「宮崎正弘の国際情勢解題」
令和五年(2023)3月9日(木曜日)
通巻第7665号 <前日発行>
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ジョージアで暴動、モルドバに戦雲が兆す
ウクライナ戦争の余波、米国は傍観を決め込んだ
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3月7日、カフカスのジョージアの首都トビリシで暴動が発生した。旧グルジアである。
これは外国から資金を受けた団体を規制する法案を議会が審議可決したことに反対するもので、数千人規模のデモ隊の一部が過激化し、警察に火炎瓶や石を投げつけた。
警察は催涙ガスで鎮圧した。議会には親ロシア派が多く、またロシアの若者がウクライナ戦争への徴兵忌避で相当数がジョージアに移住している。
同法案は外国から20%以上の資金拠出を受けた団体に「外国エージェント」としての登録を義務付けるもので、違反した場合、罰金が科される。
ずばり標的はジョージ・ソロスだ。
しかし親欧派のズラビシビリ大統領は、この法案が議会を通過したら拒否権を発動すると言明している。
ジョージアはソ連から独立後、政争が絶えず初代大統領の詩人ガムサフルージアは独裁者と批判されてチェチェンに逃亡中に暗殺された。
二代目はソ連時代の外相だったシュワルナゼ。三代目は臨時代行で、四代目が米国帰りの実業家サアカシビリだった。
ところが2008年のオセチア、アブハジア戦争にロシアの介入を招き、サアカシビリは二階に上がってはしごを外されて格好となってウクライナへ逃亡、なぜかウクライナのオデッサ知事におさまった。ポロシェンコ政権は彼を優遇したかとおもえば、気が変わって国外追放した。またウクナイナに入国すると、こんどはゼレンスキー大統領から改革委員会の議長に指名された。
その後、サアカシビリはジョージアに帰国したが、拘束され現在裁判中である。
ウクライナに隣接するモルドバも戦雲が立ちこめている。
もとよりモルドバ東部に旧ソ連が残した東欧最大の弾薬庫があるため、ここを含めた沿ドニエステル『自治区』にロシア軍が1500名駐屯している。
この「沿ドニエストル共和国」を自称する地区にはロシア系住民が多く、モルドバからの分離独立を宣言している。構造的にはウクライナ東部のドンバス、ルガンスク地方と同じである。
筆者のモルドバの強烈な印象。(ここはルーマニアだな)。
▲ロシアが介入の余地はあるか?
ロシア国防省は2月23日、「ウクライナがモルドバ周辺に兵力を集め、武力での挑発を準備している」とする声名を発表した。これは弾薬不足に陥ったロシア軍が沿ドニエストルの弾薬庫を確保するためのプロパガンダだろう。
米ワシントン・ポストは2月21日の論説で「ロシアのプーチン大統領はウクライナで手いっぱいだが、戦果を示すためにモルドバに侵攻する可能性が懸念される」と唱えた。米国は傍観する姿勢を示唆している。
モルドバは2020年の大統領選で、親ロ派のドドンが敗れ、親欧米派のサンドゥ元首相が勝利した。サンドゥ大統領は「ロシアが反政権デモに乗じてクーデター(政権転覆)を画策している」と発言した。
首都キシナウ(キシニョフ)では反政権デモが頻発し、ウクライナのマイダン革命前夜の状況に似てきたとする分析もある。マイダン革命では親ロシア派のヤヌコビッチ大統領を糾弾したが、背後にあって資金提供したのはジョージ・ソロス。先頭にたってデモを鼓吹していたのがヌーランド(現在のバイデン政権下で国務次官)だった。
★なお筆者のモルドバ、ジョージア、ウクライナを含む旧ソ連圏30ケ国旅行記は『日本が全体主義に陥る日』(ビジネス社)に写真多数とともに収録されています。
令和五年(2023)3月9日(木曜日)
通巻第7665号 <前日発行>
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ジョージアで暴動、モルドバに戦雲が兆す
ウクライナ戦争の余波、米国は傍観を決め込んだ
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3月7日、カフカスのジョージアの首都トビリシで暴動が発生した。旧グルジアである。
これは外国から資金を受けた団体を規制する法案を議会が審議可決したことに反対するもので、数千人規模のデモ隊の一部が過激化し、警察に火炎瓶や石を投げつけた。
警察は催涙ガスで鎮圧した。議会には親ロシア派が多く、またロシアの若者がウクライナ戦争への徴兵忌避で相当数がジョージアに移住している。
同法案は外国から20%以上の資金拠出を受けた団体に「外国エージェント」としての登録を義務付けるもので、違反した場合、罰金が科される。
ずばり標的はジョージ・ソロスだ。
しかし親欧派のズラビシビリ大統領は、この法案が議会を通過したら拒否権を発動すると言明している。
ジョージアはソ連から独立後、政争が絶えず初代大統領の詩人ガムサフルージアは独裁者と批判されてチェチェンに逃亡中に暗殺された。
二代目はソ連時代の外相だったシュワルナゼ。三代目は臨時代行で、四代目が米国帰りの実業家サアカシビリだった。
ところが2008年のオセチア、アブハジア戦争にロシアの介入を招き、サアカシビリは二階に上がってはしごを外されて格好となってウクライナへ逃亡、なぜかウクライナのオデッサ知事におさまった。ポロシェンコ政権は彼を優遇したかとおもえば、気が変わって国外追放した。またウクナイナに入国すると、こんどはゼレンスキー大統領から改革委員会の議長に指名された。
その後、サアカシビリはジョージアに帰国したが、拘束され現在裁判中である。
ウクライナに隣接するモルドバも戦雲が立ちこめている。
もとよりモルドバ東部に旧ソ連が残した東欧最大の弾薬庫があるため、ここを含めた沿ドニエステル『自治区』にロシア軍が1500名駐屯している。
この「沿ドニエストル共和国」を自称する地区にはロシア系住民が多く、モルドバからの分離独立を宣言している。構造的にはウクライナ東部のドンバス、ルガンスク地方と同じである。
筆者のモルドバの強烈な印象。(ここはルーマニアだな)。
▲ロシアが介入の余地はあるか?
ロシア国防省は2月23日、「ウクライナがモルドバ周辺に兵力を集め、武力での挑発を準備している」とする声名を発表した。これは弾薬不足に陥ったロシア軍が沿ドニエストルの弾薬庫を確保するためのプロパガンダだろう。
米ワシントン・ポストは2月21日の論説で「ロシアのプーチン大統領はウクライナで手いっぱいだが、戦果を示すためにモルドバに侵攻する可能性が懸念される」と唱えた。米国は傍観する姿勢を示唆している。
モルドバは2020年の大統領選で、親ロ派のドドンが敗れ、親欧米派のサンドゥ元首相が勝利した。サンドゥ大統領は「ロシアが反政権デモに乗じてクーデター(政権転覆)を画策している」と発言した。
首都キシナウ(キシニョフ)では反政権デモが頻発し、ウクライナのマイダン革命前夜の状況に似てきたとする分析もある。マイダン革命では親ロシア派のヤヌコビッチ大統領を糾弾したが、背後にあって資金提供したのはジョージ・ソロス。先頭にたってデモを鼓吹していたのがヌーランド(現在のバイデン政権下で国務次官)だった。
★なお筆者のモルドバ、ジョージア、ウクライナを含む旧ソ連圏30ケ国旅行記は『日本が全体主義に陥る日』(ビジネス社)に写真多数とともに収録されています。