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残したい日本語

2005-10-15 00:48:33 | 雑談
市が主催している講習会に行ってきました。これは、3回に渡って著名な方が日本の文化をテーマに講習を行う、というものです。前回は温泉LOVEな大学教授、今回は俳人の黛まどかさん。「残したい日本語」をテーマに俳句の季語を絡めてのお話でした。
客層は時間帯もあってかほぼ全員60代を越えた方ばかり。正直浮いていたんですけど、ためになるお話でさっぱり博識のない自分にとっては感動しきりな内容でした。

黛さんは春夏秋冬をテーマに雨や雪、花鳥風月にまつわるお話をされたんですが、「雨」という単語でもいろいろな呼び方があるんですねー。「時雨」や「梅雨」といった呼び方はおなじみなんですけれど、「若葉雨」や「卯の花腐し」「虎が雨」なんて呼び方もあるんですね。「わたくし雨」は今でいう「極地的な雨」の意味で、自分の周りに急に降り注ぐ意味らしいです。

そんな中で、「遣<や>らずの雨」という言葉のエピソードには非常に感銘を浮けました。これは、家に招いたお客さんが帰ろうとしたところに、急に降ってくるような雨を意味する言葉で「遣らずの雨だから、もう一杯御茶でも..」といったケースで使うらしく、相手の帰宅を惜しむ意味もあるようです。

以前黛さんが韓国に行った際、ユンさんという韓国の中年の男性が「黛さん、「遣らずの雨」って言葉を知ってる?」と開口一番に訪ねられたそうです。
ユンさんは反日教育を受けて育った世代で、少なからず日本に嫌悪感を持っていたそうです。そんな矢先に出張で日本に行く事になり、嫌々滞在するはめになりました。そして最後の滞在の日。帰国のためタクシーに乗って空港に向かっていたのですが、降りた矢先に雨が降って来たそうです。そこで同席していた顧客の日本人の人が、「ユンさん、遣らずの雨ですよ」といったそうです。
「この雨があなたの帰りを惜しんでいます」という、その言葉の意味を理解したユンさんは、すっかり日本に対しての嫌なイメージは崩壊してしまったそうです。こんな情緒的な言葉を持った国が悪い訳がない、と。
この方の感受性が優れていたからかもしれませんが、そのたった一つの言葉が相手の気持ちまで動かした、という事に珍しくも感動してしまった次第です。

別のサイトでもふれましたが、日本にはこのように季節や自然にまつわる綺麗な言葉が沢山あるんですね。紅葉にも色づいてから落ちるまで、月の満ち欠けにもいろいろあるように、その言葉を知っているだけで周りのものの見え方が変わってくる(また、そんな気がするだけでも)のは、ひょっとして素晴らしい事かも..と思った夜でした。


余談ですが、先週も同じように講習会に足を運んだ帰り道の路地裏で、焼き肉屋の前を一羽のニワトリがうろうろ。どうやらその店の飼っているニワトリのようで、中に入れてもらえない様子。で、今回も同じようにその焼き肉屋の前を通ると、やっぱり入れてもらえないらしく..、また店の看板の前をうろうろ。そんな訳で一句...
秋の夜の ネオンに落とす 鶏の影
凡庸ではありますが、鶏の哀しい心情を詠ってみました。さて、来週の講習はあの「頭山」の山村浩二さんなんですよ。今から楽しみだな~
来週もこのニワトリはいるんでしょうか。店の看板のダチョウ、カンガルーってのが気になるな....

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4 コメント

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Unknown (チョコママ)
2005-10-15 05:21:58
<すっかり日本に対しての嫌なイメージは崩壊してしまったそうです。こんな情緒的な言葉を持った国が悪い訳がない、と。



もうこういう事聞くと涙が出ちゃいますね。

(涙腺が弱いので笑)

日本語って言葉数もとっても多いし、意味も

色んな意味を持っていますよね。

最近では無くなっていく言葉もあって

とても寂しいです。私の場合その半分も

知りませんが(恥ずかしい~)



最近、私の中では「江戸しぐさ」という礼儀・作法に興味を持って仕方ありません。

昔は現代よりも人と人が優しかったのですね。ダンディという言葉は江戸時代には存在していたのかも知れませんよ。



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江戸しぐさ、初耳です (matsumo)
2005-10-16 00:56:39
チョコママさん、こんばんはー。そうですね、自分もその話を聞いたときは江頭...いや目頭があつくなりました。言葉ってやはり大切なものですよね。

海外の方には紅葉を美しいと思わない人もいるようで、自然に対する目線の持ち方というのは日本人独特のもののようです。



江戸しぐさ、この言葉は初めて聞きました。この時代の人は、皆活気があって粋な生き方をしていたイメージがあります。具体的にはまだ解らないのですが、彼らのような仕草が自然にできたら、今の時代でもかなり格好いいかもしれませんね。
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日本語のこまやかさ (どうげんざか)
2005-10-17 20:52:00
MATSUMOさん、こんにちは!

「あら、おまえさん、遣らずの雨が・・・」夕立が取り持つ縁かいな・・・

くー、おつだねぇ(って、私は何物なんでしょうか)。



でも”涙が雨になる”という涙雨には、なんだかしみじみとした悲しさがありますね。



江戸しぐさ・・・どんな感じでしょうか。そういえば、落語には”しぐさ落(おち)”という終わり方がありますね。



あの鶏との再会をお祈りいたします(きっと、そのお店でかわいがっているんだと思います)
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おつですねー (matsumo)
2005-10-18 13:53:57
どうげんざかさん、こんにちは!涙雨という言葉は使われる状況が浮かんできますし、響きも綺麗ですね。「遣らずの雨」、昔の人が使う分にはいいのですが、今風の若い男が急に使うとあらぬ誤解を呼びそうなので要注意です。



江戸しぐさ、気になりますねー。時代によっていろんな仕草があったのでしょうか、ものを手づかみで食らう下品な様を「縄文しぐさ」と言ったりとか。



鶏、ダチョウやカンガルーの肉を焼いてるような店ですからね。常連客の50代の中年の男に「その鶏食えんの?」とか聞かれないように隔離しているのかも。
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