『わたしを離さないで』 カズオ・イシグロ 土屋政雄訳
一人称で始まる物語で、最初は設定がまったく解らないので、学園物なの? それともいったい? という感じで、読み進めて行くと、えーという感じで話が進んでいくのですが・・・・。 とにかく、ねたばれになってしまうので、多くは語れないけれど、大変怖いが、それが静かに語られているので、なんだかどうしていいのかわからない気持ちになって、最後には思わず泣いてしまうというような物語です
この本を読んだ後に、カズオ・イシグロの『日の名残』と『浮世の画家』を読みましたが、一人称で語られるという点や、だんだんと隠されている物語の背景や真実が語りの中から見えてくるという手法は同じでした。その隠れた部分、部分が浮き出てくる感じが、「マジック・アイ」という視点をずらすと絵が浮き出てくるものに似ていると思います。
そして、手法は同じだし、どれもストーリーテリングがとてもうまいけれど、以前に書かれたこの2冊の物語と比べて、『わたしを離さないで』は、ダントツに傑作だと思いました。
イシグロ氏は、日本で生まれたけれども、子どもの時にイギリスに行き、そのままイギリスで教育を受けて英語で小説を書いているので、それが翻訳されて日本で紹介されているという、変わった作家です。このごろ、すぐに著者の年齢を見てしまうのですが、1954年生まれです。自分の歳に近いと親近感を持ってしまうのは、歳をとったせいかな?
解説を読むと、『日の名残』(ブッカー賞と受賞し、映画にもなった)とこの小説の間に『充たされざる者』と『わたしたちが孤児だったころ』という2冊の小説を書いていて、それぞれ特徴的な作品ということなので、この2冊も読んでみようと思います
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tomomaru
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