今年最大のイベントと言われる米大統領選の投開票が11月5日に迫ってきた。世論調査では大接戦となっており、民主党のハリス米副大統領か共和党のトランプ前大統領か当選の行方は不透明なままだが、直近までマーケットではトランプ氏やや優勢との情報をもとにいわゆる「トランプトレード」を積極的に行う参加者が目立っていた。このため、ハリス氏当選の場合は、米株売り・米長期金利低下・ドル下落とトランプトレードの巻き戻しが激しく起きる可能性がある。トランプ氏が勝てば、トランプトレードに拍車がかかり、米株高・米長期金利上昇・ドル上昇となるだろう。結果によって全く別の世界が出現するというドラマチックな展開が待っている。
<ビットコイン下落、トランプトレード手仕舞いの動き>
マーケットでは、大接戦とはいいながら接戦7州でトランプ氏が小幅リードしていることを材料にトランプトレードが活発化していた。米株高・米長期金利上昇・ドル上昇の流れが目立っていたが、1日のアジア取引時間でビットコインは一時、6万9000ドルを割り込んだ。トランプ氏が暗号資産(仮想通貨)を強く支持してきたことから、トランプ氏優勢の情報が流れるとビットコインが買われる流れが形成されてきた。足元でのビットコインの下落は、大統領選の行方が混とんとしているため、いったんトランプトレードを手仕舞う動きとして市場の注目を集めた。
1日の日経平均株価が前日比1027円(2.6%)安の3万8053円67銭と続落したのも、米市場でのハイテク株下落が影響したとの声が多いものの、一部の市場関係者はトランプトレードの巻き戻しの動きが東京市場でも出始めたとみているようだ。
<当選者確定まで時間かかるなら米株下落、日本株も連れ安か>
米大統領選の開票状況は、日本時間の11月6日朝から順次判明していく。激戦7州の動向も6日午後にははっきりしてくるが、郵便投票分の開票が遅れたり、接戦の結果として再集計になることも予想され、当選確実の報道が6日中に出ない展開も予想される。
もし、当選者の確定に数日を要する展開になるなら、米政局の不透明感を嫌気して米株は下落する展開が予想される。その場合、日本株にも影響が波及して日経平均株価が連れ安する展開もあり得る。
<トランプ氏当選、米株高と円安に>
トランプ氏当選の場合は、トランプトレードの再スタートが切られ、米株が大幅に上昇するとともに、米長期金利も4.5%を目指すとみられている。ドルも買われ、対円では円安が進行して155円を突破する公算が大きい。
ただ、そのケースでは日本の通貨当局による「口先介入」や日銀の利上げを警戒する声が市場で広がり、どこかの時点で円安にブレーキがかかるという見方もある。
<ハリス氏当選、トランプトレードの巻き戻しで市場激震>
ハリス氏当選のニュースが流れた時は、直前までトランプ氏優勢の見方があっただけに米株売り・米金利低下の流れが先行し、ドル/円も短期的にドル安・円高に振れそうだ。特に米下院選で民主党が多数派になった場合は、米企業に対する規制色が強い政策が通りやすくなるとの見方から、米株に売り圧力がかかりやすくなるとの見方が出ている。
このケースでの日本株にも相応の売り圧力がかかるとみている市場参加者が多い。総じて言えることは、ハリス氏の政策が不透明感を持ってみられても、トランプトレードの巻き戻しが色濃くなり、ドル/円は150円台を割り込んでドルの下値を模索する展開になりやすいと予想する。
<急速に薄れる米雇用統計への関心、政府・日銀の判断にも大きなインパクト>
トランプ氏勝利とハリス勝利では、全く反対方向のマーケットの流れになる可能性が大きく、その意味で市場関係者の緊張感は今年最も高まっている可能性がある。1日の米雇用統計の結果への関心が足元で急速に薄れれてきているのも、米大統領選の結果のインパクトが極めて大きいことによると言える。
日本政府の政策スタンスや日銀の金融政策判断も、これから起きるであろうマーケットの大変化の影響を受けずにいることはできないだろう。
ブルーかレッドか──。米国民の選択が日本の広い分野に影響を与える瞬間が迫ってきている。
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