トヨタ自動車など5社、38車種の認証に不正があったことが発覚し、とりあえず6車種の出荷が停止された。5社の株価は不正発覚直後からは買い戻されているものの安値圏で推移している。
問題は、自動車5社の経営というミクロ面にとどまらず、日本経済全体の動向に影響を与え、最終的に日銀の金融政策判断にまで影響を与えるというマクロ政策にも波及しかねないというインパクトの大きさがあるということだ。
出荷停止に伴って生産が停止され、その期間が長期化すると関連する幅広い部品などの生産も下押しされ、日本経済全体への影響も無視できなくなる。実際、ダイハツや豊田自動織機での不正発覚による生産停止の影響が出た2024年1-3月期の国内総生産(GDP)は前期比・年率マイナス2.0%となった。
4-6月期のGDPは前期のマイナス成長の反動増も期待されプラス成長を予想する声が多かったが、今回の自動車5社の認証不正による生産停止が相応に長期化した場合、国内生産全体が停滞色を強め、消費の節約ムードも相まって内需全体がGDPに対してマイナス寄与となる可能性が出てきた。
この状況を注視しているのが、岸田文雄首相と植田和男総裁率いる日銀だろう。岸田首相は6月23日までの通常国会での衆院解散を断念したのではないかと国内メディアに報道されたが、立憲民主党などが内閣不信任案を会期末に提出した場合、衆院解散のカードを切る可能性がゼロになったわけではないと筆者は指摘したい。
その際に、足元での物価高によるパッとしない消費や生産の停滞による2期連続のマイナス成長の可能性は「不都合な現実」と映るだろう。
一方、再燃する円安傾向を起点にした物価上昇率のテンポアップの可能性は、利上げによる緩和効果の調整の必要性を意識させるが、2期連続のマイナス成長の可能性が少しずつ顕在化してきた中では、5%の賃上げの効果をじっくりと見極めるという姿勢に傾きつつあるのではないか。
国内の金融市場は7月利上げの可能性を織り込みつつあったが、5社の認証不正がその見方に冷水をかける形になったともみえる。
このことは逆に、3万8000円台で膠着してきた日経平均にとっては、利上げ時期の交代が材料となって上値を追う展開になるとも考えることができるだろう。
6月14日の植田日銀総裁の会見が注目される。
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