IKUTO-bot

アッラアアア

宝島 13

2019-04-09 | 宝島 ワンダーランド

お父さん。彼は意思の強い男だった。

彼の名前はジフ。

 

彼がこの島に生まれてすぐ、両親が離婚した。父親は島を出て行き、母とともにこの島に暮らした。

 

女手一つで育ててくれる母を支えようと、家事の手伝い、アルバイト、なんでもやった。

ちょうどその頃近所の漁師に習って漁業も習得した。

 

彼には生きるという事に対する信念があった。島を守る、子供や未来を担う若者を守る事で、人間の営みを継続させる、という一種の宗教じみた観念を持っていた。

 

そしてその反面、老いたるものに対して厳しく、必要があれば切り捨てるような冷酷な感覚を持っていた。

 

彼は家の外に出て、足音の方に向かっていつた。民家のある小道を抜けて大きな通りに出る。周りは汚い蔦まみれのホテルの看板、それに旧時代の趣をもったホテルの廃墟、またはそれを取り崩したのだろうか、瓦礫の残りが堆積している区画が、いくつかあった。

 

ジフは足音を追って、まるで狩をするヒョウのように足を運んだ。

 

路地を曲がると、2人の男女が立っていた。

2人の男女は辺りを見回して、何かを探している様子だった。

 

 

トランの情報と一致する、2人の男女。

 

男は身長150㎝くらいだろうか、小柄な体格で、黒のハットにジャケットを羽織っていた。

 

女の方はシルクのドレスを着た、長身の女だった。2人とも、人を殺しにきた、というよりもパーティに行くときのような、田舎に不似合いな格好をしていた。

コメント    この記事についてブログを書く
« ≪婚活の謎③:ヤリモクの存在≫ | トップ | 宝島 14 »

コメントを投稿

宝島 ワンダーランド」カテゴリの最新記事