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H3ロケットの財務強化を
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高橋洋一
【日本の解き方】JAXAの施設整備も対象「建設国債」に増額の余地あり 寄付は「ふるさと納税」方式も
H3ロケット初号機の打ち上げ失敗は残念だった。報道によれば、原因について宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、第段ロケットの電気系のトラブルとみているという。
第2段ロケットはこれまで実績があったが、H3に備えて一部改良したことが裏目に出たのかしれない。発射から約10分後に地上から破壊信号が送られた。搭載されていた地球観測衛星「だいち3号」も失った。
第1段ロケットはこれまで開発に難儀していたが、今回はうまく機能したようだ。記者説明会では「1段分離成功で喜んだ」というコメントもあったというが、一難去ってまた一難という宇宙開発の困難さがわかる。いずれにしてもさらに詳しく原因究明し、再発防止を行う必要がある。
H3は先代のH2に続く次世代のロケットだ。先代のH2ロケットは宇宙開発事業団(NASDA)と三菱重工が開発、三菱重工が製造し、日本の人工衛星打ち上げ用液体燃料ロケットとしては初めて主要技術の全てが国内開発された。
H3では打ち上げ費用の更なる削減のため、日本では初めて機体の設計・開発段階から民間企業である三菱重工が主体的役割を果した。
三菱重工といえば、ジェット機「スペースジェット(旧MRJ)」の撤退があった。当初は2013年に量産初号機が納入される計画だったが、6度にわたる延期を繰り返した末23年2月7日に開発中止となった。これも残念な結果だ。
先進国では航空機やロケットは軍事と密接に関係してしているが、日本では研究開発ですら切り離されている。せめて研究開発では軍民両方に利用可能なデュアルユースの考えを認めないと、日本は置いてけぼりを食うだろう。
宇宙関係予算は多省庁にまたがっているが、23年度当初の4268億円と22年度補正の1851億円で計6119億円となる。うち文部科学省が2116億円、防衛省が1278億円などとなっている。近年増加しているが、十分とはいえないだろう。
JAXA予算では、22年度当初の1552億円と21年度補正686億円で計2238億円。H3の14年からの総開発費は2000億円を超えているので、今回の失敗はかなり痛い。
もっと財務を強化する必要があるが、とりあえずは建設国債と寄付金の活用がある。JAXAの施設整備は建設国債対象であるが、経費は100億円にも満たない。ここは増額の余地がある。
また、JAXAに対する寄付金は特定寄付金であり、寄付金控除の対象となる。しかし、寄付額はごく少ない。ふるさと納税のように税額控除に変更すれば、寄付金額は格段に多くなるだろう。これらの対策は、現状の制度を少し変更するだけでできることなので、予算関係者の奮起を期待したい。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)
H3ロケットの財務強化を
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高橋洋一
【日本の解き方】JAXAの施設整備も対象「建設国債」に増額の余地あり 寄付は「ふるさと納税」方式も
H3ロケット初号機の打ち上げ失敗は残念だった。報道によれば、原因について宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、第段ロケットの電気系のトラブルとみているという。
第2段ロケットはこれまで実績があったが、H3に備えて一部改良したことが裏目に出たのかしれない。発射から約10分後に地上から破壊信号が送られた。搭載されていた地球観測衛星「だいち3号」も失った。
第1段ロケットはこれまで開発に難儀していたが、今回はうまく機能したようだ。記者説明会では「1段分離成功で喜んだ」というコメントもあったというが、一難去ってまた一難という宇宙開発の困難さがわかる。いずれにしてもさらに詳しく原因究明し、再発防止を行う必要がある。
H3は先代のH2に続く次世代のロケットだ。先代のH2ロケットは宇宙開発事業団(NASDA)と三菱重工が開発、三菱重工が製造し、日本の人工衛星打ち上げ用液体燃料ロケットとしては初めて主要技術の全てが国内開発された。
H3では打ち上げ費用の更なる削減のため、日本では初めて機体の設計・開発段階から民間企業である三菱重工が主体的役割を果した。
三菱重工といえば、ジェット機「スペースジェット(旧MRJ)」の撤退があった。当初は2013年に量産初号機が納入される計画だったが、6度にわたる延期を繰り返した末23年2月7日に開発中止となった。これも残念な結果だ。
先進国では航空機やロケットは軍事と密接に関係してしているが、日本では研究開発ですら切り離されている。せめて研究開発では軍民両方に利用可能なデュアルユースの考えを認めないと、日本は置いてけぼりを食うだろう。
宇宙関係予算は多省庁にまたがっているが、23年度当初の4268億円と22年度補正の1851億円で計6119億円となる。うち文部科学省が2116億円、防衛省が1278億円などとなっている。近年増加しているが、十分とはいえないだろう。
JAXA予算では、22年度当初の1552億円と21年度補正686億円で計2238億円。H3の14年からの総開発費は2000億円を超えているので、今回の失敗はかなり痛い。
もっと財務を強化する必要があるが、とりあえずは建設国債と寄付金の活用がある。JAXAの施設整備は建設国債対象であるが、経費は100億円にも満たない。ここは増額の余地がある。
また、JAXAに対する寄付金は特定寄付金であり、寄付金控除の対象となる。しかし、寄付額はごく少ない。ふるさと納税のように税額控除に変更すれば、寄付金額は格段に多くなるだろう。これらの対策は、現状の制度を少し変更するだけでできることなので、予算関係者の奮起を期待したい。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)