ジフの振り下ろしたモリがミルファの肩に当たると、モリは音を立てて2つに折れた。
なんだこれは!?
こいつ、モリが刺さらない!肌が鉄のように硬い!
ジフの頭は混乱した。そしてそれと同時に相手が特異な性質を持っている、ということを恐怖に感じた。
そしてその恐怖はジフの脳内に逃げなければならない、という危険信号として放たれた。
二人組はジフの方を見た。女の方は表情一つ変えなかったが、男の方はとても驚いているようだった。
ジフは全速力でその場から離れた。二人組からは急いで逃げていくジフの背中が見えた。ジフはそのまま走り続けて少し離れたの廃墟の中へ逃げ込んだ。
二人組の男女は追ってこなかった。
ドールは折れたモリのスピア部分を拾ってよく観察していた。
彼がジフを追わなかったのは、襲ってきたジフをただの野盗だと思ったからだった。
変な輩に構っている暇などなく、ドールは自分の任務を遂行することだけを考えなければと思っていた。今回は野盗が人形であるミルファのみを狙い、それが失敗して逃げた事を考えても、野盗が自分達との戦力の差を痛感したのは感じとれており、もうこれ以上襲ってくることはないだろうと彼は推測した。
しかしそのドールにも気がかりなことが少し存在した。そもそも野盗が自分達を襲いに来るのだろうか。
ドールはこの島で自分たちが狙われたことを不思議に思った。この島は人口があまり多くない。見たところ金目のものが必要になる事もあまりなさそうに見える。だが襲われた。一体何のために?
ドール達はこの島に奪われるほどの食料は持ってきていない。
そんな中襲ってきた男が持っていたこのモリは、魚を取るためのもので、この島で生き残るためには重要なものと思われる。
だが、そのモリをあえて武器にしてまで、襲うことを選んだその心理とは一体なんだろうか。
ドールはふとそんなことを考えながら少し立ち止まった。もう一度襲ってきたらその時は確実に仕留めよう、ドールはそう考えた。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます