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アッラアアア

宝島 16

2019-04-29 | 宝島 ワンダーランド

その日ドールは朝起きて、いつものように身支度をしていた。とても早い朝だった。まだ日は出ていなかった。

 

一通りの身支度を終えると、クローゼットから大きな人形を取り出し、服を着せて、化粧を施した。慣れたものだった。ヘリが到着する約束の時間が訪れると、いつも通りの黒のジャケットに黒いハットを被って、まるでサーカスの支配人のような格好で、そのまま島へと向かうヘリコプターのやってくる着陸場に向かった。

 

彼は普段から面をしている。それは彼が自分の顔を誰にも見られたくないと考えていたからである。

 

彼の顔は醜かった。

その顔は彼から人を遠ざけた。幼い頃からその醜悪な顔が原因で沢山の嫌がらせやいじめを受けた。彼がいじめられているという事を知っていても、周囲の人間は誰も助けてはくれなかった。実の親は彼が物心ついた時には彼を見放していた。

 

青年時代に、彼は一人で生きていくことを学んだ。そして彼自身も、誰にも縛られず、自由に生きていくことを選んだ。

 

最初のうちは気分が良かったが、時折寂しさも感じた。誰にも相手にされない現実に愕然とし、そのことは思春期の彼を落胆させた。そんな彼が自暴自棄に陥っていた時、街の演劇座で彼が出会ったのが人形を使った演劇だった。

 

その人形を見て、彼の頭の中に人形なら自分を裏切ることはない、という考えが浮かんできた。彼は人形を作り、そしてそれを動かす技術を学んだ。

 

何年か経って、彼は厳しい修行の末、人形使いになった。彼の人形を使う技術は、奇跡とも言える領域まで達していた。自由に人形を扱い、自由自在に、まるで生きているかのような動きを人形にさせる事が出来るようになっていた。

 

ある時彼の人生の中で最高傑作とも言える女人形を作ることに成功した。

彼女の名前はミルファと名付けられた。

 

ドールは眠そうにミルファとその島に降り立った。

 

彼は先日組織からその島に行けとの命令を受けていた。組織の命令は絶対で、否が応でも行かなければならない。

今回は目の無い少年を連れてこい、との命令だった。 

 

ジフが見つけた二人組のうち、男の方、彼の名はドールと言った。

ジフ達の推測虚しく、ドールとミルファはトランのみが目的だった。

 

目的地に着くまで時間がある。組織の命令によれば、その島は人が少なく、殺しをしてもバレるリスクが少ないとのことで、少年さえ連れて来られればあとは好きにしていいとのことだった。

 

好きにしていい、とは殺しをしてもいい、ということで、組織の暗黙の了解でもあった。

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