30日に発表された7月の鉱工業生産指数は、前月比プラス2.8%と2カ月ぶりの上昇となった。だが、8月の生産予測値は補正後で同マイナス0.9%、9月が同マイナス3.3%となっており、この数字が現実化すると7-9月の生産は4-6月比マイナス0.6%に沈むことになる。
足元で中国や欧州連合(EU)向けの輸出が数量ベースでマイナスになるなど、外需に強さがみえないことが生産の足踏み感を強めていると筆者は考える。加えて台風10号による大雨などの影響で、トヨタ自動車などが生産を中止したり、物流の遅滞や東海道新幹線に代表される交通網の乱れが経済活動に大きなマイナスの影響を与えつつある。こうした生産活動の停滞感がさらに強まれば、7-9月期の国内総生産(GDP)が横ばい圏にとどまる可能性もあると予想する。
<7-9月生産は前期比マイナス0.6%の可能性>
7月生産では、電気・情報通信機械工業、生産用機械工業、電子部品・デバイス工業等が前月比で上昇した。ただ、8月(補正後)と9月の生産予測値を含めた7-9月の生産のレベルは、前期比マイナス0.6%となる。経済産業省は生産に関し「一進一退で推移している」と述べている。
生産に明確な回復基調がみられない背景として、輸出の数量ベースでのマイナス傾向がある。輸出数量は今年に入って2月から7月まで6カ月連続の前年比マイナスとなっており、7月は対EUが前年比マイナス13.8%、対中国が同マイナス10.9%、対米国が同マイナス5.0%、輸出全体で同マイナス5.2%となっていた。
<台風の影響で工場操業停止や物流に混乱>
さらに足元では台風10号の影響で、トヨタは国内全14工場・28生産ラインの操業を30日まで停止。他の自動車メーカーや機械メーカーなども30日に九州の工場で稼働を取りやめる。
九州を中心に物流網にも大きな打撃が加わっており、コンビニの営業停止だけでなく、Eコマースでの商品配送にも大きな遅延が発生しているもようだ。
台風10号は進行速度が遅いため、大雨の影響が長期化する懸念も出ており、生産や物流面などを中心にマイナスの経済効果がさらに大きくなるリスクが高まっている。
<レジャーなどへの悪影響、個人消費に影響なら国内景気に停滞感>
東京と名古屋、大阪を結ぶ経済の大動脈である東海道新幹線が29日夕方から大幅にダイヤが乱れ、30日も終日運転を見合わせるなど交通網にも多大な影響が出て、モノの生産面だけでなく、サービスなど非製造業への波及も心配される。
こうした点を勘案すると、少なくとも7-9月期の生産は前期比マイナスに陥り、その面からGDPデータを下押しする可能性が高まっていると筆者は予想する。
GDPの動向は全体の50%強を占める個人消費の行方に左右されるが、夏休み後半の相次ぐ台風襲来や「南海トラフ地震臨時情報」の発令などで旅行計画のキャンセルが例年以上に多発していることなどを踏まえると、個人消費がけん引して7-9月期GDPが大幅に伸びるシナリオは描きにくいのではないか。
この先も数日間続くとみられる大雨含みの「鬱陶しい」天気は、日本国内の景気の先行きを予兆しているかもしれない。