今年は全国的にも例年より早く、梅雨入りとなりました。梅雨と言えば、蒸し暑く、洗濯や食べ物の管理など過ごしにくい季節に思います。「猛暑を目前にして、雨なんか降らなかったらいいのに」と、つい思いがちです。
雨について、仏教では「甘露の法雨」という言葉があります。、お釈迦様がお生まれになったのを大変に喜んだ(水の神の使いである)竜の王が、天から甘くて清らかな雨を降らせ、それで誕生したばかりのお釈迦様が産湯(うぶゆ)をつかった、という伝説に基づいています。同じ雨でも捉え方によっては、恵みの雨となるのですね。
さて、当社では、そんな恵みの雨を貯めておく、青銅製の「天水鉢(天水桶)」を制作しています。お寺の本堂の脇に置かれている、鉢や桶などの形をしたものです。本堂の屋根に降った雨がトユを伝って、天水鉢に溜まっていきます。防火用水を溜める目的に使われ、特に火事の多かった江戸時代には、よく置かれたそうです。
写真は鉢状のものが口径2尺5寸(約75cm)、桶状のものが口径3尺5寸(約105cm)のものです。
ちなみに、天から降った恵みの雨を溜めるという意味で、「天水尊」という別名もあります。
そういえば、先日、お参りした中国地方のお寺様から「晴れもよし、雨もまたよし」というお言葉を頂きました。何事にも前向きに捉えると、心が澄み渡っていくのでしょうね。