ただの偶然なのですか

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映画「転々」の感想

2007年11月30日 | 映画
私が初めて東京に行ったのは、高校の修学旅行でした。その後にも東京には四回ほど行きましたが、地方に住んでいる私にとっては、東京は大都会で人々の歩くスピードも速くて、散歩する所というイメージはなかなか想像できません。
でも、そんな私にとっても、この映画に映し出される東京の下町での生活は、行ったことがない場所なのにどこか懐かしく感じられました。

この映画で描かれている東京散歩は、「目的地が決まっているなら散歩って言わないんじゃないか?」とオダギリジョーのセリフにもあるように、散歩というより旅です。人生という旅を振り返りながら、見知らぬ二人の人間が、一緒に思い出の場所をゆっくりと歩いていきます。
そんな旅の道中に、クスッと笑える小さな可笑しさが散りばめられているのですが、その背後に横たわっているのは冷たい姿の重い現実…。
旅の目的地も重苦しい場所ですが、そんな深刻な事態を忘れてしまうほど、ここに描かれている人々の営みは温かくて、可笑しなエピソードも人間臭くていとおしいです。
人生という旅の終着地点も死という重苦しい所ですが、そんなことは忘れて、小さな可笑しさで心を暖めながら、コロコロと転がるように生きていくのが幸せなのかも…。人生なんて、どっちに転がるか分からないものですし…。

そして、三浦友和さん、いい味だしていますね。若い頃から見てきた俳優さんが素敵に年を重ねている姿を見ると、自分も年をとったからこそ分かる魅力を感じます。



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