一歩先の経済展望

国内と世界の経済動向の一歩先を展望します

1月CPI総合が4%上昇、目立つ食品値上げ 円安進展なら日銀判断に影響も

2025-02-21 11:44:56 | 経済

 総務省が21日に発表したした今年1月の全国消費者物価指数は、コメを含めた生鮮食品を除く食料が前年比プラス5.1%と大きく伸びた点が目立った。消費者の物価上昇の感覚に近いと言われている「持ち家の帰属家賃を除く総合」も同4.7%と大幅に上昇。日銀の植田和男総裁は今月12日の衆院財務金融委で食料品の値上げと期待物価上昇率との関係に言及しており、この点が今後のポイントの1つになると筆者は指摘したい。

 CPIの総合とコアCPIは今後、高止まりする可能性が高まっており、ドル高・円安が進むようなら物価の上振れリスクが顕在化することも予想され、物価上昇と利上げ時期の前倒しが今後の焦点として浮上すると予想する。

 

 <生鮮食品除く食料、前年比5.1%上昇>

 1月全国CPI(除く生鮮食品、コアCPI)が前年同月比プラス3.2%と市場予想の同3.1%を上回り、総合は同4.0%と2023年1月以来の4%台の伸び率となった。

 CPIの総合を大きく押し上げた要因の1つとして、生鮮野菜の値上がりが挙げられる。キャベツが約3倍、白菜が約2倍と値上がりし、生鮮野菜は同36.0%と大幅に上昇。生鮮食品全体で同21.9%の伸び。

 また、コメが同70.9%と過去最高の値上がりとなったため、生鮮食品を除く食料も同5.1%と大きく伸びた。

 

 <今年の食料品値上げ、前年比で9割増のペース>

 このように見てくると、足元の物価上昇は野菜やコメなどの値上げが主導しているように見えるが、輸入原材料などを使用した加工食品など「飲食料品」全般も値上げの大きなうねりが鮮明になっている。

 帝国データバンクが食品主要195社を対象にした価格調査を行ったところ、今年2月の飲食料品値上げは1656品目と前年2月を1.8%上回っており、2025年通年の累計値上げ品目数は8867品目と前年の同時期に比べて9割増のペースとなっており「値上げの勢いは、前年に比べて強まっている」と同社はみている。

 さらに値上げの理由として、原材料高に加えて物流費や人件費の上昇を挙げるメーカーが増加。単なる資源高や円安の影響だけでなく、2024年の高い賃上げや解消される人手不足などの影響が入り混じり、値上げの圧力が強まっていることをうかがわせている。

 また、価格高騰を抑制するために政府が3月から実施する備蓄米の放出も、1年以内の買い戻しが条件になっていることなどから、コメの値下がりの効果がどこまで出るのか不透明との見方が、コメの流通関係者から早くも出ている。

 

 <3月12日の春闘集中回答、前年並みの5%台なら物価押し上げに波及も>

 このような情勢の下で、コアCPIや総合はしばらく高止まりする可能性が高まっていると筆者は予想する。ここで注目されるのが今年の春闘における賃上げ率の動向だ。トランプ米大統領による自動車をはじめとする主要製品に対する関税の賦課は、日本に対しても実行されれば大きな景気下押し効果となる。

 自動車に25%の関税がかかればメーカー全体で3兆円規模の影響が出るとの試算もあるようだが、正式な米政府の発表が言われている通りに4月2日以降なら、3月12日の春闘における大企業・製造業の集中回答日の段階では、日本企業に対する影響が不透明なため、事前に報道されているように前年並みの5%台の賃上げ率に落ち着く公算が今のところ大きい。

 そうなれば、中小企業の賃上げ率も昨年並みになる可能性が高まり、それは各種の段階での製品やサービスの値上がりにつながって一段と物価を押し上げる要因になりうる。

 そこに為替面でのドル高・円安が進行した場合、19日の講演で日銀の高田創審議委員が言及したように物価上振れの可能性が出てくるだろう。

 物価上振れのリスクが顕在化するようなら、その手前で利上げの議論が本格化するのではないか、と筆者は予想する。

 

 <7月参院選前に物価高に神経質な政府・与党、利上げに賛成の可能性も>

 この時に注視が必要なのは、政府・与党のポジションだ。7月の参院選を前に物価高が国民生活の大きな焦点になっていた場合、参院選での与党苦戦が現実化することが予想される。

 足元での輸入物価を見ても、契約通貨ベースと円ベースではかい離が生じ、その部分は円安が効果を発揮しているのは一目瞭然だ。従来は日銀の利上げに「慎重な検討」を求めてきた政府とそのバックにいる与党が、物価高の抑制のために日銀の利上げ検討に「賛意」を示すことも十分にありえる。

 実際、1月の全国CPIで「持ち家の帰属家賃を除く総合」が前年比プラス4.7%と前月の同4.2%から跳ね上がったことは、政治的には「暗い予兆」と映るだろう。

 こうした点も利上げのタイミングが前倒しされる可能性を高める要因になると考える。

 

 <21日の植田総裁発言、長期金利上昇へのけん制との受け止めは市場の過剰反応か>

 さて、21日の東京市場でドル/円が149円前半から150円半ばまで急速にドル高・円安が進んだ場面があった。市場関係者によると、植田日銀総裁が同日の衆院予算委の質疑で、長期金利が例外的に急上昇すれば、機動的に国債買い入れを増額する、と発言したと伝えられ、足元における日本の長期金利の上昇を念頭に「けん制した」との思惑が広がったという。

 筆者は、この市場の動きは「過剰反応」だったのではないか、と指摘したい。植田総裁の発言をやや詳しく紹介すると「市場の経済物価情勢に対する見方や海外金利の変化等を映じて、長期金利はある程度変動することを考えている」と述べた上で「ただし、こうした市場の通常の動きとはやや異なるようなかたちで、長期金利が急激に上昇するようなやや例外的な状況においては、市場における安定的な金利形成を促す観点から、機能的に国債買い入れの増額等を実施する」と語った。

 植田総裁は「やや例外的な状況」において買い入れを増を行うべきと述べており、足元での長期金利上昇を差した発言ではない、と解釈できる。

 また、高田審議委員は19日の会見で、長期金利の動きに関して先行きの経済や物価の見通しを「普通に反映したものではないか」と述べている。

 いずれにしても、長期金利の動向とそれに対する政府・日銀の見解に関し、マーケットの関心が一段と高まるのは間違いないだろう

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再送:米QT縮小や日銀利上げの観測、一時149円台に 1月CPI強ければ一段の円高も

2025-02-20 16:33:59 | 経済

再送:円高が進展したため、見出しと本文の一部を修正しました。

 

 20日の東京市場でドル/円は一時、149円後半までドル安・円高が進行した。トランプ政権が実施を主張している輸入自動車への25%の関税実施の影響や、米連邦準備理事会(FRB)がバランスシート縮小(QT)の一時停止・縮小を検討すると受け取られ、米長期金利が19日に低下したことなどが影響した。

 また、19日の高田創・日銀審議委員の講演・会見で物価の上振れリスクに言及したことや、20日昼に石破茂首相と日銀の植田和男総裁が首相官邸で会談したことも内外の市場参加者に日銀の利上げが前倒しされるとの観測を広げることになり、円高の動きを強めた。あす21日に発表される1月全国消費者物価指数(CPI)が市場予想よりも強い結果となれば、一段の円高進行も予想される。

 

 <FOMC議事要旨でわかったQTの一時停止や縮小の可能性>

 20日の市場で進行した円高の要因の1つとして注目されたのが、FRBのQT縮小の可能性と米長期金利の低下だ。

 19日に公表された1月28─29日の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨によると、米債務上限問題に関連して今後数カ月間で準備金が大きく変動する可能性があり、この問題が解決するまでバランスシートの縮小を一時停止または減速することが適切かもしれない、と複数の参加者が指摘した。

 筆者は、上記のQTの一時停止や縮小の理由は「表向きの要因」で、本当の理由はトランプ政権から圧力のかかっている利下げは、インフレ鎮静化の傾向が明確にならないため早期の実施が難しく、その代替策としてQTの一時停止・縮小のカードが容易されたのではないかと推論する。

 3月のFOMCでは、QTの一時停止ないし縮小が決定されると多くの市場参加者が予想したために、19日のNY市場で米長期金利が0.9ベーシスポイント(bp)低下の4.535%で取引を終了したと思われる。

 米長期金利の低下は、ドル売り・円買いの材料として市場では消化される。このピースは、地味なようで継続性という点では、無視できない材料になると指摘したい。

 

 <「来月かそれより前」、トランプ氏の自動車関税めぐる発言で市場に波紋>

 もう1つの大きな材料は、トランプ政権による自動車を対象にした25%の関税賦課の方針だ。トランプ大統領は18日、輸入自動車に25%程度の関税を課す方針を表明し、4月2日に詳細を発表するとの見解を示した。

 ところが、19日になってトランプ氏はフロリダ州のイベントでの講演の中で、自動車関税について「来月かそれより前」に発表する意向を表明。4月2日なら一定の交渉期間があると高をくくっていた市場にとっては「大きなショック」(国内金融機関)となり、日経平均株価が一時、前日比600円超の下落となる原因となった。

 複数の市場関係者によると、この日本株下落の動きも海外勢などによる円買い戻しの動きを誘発したという。

 

 <石破・植田会談、市場の利上げ観測を刺激>

 さらに19日の日銀の高田審議委員による講演と会見で、物価の上振れリスクに言及したことや足元の長期金利上昇を強くけん制しなかったことなどに改めて注目が集まり、円買いを後押しする心理的な要因になっているとの見方も出ていた。

 20日昼には石破首相と植田総裁が首相官邸で会談。植田総裁は定期的な懇談だとし「金融・経済動向について意見交換した」と話したと報道されたが、足元で上昇している日本の長期金利について「そうしたことは話していない」と語ったと伝わり、一部に長期金利の上昇が容認されているとの見方も浮上。市場の日銀利上げに対する警戒感を刺激したとの声も出ていた。

 一部の市場関係者からはドル/円の基調が転換するのかどうか、見極めが重要な局面に入ったという意見も聞かれた。

 

 <1月CPI、総合が4%台なら円高加速も>

 筆者は、FRBのQT一時停止や縮小が意識される中で、ドル/円の上値を追うことは難しくなってきたと予想する。そこに日銀の利上げ前倒しの思惑が重なると、ドルの上値は抑えられ、経済データや当局者の発言によっては円高が進む可能性も出てきたと予想する。

 その意味で注目されるのは21日発表の1月全国CPIだ。生鮮食品を除く総合(コアCPI)は前月の前年比プラス3.0%を上回る伸びを示す可能性があり、総合は同4.0%に達するとの予想もある。

 日銀内で物価上振れのリスクが高まりつつあるとの判断に傾けば、市場の利上げ予想が90%を超える7月会合から前倒しされる可能性があると予想する。

 日銀は従来から経済・物価の見通しが予想通り(オントラック)なら、段階的に緩和度合いを調整する(利上げする)方針を示してきたが、上振れとなれば、予想よりも上方に物価上昇率がシフトするリスクが相応に高まるということになるからだ。

 1月全国CPIの結果によっては、ドル安・円高が一段と進む展開も十分にあると予想する。

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米QT縮小や日銀利上げの観測、150円前半に 1月CPI強ければ一段の円高も

2025-02-20 13:35:21 | 経済

 20日の東京市場でドル/円は150円前半と、前日の東京市場午後5時時点から1円を超すドル安・円高となっている。トランプ政権が実施を主張している輸入自動車への25%の関税実施の影響や、米連邦準備理事会(FRB)がバランスシート縮小(QT)の一時停止・縮小を検討すると受け取られ、米長期金利が19日に低下したことなどが影響した。また、19日の高田創・日銀審議委員の講演・会見を受けて内外の市場参加者に日銀の利上げが前倒しされるとの観測が広がりつつあることも心理的に影響したようだ。

 円高方向の流れがさらに継続ないし加速するのかどうかは、あす21日に発表される1月全国消費者物価指数(CPI)の結果によって大きく左右されそうだ。

 

 <FOMC議事要旨でわかったQTの一時停止や縮小の可能性>

 20日の市場で進行した円高の要因の1つとして注目されたのが、FRBのQT縮小の可能性と米長期金利の低下だ。

 19日に公表された1月28─29日の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨によると、米債務上限問題に関連して今後数カ月間で準備金が大きく変動する可能性があり、この問題が解決するまでバランスシートの縮小を一時停止または減速することが適切かもしれない、と複数の参加者が指摘した。

 筆者は、上記のQTの一時停止や縮小の理由は「表向きの要因」で、本当の理由はトランプ政権から圧力のかかっている利下げは、インフレ鎮静化の傾向が明確にならないため早期の実施が難しく、その代替策としてQTの一時停止・縮小のカードが容易されたのではないかと推論する。

 3月のFOMCでは、QTの一時停止ないし縮小が決定されると多くの市場参加者が予想したために、19日のNY市場で米長期金利が0.9ベーシスポイント(bp)低下の4.535%で取引を終了したと思われる。

 米長期金利の低下は、ドル売り・円買いの材料として市場では消化される。このピースは、地味なようで継続性という点では、無視できない材料になると指摘したい。

 

 <「来月かそれより前」、トランプ氏の自動車関税めぐる発言で市場に波紋>

 もう1つの大きな材料は、トランプ政権による自動車を対象にした25%の関税賦課の方針だ。トランプ大統領は18日、輸入自動車に25%程度の関税を課す方針を表明し、4月2日に詳細を発表するとの見解を示した。

 ところが、19日になってトランプ氏はフロリダ州のイベントでの講演の中で、自動車関税について「来月かそれより前」に発表する意向を表明。4月2日なら一定の交渉期間があると高をくくっていた市場にとっては「大きなショック」(国内金融機関)となり、日経平均株価が一時、前日比600円超の下落となる原因となった。

 複数の市場関係者によると、この日本株下落の動きも海外勢などによる円買い戻しの動きを誘発したという。

 

 <石破・植田会談、市場の利上げ観測を刺激>

 さらに19日の日銀の高田審議委員による講演と会見で、物価の上振れリスクに言及したことや足元の長期金利上昇を強くけん制しなかったことなどに改めて注目が集まり、円買いを後押しする心理的な要因になっているとの見方も出ていた。

 20日昼に石破茂首相と日銀の植田和男総裁が官邸で会ったことも、市場の日銀利上げに対する警戒感を刺激したとの声も浮上。一部の市場関係者からはドル/円の基調が転換するのかどうか、見極めが重要な局面に入ったという意見も聞かれた。

 

 <1月CPI、総合が4%台なら円高加速も>

 筆者は、FRBのQT一時停止や縮小が意識される中で、ドル/円の上値を追うことは難しくなってきたと予想する。そこに日銀の利上げ前倒しの思惑が重なると、ドルの上値は抑えられ、経済データや当局者の発言によっては円高が進む可能性も出てきたと予想する。

 その意味で注目されるのは21日発表の1月全国CPIだ。生鮮食品を除く総合(コアCPI)は前月の前年比プラス3.0%を上回る伸びを示す可能性があり、総合は同4.0%に達するとの予想もある。

 日銀内で物価上振れのリスクが高まりつつあるとの判断に傾けば、市場の利上げ予想が90%を超える7月会合から前倒しされる可能性があると予想する。

 日銀は従来から経済・物価の見通しが予想通り(オントラック)なら、段階的に緩和度合いを調整する(利上げする)方針を示してきたが、上振れとなれば、予想よりも上方に物価上昇率がシフトするリスクが相応に高まるということになるからだ。

 1月全国CPIの結果によっては、ドル安・円高が一段と進む展開も十分にあると予想する。

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高田日銀審議委員が「物価上振れリスク」に言及、円安で顕在化なら利上げ前倒しも

2025-02-19 11:29:46 | 経済

 日銀の高田創審議委員が19日に仙台市で講演したが、次の利上げが早期に実施されることを確信させる発言がなかったとして、ドル/円は一時、151円台から152円台へとドル高・円安方向にシフトした。だが、その解釈は「表層的」に過ぎるのではないか。

 筆者が注目したのは「物価上振れリスク」という表現だ。物価の安定が最重要な使命である中央銀行にとって、物価に上振れのリスクがあると認識して、そのまま長期間放置するということはないだろう。すなわち、政策委員会の多数が「物価に上振れ」との認識に傾いたときは、利上げへの本格的な議論が始まるというのが合理的なアプローチだ。この日の講演で次の利上げ時期やターミナルレート(利上げの最終到達点)に直接的な言及がなかったとはいえ、足元の市場が想定している7月利上げよりも前倒しの可能性が相応にあると指摘したい。

 

 <米経済に強気、円安と大幅なベアなら物価上振れに「留意」と指摘>

 今回の高田審議委員の講演で目立ったのは、米経済の先行きに対する「強気」の見方だ。高田氏は「ソフトランディングよりむしろ早期の再加速――言わば「タッチ・アンド・ゴー」――の可能性が高まっていると捉えている」と指摘。2025年も高めの成長率が見込まれる中で「米国の雇用や物価動向が一段と上振れる可能性やその国際金融市場への影響も念頭に置く必要がある」との見解を示した。

 その前提に立って高田氏は「米国経済の上振れを念頭に置くと、それに伴う米国金利上昇・為替円安進展といった市場変動を背景に、今年の大幅なベアの実現も加わって物価が上振れるリスクに留意する必要がある」との見通しを示した。

 

 <円安で物価上振れリスクが顕在化なら、利上げ前倒しの可能性も>

 さらに「米国経済が再び回復に向かう確度の高まりによって為替を中心とする市場変動を背景に、物価が上振れる可能性もある」「既に前向きな企業行動が生じてきたという点で、2%の「物価安定の目標」に近づいている」と指摘しつつ「過度な緩和継続期待が醸成され、物価上振れリスクや金融の過熱リスクが顕在化しないよう、1月に実施した追加利上げ以降も、ギアシフトを段階的に行っていくという視点も重要だ」と述べた。

 つまり、為替を中心とする市場変動=円安の進展によって物価が上振れる可能性に言及しつつ、そのリスクが顕在化しないよう段階的な利上げをする必要があると主張していることになる。

 ここで注目が必要なのは、物価上振れのリスクが顕在化しそうなら、利上げの時期が前倒しされる可能性があるのかどうかだ。高田氏はその点に言及していないが、物価上振れリスクが顕在化しそうなら中銀の責務として利上げの検討に着手することになると筆者は考える。

 

 <米経済堅調、日銀の政策自由度が増大>

 19日午前の市場で、「物価上振れリスク」に反応した値動きは影を潜めていたが、高田審議委員は「1月にかけて米国経済の堅調さが改めて確認され、日米の金融政策スタンスの違いも縮小したといえる」「市場の大きな変動リスクが後退した、すなわち、日本銀行の政策の自由度が増したと捉えている」とも述べている。

 マーケットは、速報ニュースのヘッドラインだけに一喜一憂せず、高田氏の講演の基底にある見方と、今後の政策展開を丹念に分析する必要があると考える。

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再送:長期金利が15年ぶり1.41%、高田日銀審議委員の発言に高まる注目 次の利上げはいつか

2025-02-18 14:47:11 | 経済

再送:本文中の長期金利の水準を更新し、見出しも修正しました。 

 18日の東京市場で日本の長期金利(10年最長期国債利回り)が2009年11月以来、約15年ぶりとなる1.41%へと上昇、20年国債利回りも13年10カ月ぶりに2.055%まで上がった。日銀の利上げに対する思惑が高まっているほか、ウォラー米連邦準備理事会(FRB)理事がしばらくは米政策金利の据え置きが望ましいと述べて米長期金利が上昇したことなどが影響した。

 あす19日に行われる日銀の高田創審議委員の講演と会見で、次の利上げ時期やターミナルレート(利上げの最終到達点)に関し、何らかのヒントが示されるのかどうか市場の関心が急速に高まってきている。

 

 <20年債入札不調、一部金融機関が購入見送り>

 複数の市場関係者によると、18日の20年国債入札で一部の金融機関が購入を見送り、落札価格の平均と最低の開き(テール)は55銭と前回(4銭)から大幅に拡大。20年債利回りの上昇につながった。

 また、ウォラーFRB理事が18日のシドニーでの講演で、物価抑制の状況進展が明確になるまで「金利据え置きが望ましい」と述べ、アジアの取引時間中に米長期金利が4.5%台に上昇。これも日本の長期金利上昇の要因の1つとされた。

 

 <19日の講演・会見、注目される3つのポイント>

 こうした中で、19日に仙台市で行われる日銀の高田審議委員の講演が注目を集めている。複数の市場関係者によると、1)日銀が利上げの要件としている経済・物価の見通しにそって足元の経済・物価上昇が動いている(オントラック)なのか、2)レンジの下限が1%と言われている中立金利やターミナルレートに関して具体的な言及があるのか、3)次の利上げのタイミングを巡り何らかのヒントを提示するのか──といった点に関心が集まっているという。

 

 <食料品値上げと円安に言及するのか>

 筆者は、高い賃上げ率ほどには強さが見えない個人消費の動向について、何らかの分析を示すのかどうかにも関心がある。

 もし、消費を抑えている要因として食料品価格の上昇を挙げ、その原因となっている円安に言及しつつ、次の利上げのポイントとして指摘するなら、次の利上げのタイミングは市場の多数が予測している今年7月から前倒しされる可能性があると予想する。

 

 <市場の中心見通し、次の利上げは7月・ターミナルレートは1.0%>

 18日における市場の日銀利上げ織り込み度合いは、3月が2.4%、4月30日ー5月1日が32%、6月が60%、7月が92%となっている。前週よりも着実に織り込み度合いは前倒し傾向となっているものの、決め打ちするほどの情報発信が日銀からは出ていないという見方が多い。

 また、2年先の金利水準の見通しが1.1%となっており、市場のターミナルレートの予想は1%が多数派と言っていいだろう。

 明日の高田審議委員の講演と会見で、これらの織り込み度合いが変化するのかしないのか──。国内勢だけでなく、海外勢からの注目度も高まっている。

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