ミケマル的 本の虫な日々

細雪

『細雪』  

 言わずと知れた谷崎潤一郎の小説です。中公文庫の細雪(全)というめちゃくちゃ厚い文庫本で読みました。重いぞ

 大分以前にテレビで放送していた映画の細雪を観た時に、映像がとてもきれいで、特にお花見の場面の桜と4人姉妹の着ている絢爛な着物が印象的でした。ちょっと前に紹介した、小谷野氏の本に谷崎潤一郎が何回も登場してきたのも影響してか、一回読んでみようと思って読み出しました。

 ところが、予想よりとっても面白かった、というか、やめられなくなって、一気に読んでしまいました(めちゃくちゃ厚いのに)。戦前の関西の上流家庭?(没落しているが旧家だった、でも充分裕福に暮らしている)の4姉妹の日常が、三女の雪子の縁談の推移と四女の妙子の恋愛騒動を中心に話しが進行します。といっても、主役は次女の幸子とその家庭です。

 戦前の上流家庭とその中での女性たちの心の動きが、主に幸子という女性の視点から描かれていて、すごく興味深いのと、私は東京出身なので、関西のものの見方というのが切々と書かれているのが面白い。妙子は結構どこにいても良いような女性だけれど、雪子は関西特有な感じがする。だから雪子はどう思っているのか、どう考えているのか想像がつかなくて、特に面白かったです。

 こまったのは、旧漢字が使われていて、読めない字があって情けなかったのと、関西の地名に親しみが無いため、地理感覚がよく分からない点でした。でも、一番こまったのは、姉妹の会話の中で「ふん」という返事が多いことです。なぜかというと、私にとっては「ふん」は怒ったときの言葉なので、もしも映画を観てなかったら、この人たちなんで怒ってばかりいるのかしらと思ったかも。そうか、「ふん」は関西の言葉では「うん」のようなものなんだろうなとわかったからいいけど、少なくとも始めて読んだ関東の人はわからないのではと心配になりました。この本読んだ人のその点の感想を聞きたいです。

 とても面白かったけれども、きっと今の年齢で読んだから面白かったのであって、若い頃読んでも、だからどうしたの?と思ってしまったと思います。
 
 そして、読んで意外に思ったのは、幸子の旦那さんである貞之助がとても良い人であることでした。映画では、違う描き方をされていたと思うけど、この小説の中では、幸子をとても大事にしていて、理解力があり、安定感があり、頼りになり、それでいて、強すぎず、えばらず、回りに気を使うというまさに理想的な夫として描かれていて、日本の小説でこんなにできた夫を見たのは初めてではないかと思うほどでした。どうも、幸子さんが谷崎氏の最後の奥さん松子さんをモデルにしているということなので、もしかしてこの貞之助は自分の反映なのでしょうか? 谷崎氏はこんなに良い夫だったのでしょうか? それとも、理想を書いたのでしょうか? 非常に興味深いです。

 長さを感じさせない小説です。独断と偏見で言えば特に35歳以上の方にお薦めです。関西出身の方以外は「ふん」の意味に注意して、ぜひ読んでみてください

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