ミケマル的 本の虫な日々

「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」これは今月のお薦め本だわ〜〜


  読んで良かった!
  そして、多くの人に読んでもらいたいな!
と思ういい本でした。





 
 イギリスに住んでいるイギリス人と結婚した日本女性の著者が、息子の中学生活を描いているノンフィクション。

 ロンドンではなくてブライトンという地方都市に住んでいるので、よりイギリスのリアルな社会を知るという点でも興味深い本でした。


 息子さんはイギリス人と日本人の間に生まれているので、肉体的特徴はオリエンタルと白人の両方を受け継いている訳で、それがこの題名の「ぼくはイエローでホワイトで」という部分なわけです。

 そして、そのあとの「ちょっとブルー」

 中学に入学した後に、偶然開いていたノートの走り書きにこの言葉があって、ドキッとした著者のお母さんの気持ちがすごくわかる。


 小学校はカトリック系の学校に行っていた息子さんが、近所の公立中学に行くと決めた経緯からお話しが始まるのですが、そこにイギリスの学校事情があらわれます。

 
 例えば、経済的には安定している家庭で成績も優秀な子供たちがいるカトリック系の学校の方が多様な人種の子供達が集まっている。

 公立の学校は白人がほとんどで、経済的に不安定な底辺の子供達も多く、成績もまちまち。

 オックスブリッジと言われる名門カレッジに行くような子供はカトリック系の学校のトップの子どもってわけ。

 そうなんだな〜〜〜🤔

  アメリカもそうだけど、白人労働者階級という人達が底辺にいるって事なのだなという事を日本では分かりにくい事情です。
  (「リトル・ダンサー」のような世界)

 
 それまでカトリック系の小学校に通っていた息子さんが、公立校(この本では元底辺中学校)に入ってからの数年を描いています。

 カトリック系の小学校で表立った差別などなく安定した学校生活を送っていたので、そのままカトリック系の中学校に行くこともできたのに、息子さんは公立校を選んで入学することにしました。

  
 ご両親は、白人の多い公立校で見た目がオリエントな息子が差別に晒されるのではと、心配しつつ見守るのですが、その距離感が素晴らしい。

 この本の題名にもなっている、人種的な差別をはじめとして、貧困の問題も大きく、どの世界にもあるいじめの問題、様々な問題がたくさんあるのだけれど、その中で息子さんの健全な聡明さと強さに感心しつつ、ご両親の適切な対応が凄いなと思います。


 住むところ、学校など、社会の階級がはっきりとしているイギリスでは、問題が分かりやすいといえば分かりやすい。

 そして、それに対する政策、特に養育への資金面での問題は山積みのようだけれど、教育の面では、問題を直視してその解決のための考え方をちゃんと示しているという部分にも感心しました。




 その中で、シティズンシップ・エデュケーションという、公民教育のような科目の中で、子どもの権利についてきちんと学んでいることはすごいなと思った。

 ここで、テストに出たという、エンパシーという言葉を私も学びました。


  シンパシー(sympathy)はよく聞く言葉だけど、エンパシー(empathy)って何だろう?って思ったら、

 シンパシーは他者への共感や同意、理解など。

 エンパシーは他者の感情や経験などを理解する能力
  その人の立場だったらどうだろうと想像しないとできない能力なんですね。

  テロリズムやEU離脱という難しい問題を抱えたイギリス社会、様々な混乱が生じている世界情勢、これらを抱えた現在には自分と違う意見を持つ人々の気持ちを想像してみることが必要であり、これからは「エンパシーの時代」である、って学校で教えているって凄いなと思ったのでした。

 移民問題、昔からある階級問題、貧困、差別、そしてEU離脱、などなど問題が山住みのイギリス社会だけれど、この元底辺校と呼んでいる中学でも、きちんとシティズンシップ・エデュケイションが行われているのですね。 底辺校と言われていた学校を何とか引き上げようとしている校長先生も色々と批判もあるようだけど、生徒を抑えつける方向ではなく伸ばす方向に向かっているのがいいなと思ったのでした。



日本のように、階級がはっきりとしていないけれど、実は経済的な格差が広がっているという社会は、問題が表面化しにくくて、それに対する配慮、対策もはっきりしないのかなと。

しかし、日本もどんどん多様な社会になっていかざるを得ない現実があるのだから、自分と違う他者との向かい合い方をきちんと学ばないといけない時代になったと思いました。




 こんな風に書くと、なんか難しい本?って思われちゃうかもしれないけど、これは私が注目した一部で、息子さんとその周囲の出来事をとても読みやすい文体で書かれています。

 著者のお母さんは、イギリスで日系企業に務めた後に現地で保育士の資格をとって保育士として働いているという人。

 ご主人も銀行に勤めていたけれど、リストラを契機に前からやりたかった大型トラックの運転手になったという人。

 お二人とも個性的ではあるのだけれど、本を読んだ感じではご主人の方がどっちかというと常識家で冷静、著者の方がリベラルで直感的だなと思いました。

 とてもバランスが取れているお二人だけど、息子さんはどちらかというとご主人に似てるのかな?って思った。


 息子さんが、アイデンティティーの問題、友達の貧困やいじめの問題、社会構造を反映した学校の問題、などなどの様々な問題に対応して行く様子に、著者と一緒にハラハラしながら読んで行くと、その波を乗り越えて行く様子が、何とも素晴らしい❗️

 息子さんが色々なことをきちんと見極めようとしている聡明なところ、それを見守る両親の距離感、色々と問題は満載だけれど、それから目を逸らさない教育。

 もちろん問題はたくさんあるし、改善されない物も多い中ですが、未来は明るいと思える一冊でした。


 題名の「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」の「ちょっとブルー」が最後には変わってきます。

 成長過程にある人は、次々と変わって行くんだね❗️

 
 良かったな〜〜、感動したな〜〜って本ほど、文章にまとめにくいのは困ったことです。。。

どういう風にまとめて良いのかわからないけど、

 若い人にも、親の世代の人にも、教育関係の人にも、そして私みたいにそれに当てはまらない人にも、みんなに読んで欲しいなって思う本でした🤗




  

   



 

 

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