに、多くの感情も芽生えてきた。

 

この状況がチャンスであるという考えが浮かんでくると、今度はこの状況を見過ごしてしまう事への恐怖感も生まれて来た。

 

また、ここに来て人を殺害する、と言う事への恐怖感も芽生えてきた。この二人組が、本当に自分たちを殺しに来たならば、それを阻止するために彼らを迎撃する、というのは彼の中で納得がいった。

 

しかし、この二人組が仮にこの事件に無関係な人間たちであったとしたら、彼は単なる人殺しをしたに過ぎないことになる。

そしてそれを正当化するために、他人を殺害することによって、トランに予言された、死の運命から逃れることが出来る、だからやるしかないのである、という邪悪で身勝手な考えも彼の脳裏をよぎった。

 

感情や倫理という諸処の概念が浮かんでくる中で、彼は出来るだけこれから自身の行うことを正当化していった。これが本当に社会的な正義かどうかはわからない。

しかし人間は、そうやって自分のやましい行い、悪行を正当化していく生き物なのかもしれない。

 

ジフはとうとういてもたってもいられなくなってきた。物陰から飛び出して、片手にモリを構え、一直線に二人組に向かっていった。

 

物事を円滑に進めるためには、細心の注意と正確で素早い行動が不可欠であるが、この時の彼にはその注意力が欠如していた。

そして彼にとっても、そんなことは重々承知の上だった。

 

彼は何かのアクションをすることで、自分が成功に向けて着実に進んでいると実感するタイプの人間だった。

 

この時でもそうである。彼は今のチャンスをものにすることが、成功への近道だと信じていた。

この奇襲の成功によるメリットと、自分自身が受ける不利益というリスクとを天秤にかけて、このリスクをとることが最善であると判断したのである。

 

しかし、彼の持ちうる相手の情報が、現時点でで少なすぎるのも事実である。このことは彼にもしっかりわかっていた。

 

ジフの振りかぶったモリが、女性の背中をめがけて振り下ろされた。


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