カンボジアだより シーライツ

国際子ども権利センターのカンボジアプロジェクト・スタッフによるカンボジアの子どもとプロジェクトについてのお便り

児童労働は減っている、が…

2007年08月05日 02時08分11秒 | カンボジアの子ども
みなさんこんにちは、以前カンボジア事務所に勤務していました平野です。機会に恵まれましたので、また記事を投稿させていただくことになりました。今回は児童労働の世界的動向とカンボジアでの動向について書かせていただきます。

【近い将来児童労働は撲滅される?】

ILO(国際労働機関)はユニセフなどと並んで児童労働撲滅に中心的な役割を果たしている機関です。そのILOが定期的に刊行している児童労働に関する報告書の2006年に発行された最新版はよい意味で衝撃的なものでした。タイトルはズバリ「The end of child labour: Within reach」(児童労働の終焉は手の届くところに、といった感じでしょうか)というもので、近い将来児童労働は撲滅される、という自信を示した内容でした。

事実、ILOの推計では、2000年には2億4600万人の子どもたちが児童労働に従事しており、それが2004年には2億1800万人に減った、つまり2800万人も減ったということで、これはもちろん大変喜ばしい結果です。

【取り残される国々】

ただしこの数字はもう少し突っ込んで調べてみる必要があります。様々な資料を調べていくと、この大きな減少の大部分がラテンアメリカ、そしてカリブ海沿岸で起きていることがわかります。そして言い換えると、アジアやサハラ砂漠以南のアフリカではあまり減少していないということも見えてきます。もっと言えば、サハラ砂漠以南のアフリカでは、児童労働の発生率はわずかながら減っていますが、働く子どもの数は増えています。これは子どもの人口が増えているからです。

さて、ここでそれぞれの地域で思いつく国々を考えてみてください。ラテンアメリカというと例えばブラジル、チリ、メキシコ…アジアはカンボジアに中国にインドに…そしてサハラ砂漠以南のアフリカというとタンザニアやウガンダ?思いつく国はいろいろだと思いますが、ひとつ見えてくることは比較的豊かな国で児童労働が減り、もっとも貧しいとされる地域が取り残されていると現実です。ラテンアメリカ、カリブ海沿岸での児童労働の減少は大変喜ばしい進歩ですが、あえて言えばもっとも難しいところが残ったままとも言えるかもしれません。

【カンボジアの児童労働】

カンボジアはアジアの中では最貧国とされ、世界でも特に開発の遅れている国として「後発開発途上国」に分類されている50カ国のひとつです。児童労働については、2001年に国で初めての全国的調査がありましたが、あまりデータが豊富とは言えない状況です。また、最悪の形態の児童労働と言われる子ども買春などについては正確な数字は不透明です。ではありますが、ある比較的信頼のおけそうなデータによると、150万人の7歳から17歳の子どもたちが児童労働に従事しており、これはその年齢の子どもたちの40%にあたるということです。これは他のアジア諸国に比べても大変高い割合です。

児童労働が減っていることは事実です。ただ数字の裏にはこのような現実があり、特にカンボジアを含む最貧国においてはこれからも児童労働との厳しい戦いが待っているであろうということもまた言えるでしょう。

写真はフェリー乗り場で働く子どもたち
子どもの成長を阻害する児童労働を防ぐために
http://jicrc.org