一歩先の経済展望

国内と世界の経済動向の一歩先を展望します

11月東京都CPIはサービス堅調、オントラックの先に利上げはあるのか

2024-11-29 16:08:03 | 経済

 29日の東京市場でドル/円が一時、150円を割り込むドル安・円高となった。同日朝に発表された11月東京都区部消費者物価指数(CPI)が市場予想よりも強かったため、日銀の12月利上げ観測が高まったとの声がマーケットで浮上していたが、短期金融市場での12月利上げの織り込みは16ベーシスポイント(bp)と64%程度で、市場の大勢が織り込んでいると言える80%超の水準には距離がある。

 円高ポジションを志向する一部の外為市場関係者が、11月東京都CPIを材料に「はしゃいだ」と筆者の目には映るが、CPIの内容を分析してみると、賃金との関連で日銀が重視しているサービスは着実に上昇率が上がっており、日銀が利上げを判断する環境は整いつつある。12月18-19日の金融政策決定会合までに内外の市場動向がどうなるのか、日銀は「総合判断」に必要な情報を丹念にチェックしていくことになると予想する。

 

 <ドル150円割れ、日銀利上げ観測や輸出企業のドル売り>

 29日のドル/円は午後にいったん149.77円までドル安・円高が進んだ場面があった。予想比で強かった11月東京都CPIを受けて日銀の12月利上げに対する思惑が強まったとの声があったほか、月末ということで日本の輸出企業のドル売り・円買い注文がまとまって出たとの指摘もあった。

 ただ、筆者は市場の一部にある「トランプトレード」の一環のドル買いは一巡したとの見方が相対的に増え、一部の参加者が円買いポジションを膨らませたことが影響した可能性があるとみている。

 短期金融市場の12月利上げの織り込みは16bpで、29日になって急速に織り込まれたということではなく、最近はこの水準でこう着しているとも見られる動きになっていた。

 

 <日銀が重視するサービス、着実に上昇幅を拡大>

 だが、11月東京都区部CPIを丹念に見ると、サービスは10月の前年比プラス0.8%から同0.9%に上昇幅が小幅ながら拡大した。より実態を反映していると言われている持ち家の帰属家賃を除くサービスは10月の同0.9%から同1.0%に水準を切り上げた。

 日銀の植田和男総裁は11月18日の名古屋市でのあいさつの中で「コストに占める人件費の比率が高いサービスの価格がしっかり上がっていくか――に注目していきたい」と述べていたが、今回の11月東京都区部CPIでのサービス価格の推移は「しっかり上がっていく」という姿を示していると日銀が判断しているのではないか、と筆者は推定する。

 

 <利上げ判断へ注目される為替動向、円安は物価上昇圧力を高める要因>

 12月会合まで3週間弱の期間があるため、日銀は現段階で「利上げ」「政策維持」のどちらも決め打ちしていないとみられるが、経済データは物価も含めて日銀の見通し通りに推移し、「オントラック」との認識を強めていると予想する。

 利上げの判断を固める際に日銀が注目するデータの1つは、やはり為替動向だと筆者は考える。輸入物価を起点にした物価上昇圧力が、円安によって一段と高まることが予見できるなら、ビハインド・ザ・カーブに陥らないために利上げを決断する可能性が高まるとみているからだ。

 週明けの12月2日以降の市場動向は、多くの市場参加者が日銀の政策判断との関連で一喜一憂することになると予想する。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

米インフレ再燃リスクが焦点に、円安圧力増すなら日銀の政策判断にも影響

2024-11-28 14:58:09 | 経済

 米経済の好調さが持続する中で、インフレ懸念再燃の可能性が市場の中心テーマに浮上しようとしている。2025年中にどこまでフェデラルファンドレート(FF金利)が低下するのかという市場の予想値は4%付近(誘導レンジの上限)まで上昇しており、ドル/円をドル高・円安方向に押し上げる原動力になっている。その意味で12月6日発表の11月米雇用統計や12月11日の11月米消費者物価指数(CPI)の結果は、市場心理を大きく左右しそうだ。

 また、12月上中旬に円安が進展するようなら、18、19日に金融政策決定会合を開催する日銀の政策判断にも大きな影響を与えそうだ。

 

 <10月PCEで鮮明だったサービス価格の強さ>

 市場が注目していた10月の米個人消費支出(PCE)価格指数は、前年比プラス2.3%と前月の同2.1%から伸びが加速。変動の大きい食品とエネルギーを除いたコアPCE価格指数は同2.8%と前月の同2.7%から伸び率が小幅大きくなった。

 10月の伸び加速に寄与したのはサービス価格の上昇で、住宅とエネルギーを除くサービス価格は前月比プラス0.4%と、今年3月以来の大幅な伸びとなった。

 また、米アトランタ地区連銀が算出している「GDP NOW」は今年10-12月の国内総生産(GDP)伸び率がプラス2.7%と高い伸びとなっている。

 

 <足元のドル下落と米長期金利低下、利益確定の動きが影響>

 高い経済成長率と強めのサービス価格の推移が継続するなら、インフレ懸念が再燃して米連邦準備理事会(FRB)の利下げペースが鈍化し、米長期金利上昇とドル高が起きてもおかしくないが、27日のNY市場では米長期金利の低下とドル下落、米株下落で反応した。

 市場の一部では、12月米連邦公開市場委員会(FOMC)での利下げ観測の高まりが影響したとの声も出ていたが、複数の市場関係者によると、11月28日の感謝祭の祝日を前に11月末の決算期末を控えたヘッジファンド勢などが利益確定のための米国債買い(金利低下)、米株売り、ドル売りの注文を出していた影響が大きかったという。

 

 <11月米雇用統計、前月の反動で強めか 注目されるCPI>

 したがって今後は、週明け12月2日からの取引で何が主要テーマになるのかが大きなポイントになる。筆者は米経済の好調持続とインフレ再燃リスクの可能性を測ることになると予想する。

 まずは、12月6日発表の11月米雇用統計が大きな材料になる。前月の10月は非農業部門雇用者数が前月比1万2000人増と市場予想の11万3000人増を大幅に下回った。大型ハリケーンの被害やボーイングのストが影響したが、11月はその反動が出るとみられている。非農業部門雇用者数の市場予想は同20万人増のようだが、仮にこれを上回る強い数字になれば、市場の注目度は跳ね上がるだろう。

 11月CPIも前月の前年比プラス2.6%を上回るようなら、市場のインフレ再燃懸念がますます強まることになる。

 

 <ドル/円に影響する市場の25年利下げ織り込み>

 12月FOMCに関する市場の利下げ織り込みは、17ベーシスポイント(bp)となっている。市場の利下げ織り込みは68%に達しているが、25bpの利下げを決めても来年の利下げペースが緩慢になると市場が判断すれば、ドル高・円安の圧力がかかりやすくなる。

 足元で市場は、12月FOMCで25bpの利下げを実施した上で、25年に2回の利下げを行ってFF金利が3.75-4.00%まで低下することを織り込んでいる。

 雇用統計やCPIの結果を受けて、この織り込みが上下にどれだけ振れるのかが年内の大きな焦点になる。

 筆者は、ドル/円が円高方向に振れる可能性は低く、150円から155円のレンジ内でしばらく底堅い展開になると予想している。インフレ再燃のリスクが相応に高まるとみているからだ。その背後には、トランプ次期米大統領の減税や高関税の実施、不法移民の強制送還などの政策によってインフレ心理が刺激されやすくなるという要因がある。

 

 <円安進展なら、日銀の利上げ判断に影響>

 このように見てくると、米経済におけるインフレ懸念再燃のリスクは、ドル高・円安と輸入物価上昇というルートを通じ、日本のCPIにもかなりの影響を及ぼす問題と言えるだろう。物価上昇の圧力が強まると日銀が判断すれば、利上げをめぐる日銀の「総合判断」にもかなりの影響を与えることになる。

 今年12月の日米金融政策イベントは、17-18日がFOMC、18-19日が日銀金融政策決定会合となっており、パウエルFRB議長の会見やドットチャートの変遷をみて、市場がドル高・円安に動けばその動向にも日銀が一定の目配りをする可能性があることも視野に入れておく必要がある。

 年末の日米金融政策イベントに向け、米インフレ懸念の動向を判断するための経済指標のチェックは重要性が一気に高まりそうだ。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

国民民主要求の政策、新財源のメド立たず 国債大増発なら石破政権と市場に試練

2024-11-27 12:04:29 | 政治

 少数与党の第2次石破茂内閣にとって、2025年度予算案の編成が大きなハードルとして浮上してきた。国民民主党が主張するいわゆる「年収103万円の壁」の引き上げやガソリン税の減税を実施した場合、9兆円を超える新たな財源の確保が必要になるが、そのめどが立っていないためだ。さらに防衛費をめぐる増税の取り扱いで国民民主党の玉木雄一郎代表が反対を表明し、25年度の税制改正をめぐる自民党、公明党と国民民主党との調整が難航して、予算編成が大幅に遅延する可能性も出てきた。

 自公両党は衆院で過半数を割り込んでおり、25年度予算案の成立には国民民主党の賛成が不可欠となっている。このため最終的には自公両党が国民民主党の要望を受け入れる可能性が高いが、その場合は赤字国債の大規模な増額が不可避となる。だが、円債市場関係者の多くは昨年までの自公優位の国会運営に慣れてしまい、大幅な国債増発の可能性を織り込んでいない。石破内閣にとってもマーケットにとっても25年度予算案の編成は、大きな分かれ道となりそうだ。

 

 <石破首相、所信表明で「他党にも丁寧に意見聞く」と発言へ>

 読売新聞など複数の国内メディアは、29日の臨時国会で石破首相が行う所信表明演説の主要なポイントを事前に報道し、石破首相が「他党にも丁寧に意見を聞き、可能な限り幅広い合意形成が図られるよう、真しに謙虚に取り組んでいく」と述べると伝えた。

 実際、自民、公明、国民の3党は、所得税の非課税枠である基礎控除と所得税控除の合算額である103万円について「25年度税制改正の中で議論し引き上げる」との合意文書を交わし、ガソリン減税は「自動車関係諸税全体の見直しに向けて検討し、結論を売る」ということで合意し、24年度補正予算案について「年内の早期成立を期す」ということで合意して、補正予算案の成立が事実上、固まった。

 

 <先送りされた財源問題、解決に2つの障害>

 ただ、財源問題は11月20日の当欄で指摘したように具体的な結論は先送りされた。そのツケをいよいよ、25年度予算案編成のプロセスで払うことになる。

 103万円の壁の引き上げ財源に関し、障害になっているのは不足する税収の規模が大きいことと、26年度以降もその手当てが必要になる「平年度ベース」の制度改正になるという2つだ。

 国税と地方税を合わせて7-8兆円の税収不足に直面するが、税収の上振れ分や予算の使い残し、税外収入を当てる対応策では、1)7-8兆円の全額を賄う規模にならない、2)26年度以降の財源確保のメドが立たない──という問題に直面する。

 

 <財源不足は9兆円超に>

 そこで国民民主党の主張する178万円まで引き上げるのではなく、消費者物価指数の上昇分に見合う引き上げ額にする案などが与党サイドから提起される可能性があるものの、国民民主党が拒否すれば、少数与党だけで予算案を可決できないため、予算案成立のメドが立たない現実に直面することになる。

 同様に国民民主党が主張する旧暫定税率を廃止してガソリン税を減税する場合、1.5兆円程度の減収が恒常的に発生する。

 合わせて9兆円強の財源不足をどうするのか──。25年度予算案の編成上、最大の問題になることが予想される。

 

 <防衛増税、玉木氏は「必要ない」と指摘>

 さらに防衛増税の問題が新たに浮上してきた。防衛費を増額するための財源として政府は、所得、法人、たばこの3税を引き上げる方針を決め、22年末に閣議決定した大綱で「27年度に向けて複数年かけて(増税を)段階的に実施する」と明記した。ただ、22、23年と2年連続で増税開始時期の延期を決定したため、27年度には1兆円超の増収を予定していた計画が本当に実行できるのか微妙な状況になっている。

 こうした中で国民民主党の玉木代表が26日の会見で、25年度における防衛増税は「必要ない」と発言。合わせて自民党の茂木敏充前幹事長が同党総裁選で「防衛増税の停止」を主張していたことにも触れて「まず自民党の中の意見をまとめてもらいたい」と主張した。

 自民党の宮沢洋一税調会長は26日、防衛増税は「大きな方針を党として決めてある」と述べ、何らかの増税実施に前向きの姿勢を示した。

 

 <一部に越年編成の声も、国民民主の賛成なしで難しい予算案成立>

 このように大規模な歳出項目の前提になる財源問題で、自民、公明、国民3党の意見は大幅に食い違っており、一部の政府・与党関係者の中では財源問題での調整難航を理由に、予算編成が例年よりも大幅に遅れて場合によっては越年する可能性があるのではないかとの声も出ている。

 ここで、現在の政治状況を俯瞰してみると、代表選を戦っている日本維新の会で次期代表に選出される可能性が大きいとみられている吉村洋文・共同代表は、自公両党と距離を取る政策に重点を置くスタンスを強調しており、25年度予算案で賛成に回る可能性は低下しているとみられる。

 また、野党第1党の立憲民主党が予算案の賛成に回るよう通常国会で「予算案の組み替え」に応じる選択肢も理論上はありうるが、政治的にかなり難易度の高い「技」の発揮を求められ、現状ではかなり難しいと筆者は考える。

 そうなると、国民民主党の要求を概ね容認するかたちで25年度の税制改正大綱をまとめ、103万円の壁引き上げなどの実現に必要な歳入は、大部分を新規国債の発行で賄うという「落としどころ」がどこかで浮上するのではないか、と予想する。

 

 <市場に心の準備がない新規国債大増発のケース>

 このような国債の大増発への「心の準備」が、マーケットにはできているのだろうか──。足元における長期金利の動向を見ていると、国債の前倒し発行の存在が心理的な支えになって、安心しきっているのではないかと筆者の目には映る。

 確かに前倒し発行分で吸収できるということは事実だが、それを繰り返していると、その先に何が待ち構えているのかは明白ではないか。

 

 <注目される石破首相の決断>

 10月の衆院選の結果、28議席の国民民主党がキャスティングボートを握り、予算編成で大きな影響力を持つようになったが、財源問題がネックになって予算編成のプロセスが大幅に遅延する可能性もある。 

 遅延しない場合は、国債発行額が大幅に増額され、市中で消化される国債の量が市場の想定よりも大幅に上振れするリスクが高まる。

 石破首相と政府・与党にとって予算案の成立と国債大増発の可能性をどのように比較衡量することになるのか、大きな分かれ道は12月上中旬にやってくるだろう。

 マーケットにとっても、前倒し発行分で増発分が吸収され、市中消化に大きな影響は出ない、と安心していられないような「大きな波」が、いきなり押し寄せてくる可能性もある。

 かつてない注目の予算編成と言ってよい事態が、間もなく衆人環視の下で展開される。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

トランプ氏の関税爆弾、巨額な打撃はメキシコ生産の日系自動車か 迫られる日本政府の対応

2024-11-26 10:58:06 | 経済

 来年1月20日の就任式を前に、トランプ次期米大統領の関税引き上げという爆弾が市場で炸裂した。メキシコとカナダからの全ての輸入品に25%、中国からの輸入品に10%の追加関税を課すとに25日(米東部時間)に自身のソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」に投稿。26日の日経平均株価は一時、前日比760円08銭安の3万8020円08銭まで売り込まれた。

 市場の一部は中国を対象にした10%の追加関税の負担に注目しているが、筆者はメキシコを対象にした25%の関税実施が日本の自動車メーカーにとって、大きな打撃になると指摘したい。トヨタや日産など日本メーカー4社はメキシコにある生産拠点から米国向けに自動車を輸出しており、2023年は77万台を超える規模だった。日本政府はトランプ次期米政権との交渉に向け、メキシコ経由での対米輸出の自動車にかかる関税引き上げについて、別の交渉カードを駆使して引き下げる努力をする必要がある。

 

 <日系メーカー4社、23年はメキシコから米国に77万台輸出>

 トランプ氏はメキシコとカナダからの輸入品に対する25%への関税引き上げを、1月20日の大統領就任初日に行うことも表明。両国がフェンタニルなどの麻薬や不法移民の米国への流入を取り締まるまで関税を維持するとした。

 26日の日経平均株価は午前の取引で安値から戻したものの、トランプ氏の打ち出した関税引き上げのインパクトの全容について測りかねているのが実態だ。

 中でも筆者が指摘したいのは、日本の自動車メーカーへの大きな打撃の可能性であり、特にメキシコ経由での対米自動車輸出の存在が非常に大きいことへの懸念だ。

 メキシコ国立統計地理情報院(INEGI)のデータをまとめた日本貿易振興機構(JETRO)のまとめによると、2023年に日本メーカー4社がメキシコで生産した自動車は123万5521台にのぼる。2020年7月に発効した「米国・メキシコ・カナダ協定」(USМCA)でメキシコからの自動車輸出が他地域からの輸出に比べて有利であることに着目し、日本メーカーや部品メーカーの製造拠点が強化された。

 23年の日系メーカー4社からの対米輸出はメキシコでの生産の60%に当たる77万台強。これは日本からの対米輸出台数の148万5000台に次ぐ規模となっている。

 メキシコから米国への輸出台数(2023年)をメーカー別にみると、日産が約26万8000台、トヨタが約22万8000台、ホンダが約13万8000台、マツダが約10万9000台となっている。

 

 <25%の関税で輸出ストップへ、日本政府は早急にトランプ次期政権スタッフと接触すべき>

 25%の関税が課せられると、事実上、輸出はストップすることになり自動車メーカー4社は大きな打撃を受けることになる。民間企業の対応では、予想されるマイナスの衝撃を緩和することはほぼ不可能で、日本政府の対応が不可欠となる。

 日本政府は、メキシコで生産された日本メーカーの自動車輸出にかかる関税の引き上げ幅を極力引き下げるべく、トランプ次期政権の枢要なスタッフとの接触を始め、打開の道を探るべきだ。トランプ大統領とそのスタッフは、高関税の実施を目的としているのではなく、関税引き上げを手段として別の優先項目における利益の獲得を目指していることが多い。

 したがって日本政府は、別の分野で米国に切るカードを用意し、メキシコで生産する日本メーカーの自動車への関税に関し、柔軟な対応を引き出す「取引」を持ちかけるべきだ。

 

 <迫れる優先すべき交渉順位の設定、製造業の国内回帰を急ぐべき>

 また、トランプ関税による日本経済への打撃に関し、第三国経由の影響も含め、どの分野での影響が大きいのか早急に試算し、どの分野を最も優先的に守るべきなのか、守れないときは補助金で対応できるのかなどを整理し、交渉の優先順位を早急に確立するべきだ。

 さらに中期的には製造業の国内回帰を促進する政策をできる限り迅速に構築し、対中関税の引き上げなどに対応する道を国内企業に示す必要がある。

 トランプ氏が打ち出した関税引き上げは、日本の産業政策の抜本的な見直しを迫っている。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ベッセント次期米財務長官はドル高容認か、注目される円安の行方

2024-11-25 13:57:33 | 経済

 次期米財務長官にトランプ氏から指名されたスコット・ベッセント氏はドル高容認なのか──。こうした見方が米紙ウォール・ストリート・ジャーナル電子版に掲載された同氏のインタビュー記事で台頭している。今週は26日に米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨(11月6-7日分)、27日に10月の米個人消費支出(PCE)価格指数が発表され、ドル上昇の余地があると市場関係者から見られてきたが、ベッセント氏のドル高容認とも受け取れる発言を受けて、ドル高・円安が進みやすくなると筆者は予想する。

 

 <ドル、準備通貨としての世界での地位を保つ>

 25日午後にWSJ電子版に掲載されたインタビューによると、ベッセント氏は通貨政策に関し「ドルの準備通貨としての世界での地位を保つ」と述べたという。 

 ベッセント氏は今年10月、米共和党の大統領候補として戦っていたトランプ氏の経済顧問として、英紙フィナンシャルタイムズのインタビューにも答えていた。そこでベッセント氏は、トランプ氏が大統領に就任した場合に「トランプ氏が意図的にドルを意図的にドルを切り下げることは期待しておらず、ドルを準備通貨として支持する」と語った。 

 

 <よい経済政策とれば、自然にドルは強くなる>

 また、同氏は「準備通貨は市場に応じて上下する可能性がある。良い経済政策をとれば、自然にドルが強くなると私は信じている」と語った。ただ、この考えがトランプ氏の考え方を代弁しているものではないと付け加えた。

 この2つのインタビューをみると、ベッセント氏はドルに関し、世界の準備通貨としての地位に着目し、闇雲にドル安政策を推進する考えがないと筆者は推定する。

 よい経済政策の下ではドルが強くなるとの見方は、ドル高容認とも受け取れる。WSJとのインタビューでは、減税実施や関税政策などトランプ氏が優先的に取り組み政策の重要性について言及しており、その点はトランプ氏の要請に素直に対応するとみられる。

 

 <ソロス氏のファンドでポンド売りの実績>

 ベッセント氏は米サウスカロライナ州出身で、イエール大学を卒業後、ブラウン・ブラザーズ・ハリマンでに入社した。1990年代にジョージ・ソロス氏のヘッジファンドに在籍し、英国のポンド防衛策を打ち破りポンド売りで巨額の利益を挙げて一躍、著名人に躍り出た。BBCによると、2013年に円安のポジションでも利益を挙げたという。2015年に投資ファンド「キー・スクエア・キャピタル・マネジメント」を設立した。

 

 <注目されるFOMC議事要旨、タカ派発言はあるのか>

 11月7-8日のFOMC議事要旨が26日に発表され、この先の利下げペースをめぐりFOMC内でどのような議論が展開されのか注目されている。25ベーシスポイント(bp)の利下げを決めた後の会見で、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長は、12月FOMCで利下げの一時停止はあるのかとの質問に「現時点で、そのような決定はまったくしていない」と述べていた。もし、利下げの一時停止や2025年の利下げペースをめぐってタカ派的な見解が数多く出ていたことが明らかになれば、ドル高・円安の材料として市場は捉えるだろう。

 27日のPCE価格指数でも市場は前年比プラス2.3%、コアは同2.8%と強めに予想しているが、それをさらに上回る結果になれば、ドル買い・円売り材料として意識されると予想する。

 

 このように今週は、ドル高・円安に行きやすい材料がもともと多かったが、ベッセント氏の為替をめぐる発言によって、ドル買い・円売りを助長するムードが高まりやすくなったのではないか。

 新政権の発足は来年1月20日だが、ベッセント氏への注目度は一段と高まりそうだ。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする