相田が眼を覚ました時、まだトランは眠っていて、おばあさんが朝ごはんの支度をしていた。
死の運命が迫っているのにもかかわらず、怖くないのか、と相田がおばあさんに尋ねると、おばあさんは運命は運命だからね。私ももう長くないからそんなに怖くはないね、と言った。
相田は、ジフの言った通りおばあさんがすでに死に対してある種の放棄的な心理にあることを悟った。
運命というものは生き物にとって動的な働きをするもののように思えるが、実際は全て結果として存在するもので、最終的な結末を指し示しているに過ぎない。
結果は結果であると受け止めて、いつだって現在を最善にするよう進んでいくしかない。相田はそんなことをおばあさんから言われているような気がした。
相田はおばあさんに言った。
おばあちゃん、私がおばあちゃんを必ず助けるから!
相田の目からは涙がこぼれていた。
おばあさんは相田にありがとう、と言った。
しばらくしてトランが起きてきて、3人で朝ごはんを食べ始めた。トランは元気がなさそうだった。
トランは二人組がもうすぐここへ来ると言った。
相田は自分がなんとかしなくては、と自分に言い聞かせていた。ひとまずトランとおばあさんに、誰かが来たらどこかに隠れるように言った。
相田は相田で茶の間の窓から外を見張ることにした。そしてしばらくすると、トランの予言通り二人組の男女がやってきた。
二人組の男女のうち、女の方について相田は異変を感じた。表情が硬い、そして身体全体に人間の動きとは違うものが感じられる。
まるで人形のようなものが、自分の意思があるかのように歩いていた。
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