<光母子殺害>元少年に死刑判決 裁判長は新供述「不自然不合理」、情状「斟酌する理由みじんもない」
山口県光市で99年4月、母子を殺害したとして殺人と強姦(ごうかん)致死罪などに問われた当時18歳の元少年(27)に対する差し戻し控訴審の判決公判が22日午前、広島高裁であった。楢崎康英裁判長は「強姦の目的や計画性も否定できない」として、求刑通り死刑を言い渡した。元少年が差し戻し審になって新供述を展開したことを「不自然不合理」とし、弁護側が主張した情状面について「斟酌(しんしゃく)する理由はみじんもない」と述べた。 最高裁は06年6月、高裁が認めた情状酌量理由を「死刑を回避するには不十分」として1、2審の無期懲役判決を破棄し、高裁に差し戻した。 判決によると、元少年は99年4月14日、光市のアパートに住む会社員、本村洋さん(32)方に排水管検査を装って上がり込み、妻の弥生さん(当時23歳)を強姦目的で襲い、抵抗されたため手で首を絞めて殺害。泣き続ける長女夕夏ちゃん(同11カ月)を床にたたきつけた上、首にひもを巻き付けて絞殺した。 元少年は差し戻し審の公判で、弥生さん殺害について「甘えたい気持ちで抱きつき、反撃され押さえつけたら動かなくなった」とし、夕夏ちゃんについて「泣きやまないので抱いてあやしていたら落とした。首を絞めた認識はない」と述べた。 供述を変えた理由については、「自白調書は警察や検察に押し付けられ、1、2審は弁護人が無期懲役が妥当と判断して争ってくれなかった」とした。 判決は「弁護人から捜査段階の調書を差し入れられ、『初めて真実と異なることが記載されているのに気づいた』とするが、ありえない」と、元少年の主張を退けた。 また、弥生さんの殺害方法について元少年が「押し倒して逆手で首を押さえているうちに亡くなった」としたのに対しても、「不自然な体勢で圧迫死させるのは困難と考えられ、右手で首を押さえていたことを『(元少年が)感触さえ覚えていない』というのは不自然。到底信用できない」とした。夕夏ちゃん殺害についても、「供述は信用できない」と否定した。 また、元少年が強姦行為について「弥生さんを生き返らせるため」としたことについて、「(荒唐無稽こうとうむけい)な発想であり、死体を前にしてこのようなことを思いつくとは疑わしい」と退けた。 判決は、「身勝手かつ、自己中心的で、(被害者の)人格を無視した卑劣な犯行」と断じた。 1、2審は殺害の計画性の無さや更生可能性を重視して無期懲役を選択。最高裁は強姦目的や殺害方法などの事実認定を「揺るぎない」と判断し、情状面からも「量刑は不当で、著しく正義に反する」として審理を差し戻した。 事件当時、元少年は18歳30日。少年法は18歳未満の被告に死刑を科すことを禁じている。2審の無期懲役判決を差し戻した死刑求刑事件は戦後3例目だが、他の2件は死刑が確定している。 |